【第四章 - 5】安堵の微笑み
手紙を読んだれいりは、王宮へと急ぐ。
その目的は、竜災と皇帝と皇后の殺害が阻止されたという伝言を伝えるのが主な目的であったが、預言者の報告を兼ねてのもの。
それからいつも通り、交友関係のあるカーロの部屋に招待された。
宮殿の前に着くと、そこに勤めている騎士に一礼される。
「れいり様。本日もカーロ様とお茶会ですか?」
いつの間にか、カーロと強い信頼関係を結びつつあったれいりは、いつの間にか宮殿の常連客になっていたようだった。
「いや、今日は帝国の事で話がしたいんだ」
「そうなんですね」
それから、騎士は連絡を取ったのち、すんなりとれいりを宮殿へと案内してくれた。
とはいっても、重要な話であろうとエリーナをカーロの部屋へ招いて話をするのが通常だったので、れいりは何となく察していた。
しかし、その予想とは裏腹に案内されたのはエリーナの部屋だった。
以前、ここに来た時から半年以上が経っていたが、前と部屋の雰囲気が変わったようすもなく、相変わらず妙に落ち着く部屋だった。
ただ、気になることとすれば、エリーナの目の下にくまがあったこと。疲れているのだろうか。
「おはよう」
と、何気ない感じで声をかけてみるも、エリーナは反応を見せなかった。疲労のあまり、誰かが入ってきたことにも気づかないとはーー相当だ。
仕方が無いので、れいりはエリーナに近寄って、うしろから肩をトントンと叩くと。はっとして目を見開いた後、うしろを振り返った。
「あ、れいりか。すまなかった」
それに対して、いえいえとれいりはハンドサインをする。
「多分だけど、自分の親が死ぬことを受け入れたくないんでしょ?」
エリーナは、首を振ったが、表情を見るに、れいりの予想は当たっているようだった。相変わらず、強気なやつだ。
「良いお知らせと悪いお知らせどっちから聞きたい?」
娯楽小説に出てくる様なセリフを、れいりは言ってみせた。
「では、良い知らせから聞こうか」
「涙の予言が変わったの。エリーナの親は殺されないし、竜災も来ない」
れいりが、そういうと、エリーナの表情が和らいで、今にも泣きそうな表情をしていた。でも、それを民にみせるわけにもいかないとおもったのだろうかーー必死にそれを抑えていた。
「それで、何があって予言が変わったのだ?」
それから、まるで自分の自慢でもするかのようにれいりは言う。
「私の知り合い、いや仲の良い『冷徹なスナイパー』のお陰だよ。竜災の原因を直接竜に聞きに行ってくれたんだ」
それから、今まであった出来事を全て話すと、エリーナは穏やかな表情で言った。
「流石だな。それで、悪い知らせとは何なのだ?」
「それは、涙からの伝言」
そう言って、れいりは手紙をエリーナに差し出した。
その手紙に軽く目を通してからエリーナは言う。
「カーロが、帝国を裏切るようなことをするとは思えないなーーあるとするならば、何か外部的なもの。スパイや脅迫。しかし、ただ、向こうの腕が高いというのが一番考えられる」
「その才能をもっとうまく使ってくれるなら、助かるのだがな。分かった、父上に全て報告しておこう」
ため息混じりにエリーナは言った。
「そうだ、今日はカーロとお茶会をするのか?」
「まぁ、出来るなら」
「大丈夫だ。カーロは今日の朝。『こんな天気の日はれいり様たちとお茶会をしたいですわ』と言っていた」
それなら、甘猫を呼ばなくてはならないが……まぁ、いつも通りこの時間帯は市場にいるだろう。
「それで、その前に新しい任務があるのだが」
それを聞いて、れいりは孤児院の件だなと瞬時に理解する。
「今回は、アドゥリン孤児院へと行って欲しい。ただ、まだ何も起こさないでくれ、その後、アンフィティア孤児院へも足を運んで欲しい」
「それは、何故?」
「今回の目的は、主にアドゥリン孤児院であるが、ここの二つの孤児院は連携を取っている可能性がある。それを考慮して、両者共にみてから、行動をして欲しいというだけだ」
その理由に納得したれいりは、そのまま尋ねた。
「今回は、どんな理由で行くことになってるの?」
「そうだな……簡単に言えば、交流祭と呼ぶべきだろうか、その代表として出席する。そう、個人的な仕事ではなく三大賢者の仕事だ。そして、今回。ガイアの人間と会うことになるだろう」




