聖剣研磨費の不正請求、王都に届く
第7話です。王都側の不正と魔王領再建がつながり始めます。
王都行きの伝令が、魔王城の門前で止まった。
黒狼が、首元をくわえて引きずってきたからだ。
「食べないで。これは食べ物じゃない」
僕は咄嗟に言った。黒狼は鼻を鳴らし、伝令の胸当てを軽く叩く。そこには赤い封蝋。
王国監査院の印章だった。
「……早いな」
追放された監査官に、王都から手紙が来る。普通なら悪い知らせだ。
リゼリアが後ろから覗き込む。
「それは、金の話か」
「たぶん、金です」
封を切ると、紙の端から細い光が滲んだ。誓約魔法の類──王都側が“嘘を許さない形式”で送ってきた証拠だ。
『勇者アレス遠征費 聖剣研磨費 請求額:金貨一二〇〇枚』
『相場の一〇倍。請求先が王都財務局に誤送。至急、監査官ルカの見解を求む』
僕は思わず笑いそうになった。
「誤送って、あの人は」
勇者は英雄の顔をしている。だから雑な嘘が通ると思っている。……通らない。
リゼリアが腕を組む。
「勇者が、金を盗んだのか」
「盗んだというより、盗ませた、かもしれません。研磨職人側の請求書が怪しい」
僕は机に紙を置き、もう一枚取り出す。追放直前に署名させた『経費管理責任者の変更届』。
「これがあるから、責任は僕じゃない。だから、言えることがある」
僕は返書を書いた。
『請求書の発行元を調査ください。研磨費が膨らむ場合、往々にして“手数料”が乗ります。勇者本人の口座ではなく、仲介商会・武具ギルドの帳簿を押さえるべきです』
黒狼が尻尾を振った。伝令に返書を持たせる気らしい。
リゼリアがぽつりと言う。
「王都の金が動くなら、いずれここにも来る」
「ええ」
勇者パーティが帳簿で詰む時、逃げ道はひとつしかない。
責任を押し付けられる相手を、取り戻しに来る。
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