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自由って素晴らしい!  作者: ミカンかぜ
第三章【私のために貴女に願う編】
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八話:むかつく(1)

 ルティラは白蛇に自らのことを話し始める。ルティラ・ツェルン、15歳。約5年前にこの国の第一王子であるクローツ・アルフ・フロンツの婚約者となった。


「本当に運がよかったですわ」


[なんで?]


(わたくし)以外にも見目麗しい方もたくさんいますし、優秀な方もたくさんいます。その中で(わたくし)を選んでくれたことは大変光栄なことです」


 そう言っているルティラを、白蛇はジィっと見ている。しかしそれにルティラは気づかず、そのまま話し続ける。


「クローツ殿下はとても優秀で聡明なお方です。(わたくし)、公の場で人々と対話をするということにとても緊張するのですが、殿下はそのようなそぶりは一切見せず、いつも笑顔で人々と関わってらっしゃっているのです。殿下は尊敬できる方の1人ですわ」


[その王子様は今どこにいるの?]


「正確な場所はわかりませんが、この王城にはいるはずですわ」


[連れて行ってくれない?]


「そ、それは……難しいですわね」


[あっそ]


 白蛇は紙にそう書き、ベットの上から降りる。どうやらどこかに行こうとしているようだ。


「し、白蛇様?どこへ……」


「シャー!」


 何を言っているのかルティラには理解できないが、1つ、嫌な予感が頭をよぎる。


「まさか、殿下に会いに行くなんてこと、ありませんわよね?」


 そんなルティラに白蛇は首をかしげて見せる。そのあいまいな返事を確信にしたいがためにルティラは白蛇に紙とインクを渡すが、それを白蛇は拒否し、部屋の絨毯の端っこでしっぽについたインクをふき取ると、そのまま器用に扉を開けようとする。


「だ、ダメです!」


「シャー!!」


 阻止するルティラに向けて、白蛇は威嚇する。ルティラはそれに一瞬驚いたが、ドアノブは離さない。白蛇の行く末を阻むことはこの国では禁忌だ。だが、ルティラは反射的にそれをしてしまった。そう思ったときには、すでにルティラの手はドアノブから離れてしまった。

 それを白蛇は逃さず、器用にドアを開け、その部屋から出て行ってしまう。


「……」


 禁忌を破ってしまったことにより、血の気が引き、足の力が抜けてしまう。なんとなくあの白蛇を行かせてはならないと思ってしまったその事実が、少しだけ足に力を入れようとあらがう。ただ、それはかなわず、ついに白蛇を追いかけることはかなわなかった。


「……白蛇様」


* * *


『王子様の存在がブドウ姫がずっと暗い原因ネ』


 ロマは今、フロンツ王国の王城で人目を避けながらこの国の第一王子であるクローツ・アルフ・フロンツを探し回っていた。ロマがここまで来た理由は、正直自分でもわかってはいない。だが、1つ言えることは、むかついたからだ。ルティラと初めて出会ったとき、自分ではわかっていない……いや、周りもおそらくわかってはいないが、ルティラはずっと暗い表情をしているとロマは感じたのだ。その表情に……その表情をさせる者にものすごくむかついた。だからロマはここまでついてきたのである。主であるリスタの元に戻らずに、だ。


『ゴシュジン、心配してるでしょうネ……』


 感情に任せてここまで来たのは後悔はしている。だが、ここで帰るのも嫌だ。その2つの感情がロマの中で渦巻き、更にロマの苛立ちを加速させているのだ。


『……というかアタシ、よく考えてみたら王子様の顔知らないワ……ちょっと調べるしかなさそう』


 そうしてロマはしばらく王城でクローツがどこにいるのか、どのような顔をしているのか調べることになったのだった。


* * * 


 そうしてロマは王城を探し回る。だが、王城の大きさは人間ですら広く、迷いそうだと感じるほどだ。それが蛇になると、更に広く、更に迷いそうになるというのは当然だ。


『ここ……1回来たわネ』


 そんなことが何回かあり、すでに日が傾き始めていた。この王城に着いたのは昼過ぎ。もうすでに5時間以上は経過している。ロマは昼ご飯を食べてはいたが、隠れなければいけなかったため、ロマのための食事はあまりなかったのだ。だから、ロマがお腹がいっぱいと思えるまでご飯を食べてはいない。


『ン~……アッチからいい匂いがするワ』


 そうして空腹のせいでよりおいしそうな匂いにつられ、ロマはその匂いがする方向へ進んでいく。そうしてしばらくするうちに、ロマは厨房を窓から覗き込む形となる。


『あの鶏肉……食べれないカシラ?』


 そう思いながらロマがその光景を眺めていると、料理人たちは食べられない部位をごみ箱に捨てる。ロマはもとは野生だ。だから、基本的にごみでも食べようと思えば食べる。普段はリスタに止められているだけだ。


『食べたい……でもどこから入れば……アッ!』


 そうしてロマはあたりをきょろきょろと見まわし、近くに通気口を見つける。そこへ侵入すると、ロマの読み通りその通気口は厨房へとつながっていた。


『人間たちが邪魔ネェ……』


 人間たちの目につかない場所がないかロマは他の道を探してみるが、なかなかいい道が見つからない。グズグズしていると日が沈み、気温が下がる。そうなってしまえばロマの活動は一時的に中断となってしまう。


『早く王子様の顔も見ないといけないのに……』


 そうしてロマが厨房のほうを見ると、先ほどより料理人が多くなっていた。どうやら今から本格的に夕食の準備が始まったようで、これからしばらくは絶対に厨房に立ち入ることはできないだろう。そんなことをロマはつゆ知らず、厨房につながっている通気口でジッとする。

 それから何時間経過しただろうか。ロマは厨房からするいい匂いによって暴れそうな本能を抑えながら、ごみ箱に捨てられていく食材をじっと見ていた。そうして料理が作られ、少しすると、厨房から人がだんだんと消えていく。そうして、運よく人がいなくなった瞬間が出来上がった。その時を狙ってロマは一気にゴミ箱のほうへと這いずっていく。


『いただきま~す』


 そうしてロマはごみ箱に捨てられた鶏肉を食べていく。ごみ箱に捨てるにしてはあまりにもおいしく、そのおいしさに対する感動で体が震えそうなほどだ。


『ふぅ…これでまだ動けるワ』


 そうしてごみ箱の中をあさったロマはまた厨房につながっていた通気口に戻っていく。


『さて……今度はどこに行こうかしら?』


 そう言ってロマは明かりのついている部屋をいくつか周る。いくつかそれっぽい部屋があったが、どれも”それっぽい”だけだ。王子がいる部屋ではない。


『ハァ……あれを最後にして今日はもう寝ようかしらネ……』


 そうして最後の望みにかけて、かなり高い位置にある部屋を覗き込む。そこはカーテンが閉められているが、少し隙間から中の様子を見ることができた。中にいるのは金髪の男と、もう1人、誰かがいる。だが、カーテンでうまく隠れており、もう1人が見えない。


『……ン~?何かしゃべってる?ほかに誰かいる?』


 そして、口を動かしているのを見ることはできるのだが、声が一切聞こえない。というか、中からの音が一切聞こえない。


『魔法で音が漏れないようにしてるのネ。こんな時、ゴシュジンの鎌があればいいのに……』


 だが、聞こえないからと言ってロマはあきらめない。あれこれ策を練り、実行していると、窓から滑り落ちてしまう。今ロマがのぞいていたのはかなり上の階層であり、落下してしまえばただでは済まない。


『どうする?!どうする?!』


 どうにかしようとするが、焦りで周りが見えなくなる。まぁ、周りが見えていたとしても何か使えるものなどない。そうして地面に衝突しそうなとき、ロマはもふもふとしたものの上に落下した。


『ん?ナニ?』


 そうしてロマは自分が何に落ちたのか確認するとそこには真っ黒な猫がいた。

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