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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第四章 アドゥリン孤児院編

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【第四章 - 4】涙からの手紙

「えっと……なんで、ここに竜が?」

 っと、行ったのも束の間、その竜は一瞬の内に人間の姿へと変わった。そして、言う。


「ちょっと、文句があるので言いにきました!」と。

 でも、何故心虹家なのか……、もしかして、お母さんが何かやらかしてしまったとか?

「なんでも良いですが、帰ってください、れいり様に手を出させるわけにはいきません」


「まぁまぁ、せっかくだし、聞いてあげよう」

 甘猫をなだめたれいりは、そのまま彼を家の中に上がらせた。


 * * *


 ーー「なんだい。うちの娘に何かようかな」

 と、お父さんは、まるで結婚の挨拶をしにきた彼氏のように竜に尋ねた。


「いいえ、私は今日、文句を言いにきたのです」

「でも、なんでうちなのかしら。私たち、何かやらかした記憶は無いのだけれど……」


「違います。そういうことではありません」

 そう言った竜に、皆は疑問を覚える。すると、彼はここへ来た経緯を話し始めた。


 ーーそう、それは今日の昼間。彼が洞窟で昼寝をしていた時のことだった。

「やぁやぁ」

 と、無言で立ち入ってきた彼女に、威嚇した。


 でも、彼女はそんなのもろともせず、そのまま話始める。

「近頃、どうかね。何か、困っていることはあるかい?」

 前置きもせずに、そんなプライベートな質問をしてくる彼女の失敬さに、魔法を一回打ち、己の力を見せつけてみようとでも思った。

 でも、それは間違いだったのだ。


 そんな攻撃を、いとも簡単に防ぎきった。

「それで、どうだ?」


 力のあるものが絶対である竜社会出身だったので、みずから彼女に従った。

「本当、最近は戦いが激化していて大変だ。みんな不満を持っている」


「それはなぜだ?」

「この間、デゼルダに星精霊が召喚されたお陰で……皆、ご主人様に選ばれようと必死になっているからだ」


「ご主人様?竜族の頂点に立つ者は精霊だったのか」

 不思議そうに尋ねてくる彼女に頷くと、少し息を吸ってから彼女は言った。

「では、ルミナスタウンから少し離れた場所に虹色の人間が居る。その場所に行ってこい。さすれば、全てが解決するだろう」


 ーーという理由で来たそうで……。

「それはそれは、うちの知り合いがごめんね」


「本当ですよ。早く解決してくれないと、自分の仲間がルミナスタウンを襲ってしまいます」

「あれ、そういうことだったの?」


 あの、涙による予言は、不満を持った竜が襲撃するというものだったらしいーーもし、これを解決すれば、竜災は免れそうだ。

「でも、この件。どうしたら良いの?召喚された星精霊は魔法の効果も切れて、帰ったはずじゃ」


「いいえ、帰っていませんよ」

「じゃあ、その竜を帰らせれば良いってこと?」

 そう尋ねると、彼は頷いた。


「じゃあ、分かった。連絡しておくよ」

 それから、れいりは涙へと手紙を書いて、伝書鳩へデゼルダへと送らせた。

 そして、彼はそそくさと帰っていったのだ。


「さすが『冷徹なスナイパー』ちゃんね。解決の仕方が斬新」

 と、思わずお母さんは感想を述べた。


「それでは、一旦夕飯にでもしましょうか」


 * * *


 それから一週間後。

 れいりが最近買った新しい娯楽小説を読んでいると、窓に一匹の伝書鳩が止まった。


 窓を開けて、足についている紙を取る。その差出人は『涙』だった。

「れいり様へ

 お手紙ありがとうございます。ご指摘を受けた竜の件について、早急に対処をいたしました。また、私のミスによって災害が引き起こされるとはーー深く反省しております。


 追記:

 朗報が一つ。新しく星を詠んだ結果、竜災が回避されたのはもちろん、皇后と皇帝の死も免れることとなりました。

 実は、お二方の死の原因は竜災ではなく『他殺』の予定だった。竜災の混乱に乗じた、火事場泥棒のような襲撃計画でした。


 しかし、ここで一つ懸念があります。 私やセレディアの情報なしでこの襲撃を予言(察知)していた者がいるとすれば、そのグループには相当な手練れがいるか、あるいはセレディアと裏で協力関係を結んでいる可能性があります。 これは、非常に危険な兆候です。念の為、帝国側に協力を依頼できないでしょうか。

  涙より」


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