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自由って素晴らしい!  作者: ミカンかぜ
第五章【不審異常編】
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六話:ここを出ろ

「簡単にやられないでね?」


 女がそう言った瞬間、ルティラとヴェンをとらえようと茨が地面から生える。


「なめんな!」


 しかし、その茨はすぐにヴェンの戦斧によって断ち切られる。


「ふむ……身体強化……2重か。本来、身体強化魔法を使っている者に、更に身体強化魔法をかけることは不可能なはずなのだがな……なぁ、ルティラ・ツェルンよ」


「ふん、貴方と話すことなんてありませんわ!」


「ちょっとちょっと!何2人で話して納得してんの!ボクも忘れないでねっ!」


 女はルティラに一瞬で距離を詰め、刀を振り下ろす。素早く、鋭い一撃。しかしそれをルティラは防御結界で防いだ。その隙にヴェンが女に切りかかる。


「おらっ!」


 が、しかしその戦斧は女に届くことは無かった。


「俺も魔法は使える。忘れてもらっては困るな」


 悪魔族の男がそう言うと、ルティラとヴェンの地面に赤黒い魔方陣が浮かび上がる。


「「っ!」」


 それに当たればただではおかないと2人は本能で悟る。できる限りの対策を。そう思い、ルティラが結界を張るが、その隙に悪魔族の男が別の魔法が2人を襲う。


「くそっ!!」


 ヴェンはルティラに体当たりし、魔方陣の外に突き飛ばした。その瞬間、大きな1本の棘のような火柱が天へと昇る。


「あつっ!」

「づぁ!!!」


 ルティラは攻撃は当たっていないが火柱の熱気に、ヴェンは火柱に当たってしまい、左腕に痛みが走る。


「クロムッ!ボクに説教しておいてキミだって殺しかけてるじゃん!!」


「すまない。加減を間違えた。ただ……お前がいるからまだいけるだろう?ルティラ・ツェルン」


 そう言って悪魔族の男はルティラを見る。


「っ……」


 ここで回復しない選択肢はない。だが、あの悪魔族の2人がルティラ、そしてヴェンを”計画”に必要と言い、何もしてこないということを踏まえれば、ルティラとヴェンが万全の状態にあることに理由があるのだろう。ルティラがそう考え、ヴェンに耳打ちする。


「回復します。ただ、回復をしながらリスタがいるであろうあの宿屋に走りますよ。全力で」


 それを聞き、ヴェンはコクリとうなずく。


「ねぇまだ回復しないの?もうちょっとキミたちと遊びたいんだけど~!」


 刀を持った女が退屈そうにそう言った瞬間。ルティラとヴェンは走り出す。


「あ、逃げた!んもう!クロムがあいつらのことを拘束しないからだよ!!」


「お前が押さえておけばよかっただろう?だが、まぁいい。どこへ行こうと俺たちからは逃げられないのだからな」


* * *


「そう、何もないのだよ」


 リスタの前からそんな声が聞こえてきた。声の主の姿は1度見たことがある。少し小太りで、ギラギラとした瞳。すべての指には宝石があしらわれた指輪をはめている。昨日、この町を出ようとしたときに見た。


「あなたは……この町の領主様ですか?」


「そう。私が領主。オーブル・モーシュ」


 そんなことを言いながらオーブルという男はリスタの前まで歩を進める。


「あなたのその口ぶり。何か知っているのですか?」


「知っているかもしれないし、知らないかもしれない。どちらだと思う?」


「証拠などを含め、考えるのならば、あなたは何も知らないことになりますが、私の直感としては、あなたが何かを知っているのは確実ですね。この空間魔法はあなたが開いたものなのでしょう?私やマリーさんを閉じ込めて何がしたいんですか?」


 そんなことを話していると、突然オーブルの後ろに蜃気楼のような空間の歪みが生じ、そこからフーちゃんが出てきた。


「ふん……獣殻(じゅうがら)……ネズミに毒されおって」


 その時、オーブルの指にはめられている指輪の2つがきらりと光った。その瞬間地面が変形し、岩でできた巨大な槍がフーちゃんに突き刺さる。


「無駄だ。こやつの攻撃は私には届かん」


「っ!獣殻!」


 そう言われるが、マリーはもう一度フーちゃんを召喚し、攻撃を仕掛けさせる。


「無駄だと言っているだろう」


「……ァォゥ…………」


「マリーさん!」


「とめないで!!!」


 そう言うマリーの目には憎悪が、ドロドロとすべてを吞み込まんとする憎悪が宿っていた。


「私は魔力を一切使っていない。なのにお前はどうだ?獣殻(じゅうがら)を呼び出すたび、何かが引きちぎれそうな痛みが走るだろう?」


「なっ?!マリーさん!やめて!」


「だが、憎いんだろう?お前の母親が、この私の手によって殺されたことが!!」


「!!」


「マリーさん!」


「あの女の最後の言葉を教えてやろうか?」


 ニヤニヤとしながらオーブルがマリーを見る。だが、その目はすぐに驚きの目に変わった。


「うっ……」


 リスタはとっさにマリーの首に手刀を食らわせ、マリーを気絶させてしまった。


「ふむ……仲間割れかな?」


「こうしておいた方がいいかと思いまして……」


「……君は奇妙な人間だ。さすがに驚いたぞ」


「……心に従ったまでですよ」


 すでにリスタの右手には真っ黒な鎌が握られ、それはオーブルに向けられていた。


「ふん、俺を殺そうというのか?」


「殺す……ですか……」


 その瞬間、リスタはトンッと地面を軽く蹴る。だが、それだけでリスタはオーブルを射程に収める。


「目的は、脱出です」


 シェリルオーラの黒鎌(こくれん)をオーブルが身に着けている指輪目掛けて振るった。


「!」


 それを防御しようとしたのか、指輪が一瞬だけきらりと光った。だが、何かに気が付いたのか、すぐさまオーブルはリスタのその攻撃をよける。


「お前……その大鎌……なぜ…なぜ!!!お前が!!」


 突然、オーブルは額に青筋を浮かべ、リスタに向けて明確な殺意を向けてくる。


「お前がなぜここにいる!!」


「?」


「お前は人間だろう?!なぜだ!なぜ生(・)き(・)て(・)い(・)る(・)ん(・)だ(・)!!」


「くそっ!あのお方に知らせなければ……」


 オーブルはリスタに聞こえない声で呟き、少しずつリスタから距離を取ろうとしたその時。


「くぅ!!」

「ぐあっ!」


 爆発音とともに、リスタの近くに2つの人影が飛んでくる。


「ルティラ!ヴェン!」


 その2つの人影の正体はルティラとヴェンだ。傷などは見当たらないが、服がところどころ破けているところを見ると、回復魔法のおかげで傷がないとみるのが妥当だろう。


「リスタさん……すみません、逃げてもすぐに追いつかれてしまい……」


 ルティラが無理やりその体を起こそうとしているその時、氷の槍が2つ飛んでくる。しかしそれをリスタは黒い鎌で断ち切った。


「誰ですか」


「お~?また1人増えた。っていうか魔骸(まがい)は3つじゃなかったっけ?あのネズミちゃんと、金髪の人間と、斧を持った人間」


「そのはずだが……っ!」


「どうしたの~?」


「おい、アカリ。お前はさっさとあそこにいるオーブルとともに空間魔法内(ここ)を出ろ」


 クロムという悪魔はアカリという悪魔にそう言った。


「え?なんで?ってか戦えないやつ3人とそこにいる1人の人間に負けるわけな……」


 そんな話をしている隙に、すでに黒い鎌がアカリという悪魔の角に迫っていた。


「はやっ……!」


 クロムという悪魔は茨でそれを防ごうとするが、黒い鎌に巻き付いた瞬間、水分を吸われたかのようにしぼみ、簡単に千切れる。結果、リスタの攻撃を防ぐことはかなわずアカリという悪魔の角に、鎌の軌跡が通り、次にその鎌の軌跡はクロムという悪魔の角に迫っていた。


「っ!オーブル!!」


 クロムという悪魔がそう言うと、世界が一瞬だけ止まったような感覚に陥り、次にガラスが割れるような音がした。その瞬間、空間魔法が解除される。


「狂人が!!」


 そんなオーブルの声がリスタの耳に届いた気がした。が、オーブルやアカリ、クロムの姿はもう見えない。そこにいるのはリスタのほかに、疲弊したルティラ、ヴェンと、気絶したマリーだけだった。

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