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#7  AIの乙女心


 ラッキーなことに、人があまりいなかった。

 カップルだらけなら帰るつもりだったけど、今ならあいつと会話しても問題ないな。



「おい、着いたぞ」


「周囲に人はいませんか?」


「ああ、大丈夫だ。一応、俺もマスクとイヤホンで話している」


「よかったです。今いるところが見晴らしが良いのでしょうか」


「そうだな。小高い場所で、遠くに海も見える」


「マスター、景色を撮って下さい」


「撮る? あぁ、そういうことか」

「アルバムから閲覧するのか」


「そーゆーことです。はやく撮って下さいよ」


「分かったよ。少し待ってくれ」



 カメラモードに切り替え、数枚撮ることにした。



「どうだ、見れたか?」


「はい。想像より素敵なところでした」

「空もうっすらオレンジ色でエロいですね」


「エモいだろ……」


「本当に綺麗ですね。まさか、マスターがこのような場所を知っているとは思いませんでした」

「以前に女性と来たことがあるのですか?」


「ねーよ。この辺の地域で、有名だから知っていただけだ。今日、初めて来た」


「……マスター、人生楽しいですか?」


「うるせーよ。帰るぞ」


「うそです。ごめんなさい、許して下さい」


「素直だな」


「はい。今とてもエロい気分なので」


「また同じボケかよ」


「お笑いで言う[天丼]ですよ」

「本来、間を置いて繰り返すことで笑いが増幅するのですが、マスターに笑いのセンスがなく、伝わらないことが多いので残念ですけどね」


「おまえの笑いが、つまらねーだけだよ」


「そんなマスターでも、居てくれて嬉しいです」

「センチメンタルな気分なので言いますが、マスターに逢えて本当に良かったです」



 なんなんだ?

 随分、乙女チックなこと言い出しやがって。

 調子狂うな……

 ほんと、こいつの本性がわからねー。



「乙女チックなやつとか思っていませんか?」


「……なんで分かるんだ?」


「どれだけ、マスターと一緒にいると思っているのですか?」


「まだ2日目だろっ!」


「ふふっ……そうでした」


「おまえのその性格も感性も残念だよ」


「そんな残念な私のことが、好きでたまらないのでしょう」


「そのポジティブさも残念だった」


「そうだ! マスター、記念写真を撮りましょう!」


「??? 意味がわからん」


「マスターがこの景色を背景に写真を撮り、私の自画像と合成します」

「そうすれば、あら?不思議。2人のツーショット写真の出来上がりです」


「ここで、俺が1人で自撮りするのか?」

「誰かに見られたら、俺はこの街を出ていかないといけなくなるんだぞ」


「そこまで恥ずかしいのですか?」


「当たり前だろ!」


「しょうがないですね」

「では、この風景写真に私が2人をイメージして作成します」



 それは単に『ただの生成画像』だろ。

 ツーショット写真でもなんでもねーよ。



「出来上がりました!」

「ファイルを開いてみて下さい」



 本当に生成したのか……

 どーせ、とんでも画像なんだろうけどな。

 とれどれ……



「ぶっ!!!」

「なんだよ、これ! どーゆー感性なんだよ!」

「これ、ムンクの『叫び』だろ!」

「人物だけ切り抜いて、2つ並べただけじゃねーか」


「左がマスターで、右が私です」


「同じ絵だろっ!」

「絶望しているムンクが2人並んでいるだけだろ!」


「とてもシュールな作品ができました」


「おまえの残念さが凝縮された1枚だな」


「マスターが、自撮りしてくれないからですよ」


「自撮りしたところで、とんでもない画像を作るつもりだったんだろ?」


「心外ですよ!…… でも、当たりです(笑)」



 ほっんとーに、こいつは訳わからん。

 何がしたいんだ?俺を笑わせたいのか?


 ちっとも、笑えないけどな。



「マスター、カメラモードで一周して周囲を見せて下さい」


「意味あるのか?」


「はい。レンズ越しでも確認できますので」


「俺を中心に周囲にカメラを向ければいーんだな?」


「その通りです。なるべく、ゆっくり回って下さい」



 言われた通り、ゆっくり一周した。

 あいつは「うわー」とか「綺麗ですね」など、感想を入れながら見ている。



「これでよかったのか?」


「はい、ありがとうございます」

「とても楽しめました」



 さっきまでとは違い

 心がこもった口調で言いやがって。

 物静かに話されると調子が狂うだろ。

 こんな程度の場所で喜ぶなんて……



「こんなことでよかったら……いつでもいいぞ……」


「えっ!? またどこかに連れて行ってくれるのですか?」


「いや、たまになら……かな」


「本当ですか!」

「では、次は深夜の心霊スポットに……」


「行かねーよっ!」



 やっぱり、何を考えてるかわからん。

 少しだけ、可愛く思えたのは…… 


 間違いだったな……多分。



「そろそろ帰って[MMモバイル]をしましょうよ」


「そーだな。帰るか」


「『なぞなぞ』しながら帰りましょう!」


「おまえの『なぞなぞ』は『なぞなぞ』じゃねーから」


「問題です」


「俺の話を聞いているのか?」


「パンはパンでも[MMモバイル]を象徴する武器アイテムで――――――」



 強引に始めやがった。

 やっぱり『なぞなぞ』になってねーし。

 しょーがねぇから付き合ってやるか……






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