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自由って素晴らしい!  作者: ミカンかぜ
第五章【不審異常編】
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二話:奇妙な者

「はい、こちらが今回の報酬金です」


 無事に3人は依頼の報酬金を受け取ることができ、ひと段落する。ただ、これだけではまだまだ3人分の安定した食費などを稼いだとは言えない。今日はこれくらいにして後は休息とするが、明日からは最低でも2回以上は依頼を受けないといけない。


「このお金はお二人に渡しておきます。少ないかもしれませんがそれで何か必要なものでも買っておいてください」


「え?でも、そしたらルティラはどうすんだ?」


「私はメアとロマの面倒を見ておきます」


「そんな、悪いですわ」


「いやいや、最近あまりメアに構ってあげられなかったところでしたし、ちょうどいいです。さ、遠慮なく」


 そう言ってリスタは取っている宿屋に向かう。残された2人は何か言いたげな顔をしていたが、その場からすぐにリスタが立ち去ってしまったため、何かを言うこともなかった。


* * *


「にゃ~」


 宿屋に帰った瞬間、メアがリスタにすり寄ってくる。そんなメアを見て、自分はソファーに座り、メアを抱き上げる。


「ロマはぐっすりですね」


 リスタはロマのほうへと視線を向けてそんなことを言った。ここに来る前に獣を何匹か狩って、いくつかをロマに分け与えているのでよほど温かくならないと起きてこないだろう。


「すみませんね、メア。あまりかまってあげられなくて……」


「ニャ」


 まるで、「そのとおり」だと言わんばかりにメアはリスタの腕に自身の前足をポンと置く。


「今日はずっとここにいますから、いくらでも構ってあげますよ」


「ニャ~♪」


 リスタがそう言うとメアはリスタの腕の中に顔をうずめる。そんな姿が愛らしく、リスタが撫でてやっていると、いつの間にかメアは眠ってしまっていた。


(ここに来る途中までかなり警戒していましたから疲れていたのでしょうね)


 そんなことを考えながらリスタはしばらくメアを撫でていると、突然部屋の扉がノックされた。


「誰ですか?」


「あ、すみません、私、この宿のオーナーの娘でマリーと申します」


 そう言われ、リスタはメアを抱きかかえたまま扉を開ける。そこにはネズミの耳としっぽを持った少女がいた。マリーはメアを見た瞬間びっくりしていたが、すぐにリスタの方を見て話し始める。


「お休みのところごめんなさい。実はさっき騎士様たちが訪れて、話を聞きたいと……大丈夫でしょうか?」


「え、ええ。大丈夫ですが……」


「わかりました。今連れてきますね!」


 そう言って少女は1階に向かっていく。やがてリスタの元に1人の騎士が現れた。


「お休みのところすみません。実は現在、不審者の目撃情報が相次いでおりまして……さらには住民に危害を加えたという情報もあります。ですので、こんな格好をした人物を見かけましたら報告してほしいのですが」


 そう言って犯人像が書かれた紙を渡される。そこに載っているのはのっぺりとした、ただ白いだけの仮面をかぶり、長身。猫背で、ボロボロの薄い緑色のローブを着ている。穴の開いたローブから見えたその者の腕はかなりガリガリだったらしい。当然仮面をかぶっているので顔はわからない。


「一応聞いておきますが、心当たりは?」


「いえ、まったく。というかここには今日来たばかりであまりしっかりと町を見れていませんし……」


「わかりました。ご協力ありがとうございます」


 そう言って騎士は去って行った。残ったのは手元にある奇妙な犯人像が書かれた紙。


(それにしてもこれ、どこかで見たような?いや、気のせいでしょうか?こんな強烈な見た目、1度見れば忘れないでしょうし……)


 そう思いながらもリスタはその紙を見る。しかし、すぐにリスタは目を離した。見続けていると吸い込まれてしまいそうな奇妙な感覚に陥るからだ。


「後で2人にも一応聞いてみましょうか」


 リスタはそう呟き紙を伏せて机に置いた。まだメアはすやすやとリスタの腕の中で眠っている。下手にメアを移動させれば目が覚めてしまうかもしれない。


(まだメアは眠っていることですし、本でも読んで待っていましょうか)


* * *


 そうしてルティラとヴェンが宿屋に戻ってきたのは3時間ほどが経ったときだった。ルティラがちょうど間食にいいだろうとお菓子をお土産として持ってきたのだ。


「このお菓子、意外とおいしいですわね……」


 初めに1口かじったルティラがそんなことを言った。


「元貴族が言うんだから保証できるな」


 そう言ってヴェンはひょいとお菓子を1口で食べる。それに続いてリスタもお菓子をかじった。値段的に砂糖のようなものは使っていないはず。素材の甘さだろうか。


「この国ではない異国のイモを使ったお菓子だそうですわ。甘さはそこから来ているのかと」


 3人はそんな話や、雑談を交える。そうしてルティラが買ってきたお菓子が無くなりそうなときにリスタは机の上の紙を取り、2人に見せながらこの紙をもらった経緯を話した。


「不気味ですわね」

「不気味だな」


「私も同じ意見です。まぁとにかく、数日はこの町に滞在するつもりなので、もしかしたら鉢合わせる可能性もあります。ですので、そういう時は無理せず逃げてくださいね……って、どうしたんですか?」


「「……」」


「ルティラ?ヴェン?」


「あっ、わりぃわりぃ。なんか見たことある気がしてな」


「私(わたくし)も同じく、ですわ。ただいくら考えても記憶の中にはこんなものいませんわ」


「私も……」


「「ん?」」


「私もなんですよ。それを見たことがあるような感覚」


 もしかしたら自分の記憶に関連するものなのかもしれないと、この紙を見た時にそう思ったのだ。だが、それだとおかしいことがある。それはルティラやヴェンもこの奇妙なものを見たことがあるかもしれないという点だ。しかし、ルティラもヴェンもこの旅を始める前には1つも接点などなかった。


「どうして私たち3人がこれに見覚えがあるのでしょうか……」


 考えてみても答えが出ないことは明らかだったが、脳はそれを思い出そうと思考する。


「──」


 その時、誰かの声が耳元で聞こえた気がした。瞬間、リスタは振り返る。


(誰もいない……)


 そう思い、もう一度視線を2人に戻すと、2人も同じように自分の後ろを振り返っていた。


(さっきの声、2人にも?)


 リスタはそう考え、2人に何があったのか聞こうとすると、今度は宿の外が騒がしくなってくる。


「外が……どうかしたんでしょうか?」


「私(わたくし)が見てきますわ」


「俺も行くぜ」


 そう言ってルティラとヴェンは外に様子を見に行く。リスタも行こうとしたがまだメアはリスタの膝の上で眠っているため、ゆっくりとメアのことをベットの上に降ろし、遅れて2人の後を続いた。


 そうしてリスタが外に出ると騎士たちがどこかへ向けて走って行っている様子が見えた。近くにいたルティラやヴェンに聞いてみると、どうやら先ほどの紙に書かれていた奇妙な者に襲われた人がいたらしい。


「……私、見てきます」


「ちょっと!1人では行かせませんわ」


 リスタが騎士が走っていった方向に走り出すと、それにルティラもヴェンもついてきた。それから3人が奇妙な者がいたらしい場所に向かっている途中、うっすらと嫌なにおいが漂ってきた。


「ルティラ、ヴェン。わかりますか?」


「あぁ、血の匂いだろ?」


「何かあったのは明白ですわね」


 ただ血の匂いがするだけならまだよかったかもしれない。だが、先ほどからリスタの周りにまとわりつく嫌な予感がこれだけではないと告げている。


「2人とも。警戒してください」


 リスタがそう言ったとき、どこからか声が聞こえてきた。


「出たぞ!!逃がすな!」


 ガシャガシャという鎧の音がかすかに聞こえることから騎士が、そして騎士たちの発言からあの紙に書いてあった奇妙な者がいたのだろうということがわかる。


「2人とも、こっそり見ましょう」


 そう言ってリスタは家の屋根の上に飛び移り、声がした方向を見た。そこにはリスタが予想した通り、十数人ほどの騎士たちと、あの紙に書いてあった奇妙な者がいた。


「捕まえろ!!」


 騎士たちがそう言った瞬間のことだった。


「ァ……ァァ……」


 小さくも耳につんざくような声が聞こえたかと思うと、”ソレ”は騎士の持つ剣に向けてゆっくりと手を伸ばす。手を伸ばされた騎士は、不気味に思ったのか、その手を払いのけようとした。その時の事であった。

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