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最強コーチは戦わない ~人工魔法競技~  作者: たなお
2章 タッグバトル編
77/102

77話 

 シンはハヤトと別れた後、祐乃を自宅まで送り届けると帰宅した。

『今日はごめんなさい』と謝罪されたが、一切怒る気にはなれなかった。

 

「ったく…まったく何だったんだ?」


 ため息を吐くとリビングのソファーに腰かける。

 腕と足を組んで考え込んでいると姉の瑠偉が仕事から帰宅してきた。


「よう姉貴、お疲れ~」

「ああ、まったくだよ。今日も疲れた」


「土日も休みがないとは教員は大変だな」

「シンには就職して欲しいが教員になることだけはすすめんよ」


 瑠偉はシンの隣に座り、買ってきた弁当を手渡した。

 シンは嬉しそうな表情をすると、うきうきで発泡スチロール製の弁当箱を開いた。

 

 黒ゴマが振りかけられた白米。小さな固い梅干し。大きな鳥の唐揚げ。ポテトサラダ。

 シンプルな唐揚げ弁当だった。

 出来立てらしく、から揚げからは湯気が昇っている。

 シンは唐揚げを頬張ると、口を開いた。


「んぐんぐ…なー姉貴。聞きたいことあんだけど」

「食うか喋るか、どっちかにしろ」


 シンは唐揚げをゴクリと飲み込み、弁当箱を机の上に置くと、相談の続きを話し始めた。


「祐乃について何か知ってること教えてくれ」

「何かあったのか?」

「今日、祐乃と会ったんだけどよ。ちょっと厄介なことが起きてな」


 シンの相談に瑠偉の目が鋭く吊り上がる。


「まさかお前、夏目と遊ぶために私から金を借りたのか? 教職の関係者が学校行事以外で意図的に生徒と会うのは禁止されているぞ」

「今、頭の固い話はやめてくれ。それはまた別の日に説教受けるからよ」

「まったく…お前と言うヤツは…」


 瑠偉は呆れてため息を吐くと、シンは相談を続けた。

 普段はふざけた言動が多い弟であるが、真面目な顔をする時は嘘はつかない。

 何かをやろうとしている――それを姉は知っていた。


「祐乃が突然泣き始めた。姉貴、何か心当たりはないか?」

「言葉だけでは状況がわからない。詳しく話せ」

「実は―――」


 シンは今日の出来事をこと細かく話す。

 瑠偉は言葉を遮ることなく、真面目な顔で「なるほど」と頷きながら話を聞く。

 夏目祐乃は大事な生徒であり、担任でもある。

『突然泣き始めた』という状況に危機感を感じていた。


「――ってわけなんだよ」


 長い話が終わり、シンは再び弁当を口にする。

 あったかい唐揚げは既に冷めていた。


 話を聞き終わった瑠偉は、視線を下に動かすと腕を組む。


「…迷惑をかけたな。すまなかった」

「なんで姉貴が謝るんだ?」


 突然の謝罪に困惑し、シンは首を傾げた。

 瑠偉はため息を吐くと苦々しい表情でため息を吐いた。


「こんなことになる前に、担任である私がなんとかするべきだったんだ」

「何か祐乃の事情を知ってそうだな。話してくれよ」


 瑠偉は腕を組みながら、数秒目を閉じた。

 祐乃もプライバシーもある。

 どのくらい話して良いか悩んでいるようだった。

 

 そして覚悟が決まったのか、瑠偉は口を開く。


「ヤングケアラーという言葉を知っているか?」

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