魔王城、観光収入に目覚める
第8話です。王都側の不正と魔王領再建がつながり始めます。
魔王城に、観光客が来た。
と言っても、最初は一人だ。橋の修繕後にできた市場で、迷子になった商人の子どもが、城の方角を指して言った。
「あっち、でっかいお化け屋敷があるって!」
城を“お化け屋敷”と呼ばれたリゼリアは、三秒だけ固まり、次の瞬間、僕に詰め寄った。
「お化け屋敷ではない。魔王城だ」
「観光資源です」
僕は即答した。市場はできた。橋も直した。次は“来る理由”を増やす番だ。
「入場料を取るのか」
「取れます。安全が担保できれば」
黒狼部隊が門番をする。罠は停止。危険区域は封鎖。案内板を立てる。
問題は、魔王城が“怖い”ことではない。
怖さが、価値になることだ。
「魔王様」
僕はリゼリアに紙を渡した。
『魔王城ツアー(初日限定) 入場料:銀貨二枚 特典:記念の督促状(複製)』
「督促状を配るのか」
「笑いは拡散します。拡散は集客です」
リゼリアは納得していない顔をしたが、銀貨が集まると目の色が変わった。
昼には、入場列ができた。
「魔王城、思ったよりボロい!」
「玉座、質に入れたってマジ?」
「この督促状かわいい」
人間の笑い声が城に響く。僕は収支表に書き込む。
『観光収入 銀貨二六四枚』
リゼリアが、少しだけ胸を張った。
「我が城は、まだ終わっておらぬな」
「ええ。終わらせません」
差し押さえ期限まで、あと二十八日。
魔王城の“怖さ”は、今日から“売上”になる。
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