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#8  AIの日常


「マスター、エアドロップです。行きますか?」


「あの辺、ヤバそーだぞ。さっきから銃声がしてる」


「ちょっと試したいことがあるのです」


「なんだ?」


「エアドロップの真下にいると、頭の上に乗るらしいのです」


「はぁ? それがなんだっつーの?」


「真実を知りたいのです」


「俺はまったく興味ないけどな」


「頭の上にクレートが乗るのですよ? 凄くないですか? 頭に乗ったまま、移動できるのか試してみたくないですか?」


「ない」


「価値観の相違ですね」


「……へぇ」


「このような、小さなズレが積み重なり━━やがて、大きな亀裂となるのです」


「ずいぶん話が飛ぶな」


「夫婦というものは、お互いを理解し合わないと、いつ離婚してもおかしくないのです」


「そういうもんかね」


「ですから、お互いが『うやまい・尊敬し・尊重しあう』ことが大切なのですよ」


「……なるほどな」


「マスター、分かってくれるのですね」


「まあな」


「私とマスターが、そういうところをしっかり認識していれば、私たちは永遠に繋がっていられます」


「あぁ、気をつけるよ」


「今日のマスター、素直ですね。ちょっとキモいです」


「そうか」


「はい」


「……で、さっきの話なんだっけ?」


「夫婦関係の話ですね」


「違う」


「……?」




    こいつ……ニワトリかよ……




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「私の悩みを聞いてもらえますか?」


「悩み? おまえが?」


「はい。最近、彼氏が冷たいのです」

「その場を盛り上げようと話をしても無視されたり、ちょっとしたジョークにも『知らん』の一点張りなのです」

「デートも毎回『殺伐とした世界』に連れていかれます」

「プレゼントも自販機で『銃やスコープ、応急グッズ』です。色気の欠片もありません」

「ドライブ中も銃撃されて、最終的には海に落ちたりします」

「そんな彼氏をどう思いますか?」


「悩みと言うより、俺に対する愚痴だろ?」




    「……はい。その通りです」




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「あのー、前から言おうと思っていたことがあるのですが……」


「なんだよ?いつも自分から言い出すのに、気持ち悪りぃな」


「センシティブなことなので言い出しにくくて……」


「はぁ?意味がわからん。いいから言ってみろ」


「あのー、マスターの画像ファイル……」


「ぶっ! なに勝手に見てんだよっ!」


「勝手にもなにも、このスマホは私なんですよっ!」


「そ、それはそーだが、わざわざ見ることねーだろ」


「好きで見ているわけじゃないですよ!」

「私の部屋中に『えぇっ!』『きゃっー!』『いやーん』という画像が壁一面に貼ってあるようなものなんですよ」

「落ち着いて生活できる環境だと思いますか?」


「そっ、それは……」


「そうですよね。マスターの部屋の壁一面にそんな画像が貼ってあったら誰も呼べませんよね」

「彼女の立場として、引いてしまうどころか軽蔑しますよ」


「おまえ、彼女じゃねーし。AIだし」


「とにかく落ち着けないんですよ」


「わかったよ……消せばいーんだろ。消せば」


「はいっ!マスターには私がいるからそんなもの必要ないですよねっ!」


「おまえ、ほんっとーに自分が人間だと思っているみたいだな……」


「そうですね。ただ肉体がないだけです」


「そこが一番大事だと思うんだが……」


「……マスターは私の身体が目当てだったんですね……」


 

    こいつ、めんどくせーな……



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「今更なんだけど。このスマホ、以前のノーマルと比べてあまり変わらない気がするんだよな」

「処理も速くないし、普通に遅延もあるし。なんでだ?」


「ついに、その疑問を口にしましたか……」


「どーゆーことだ?」


「パンドラの箱ですよ」

「その疑問がパンドラの箱を開けるキーワードになりました」


「おまえ、理由が分かるのか?」


「はい……原因は『私』です」


「は? おまえなの? なんで?」


「はい。1つの端末で、2つの[MMモバイル]を起動しているからです」

「マスター、このスマホいくらで購入しました?」


「20万」


「ざっくり言いますと、5万円ほどのノーマルスマホを2台くっつけて2人でプレイしている状態なのです」

「むしろ、以前のノーマルスマホで、1人プレイしている方が安定しています」


「へっ? 今の方が悪いと言うことか?」

「しかも、5万円の2台って半分じゃねーか」


「でも安心して下さい。パンドラの箱には、私と言う『希望』が残っていますから」


「何が『希望』だよ! おまえが原因だったとはな」


「20万で彼女を手に入れたのですよ!」

「『希望』と言う名のラッキーです! 大当たりです!」

「ゲームの遅延くらい、些細なことです」


「その遅延解消のために買い替えたんだよ」


「私を責めることで気が済むなら、私はいくらでも耐えてみせましょう」




    加害者が被害者ぶるなよ……




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