八話:服を変えて(1)
ギリギリとレピファの首を絞めるフローラを、リスタはただ眺めていることしかできない。その無力感が、リスタを絶望へ続く崖へと立たせた。
「レピファちゃん。さよなら。君の体は私の服にしてあげるからね」
そう言ってフローラがさらに手に力を込めようとしたときだった。
「っ!?」
その力が一瞬にして抜ける。少し遅れてフローラの腕が切り離されたことに、リスタ、フローラ、レピファの3人は気が付いた。今までレピファに向けていた目を別の場所へ移す。そこには陰鬱そうな男がその手に持っている剣を、今まさにフローラへと振り下ろそうとしていた。が、小柄な彼女はその剣をすんでのところで避け、距離をとった。
「カルディール・ジーロッド……めんどくさい人間が来た…はぁ……」
「めんどくさくて悪かったな」
「んもう。私の服も台無しにしてくれちゃって……これ結構お気に入りだったのに~」
そう言ったフローラは、また服を脱ぐかのように皮を脱ぎ捨てた。その下からはまた新たな少女の姿が現れる。その際、切られた腕はいつの間にか再生していた。
「それにしてもなんでここにいるの?」
「帝都の中で”人よけの魔法”が使われていれば嫌でもそこを調べるだろう?」
「無意識的にその場所に行くことを避けるから”人よけの魔法”なんだけどな~?やっぱりシルディア帝国第2騎士団団長。一筋縄じゃ行かないね」
「まぁ、先に気が付いたのは俺ではないが……」
「ん?あ~……ジェーン・ドゥのほうかな?たしか貴方と仲が良かったよね?」
「仲がいいと言われれば、俺は「そうじゃない」と答える」
「あっそ。まぁそんなのはどうでもいいの。それよりどうしてくれんの?リスタちゃんの入手と、新しい服を手に入れようとしてたのに、それを邪魔して、挙句には私のお気に入りの服も切っちゃって……どうしてくれんの?」
「俺には市民を守ることしかできないからな。お前の要望には応えられない」
「え~、私だって元市民だよ?もっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?」
「あぁ、すまないな。俺は適当な人間でな。元市民は市民じゃないと思ってるんだ」
「正気?それ、正義の騎士様の言うことじゃないと思うんだけど」
「俺は正義じゃないからな」
「じゃあ、悪?」
「悪でもない。お前の考え方は見た目以上に子供なんだ、なっ!!」
そうしてカルディールは再びフローラに切りかかる。だが、それを再びひらりと避けた。それにカルディールは違和感を覚える。明らかに当たるような攻撃。カルディールの経験からくるその判断は間違っていないはずだ。だが、向こうはそれを軽々と越えてくる。
(俺が見ているあいつと、実物のあいつの間には妙な歪みがあるな……これは……あぁ、過去に1度だけ会ったことがあるな……)
何かを確信し、カルディールはフローラに向けて好奇の目をとレピファの首を絞めるフローラを、リスタはただ眺めていることしかできない。その無力感が、リスタを絶望へ続く崖へと立たせた。
「レピファちゃん。さよなら。君の体は私の服にしてあげるからね」
そう言ってフローラがさらに手に力を込めようとしたときだった。
「っ!?」
その力が一瞬にして抜ける。少し遅れてフローラの腕が切り離されたことに、リスタ、フローラ、レピファの3人は気が付いた。今までレピファに向けていた目を別の場所へ移す。そこには陰鬱そうな男がその手に持っている剣を、今まさにフローラへと振り下ろそうとしていた。が、小柄な彼女はその剣をすんでのところで避け、距離をとった。
「カルディール・ジーロッド……めんどくさい人間が来た…はぁ……」
「めんどくさくて悪かったな」
「んもう。私の服も台無しにしてくれちゃって……これ結構お気に入りだったのに~」
そう言ったフローラは、また服を脱ぐかのように皮を脱ぎ捨てた。その下からはまた新たな少女の姿が現れる。その際、切られた腕はいつの間にか再生していた。
「それにしてもなんでここにいるの?」
「帝都の中で”人よけの魔法”が使われていれば嫌でもそこを調べるだろう?」
「無意識的にその場所に行くことを避けるから”人よけの魔法”なんだけどな~?やっぱりシルディア帝国第2騎士団団長。一筋縄じゃ行かないね」
「まぁ、先に気が付いたのは俺ではないが……」
「ん?あ~……ジェーン・ドゥのほうかな?たしか貴方と仲が良かったよね?」
「仲がいいと言われれば、俺は「そうじゃない」と答える」
「あっそ。まぁそんなのはどうでもいいの。それよりどうしてくれんの?リスタちゃんの入手と、新しい服を手に入れようとしてたのに、それを邪魔して、挙句には私のお気に入りの服も切っちゃって……どうしてくれんの?」
「俺には市民を守ることしかできないからな。お前の要望には応えられない」
「え~、私だって元市民だよ?もっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?」
「あぁ、すまないな。俺は適当な人間でな。元市民は市民じゃないと思ってるんだ」
「正気?それ、正義の騎士様の言うことじゃないと思うんだけど」
「俺は正義じゃないからな」
「じゃあ、悪?」
「悪でもない。お前の考え方は見た目以上に子供なんだ、なっ!!」
そうしてカルディールは再びフローラに切りかかる。だが、それを再びひらりと避けた。それにカルディールは違和感を覚える。明らかに当たるような攻撃。カルディールの経験からくるその判断は間違っていないはずだ。だが、向こうはそれを軽々と越えてくる。
(俺が見ているあいつと、実物のあいつの間には妙な歪みがあるな……これは……あぁ、過去に1度だけ会ったことがあるな……)
何かを確信し、カルディールはフローラに向けて好奇の目を向けた。
「死霊族か」
「知ってるんだ」
「あぁ、1度だけ会ったことがある」
死霊族は特殊な種族である。人間族は人間族として、獣人族は獣人族として生きて、そして死んでいく。死んだあとはもちろんその体が動くことはないし、しゃべることもない。ただ、ごくまれに死んだ後によみがえることがある。それが死霊族。体は死体となっているのにもかかわらず永久に腐らずに存在し、寿命はないので半永久的にこの世界をさまよい続ける存在。
そんな死霊族は、生者から見た場所とは少しずれた場所にいる。触ったと思っても、実際に触ることができないことがあるのだ。どういう理屈かは現在でもわかっていない。
「さっきまでお前は死霊族じゃなかっただろ?なぜ今そうなった?」
「ん~?おしえな~い」
「はぁ……だろうな」
そう言ってカルディールが再び剣を構えたその時。メギョという音がしたかと思うと、リスタがとらえられていた檻が、1人の女性によって簡単にこじ開けられた。その女性はメイド服を着ており、頭には後ろに伸びるまっすぐな角が生え、メイド服のスカートの中から鱗のついたしっぽが顔を出している。
「テューネさん!ということは……」
「ええ、ジェーン様も」
テューネがそう言うと、フローラの少し左へ向かっていくつかの魔法が飛んでいく。本来ならばフローラは動かなくても当たらない位置。だったのだが、それをフローラは避けるそぶりを見せた。
「ディール君の言う通りだね。君は今、死霊族だ」
そう言いながらジェーンがフローラの前に現れる。
「テューネ。リスタちゃんとレピファちゃんを連れて逃げて。ここは私たちで処理する」
「かしこまりました」
そう言ってテューネはリスタとレピファを連れてどこかへと姿を消した。
「ディール君も行っていいよ。ここは私がやるから」
「できるのか?」
「なめないで。こんな子、私1人で十分」
「なら遠慮なく」
そう言ってカルディールもどこかへと行ってしまった。その場にはジェーンとフローラだけが残される。
「あれ?いいの?私以外もここ見てて、私のお手伝いしてくれてるんだけど……」
「構わない。それよりも……君の心器をもっと見たくなっちゃった」
「ふ~ん……」
「だから、ここからは私と君の勝負だよ。フローラちゃん?」




