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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第三章 デゼルダ孤児院 前編

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【第三章 - 19】ナディアの無事

そして、真っ先に甘猫が向かった場所は他でも無い。初めてアステールと出会った施設。この場所にナディアが来ると、アステールは予言した。

甘猫はナディアのポテンシャルを誰よりも先に理解した。だから、この場で最も役に立つと思ったのだ。


思った通り、警備の人など誰一人としていなかったお陰で、甘猫はすんなりと施設に入ることに成功。

それから、ナディアのいる場所に行くまでにもそこまでの時間は要さなかった。


ただ、ナディアのいる施設に侵入した時。甘猫は、ナディアを利用することを瞬時に止めた。

この光景を見て、まだその考えを突き通す人など、相当残酷でなければ難しいから。


* * *


施設の中へと足を踏み入れた甘猫は、当たり前のように孤児の注目の的となった。その中には敵意を向けてくる者も少なくは無い。

だから、甘猫はいつもより少しトーンを落として、落ち着いた口調で言った。


「安心してください。私も、施設出身の者ですから」

これを聞いて瞬時に安心する者はそうそう居ないだろう。でも、共感、仲間意識というのは、人との扉に鍵を開ける重要なステップなのだ。


すると、少し後ろの方から聞き覚えのある大きな声が聞こえてきた。

「もしかして、甘猫さんっ!?」

甘猫は振り返り彼女に近づく。それは、以前よりも痩せてはいたが、確かにナディアだった。


「お久しぶりです。ナディア様」

彼女の視線に合わせるため、甘猫はしゃがんでから言った。それに応えるように、ナディアは思わず笑みを浮かべる。


「もしかして、これって……お姉ちゃんが見つかったってこと?」

「はい。しかしながら、お姉様が魔法で呼び起こした竜が施設を壊そうとしていまして……」

申し訳なさそうに告げる甘猫。それに対して、ディアは苦笑いした。


「また、寝ぼけてやっちゃったか……」

「何故それを……」


「前にも同じようなことがあってね、寝不足だったお姉ちゃんが街の外をドカーンとさせちゃったんだ。それも何回も」

「常習犯ですか……」

呆れ気味に言う甘猫に、ナディアは微笑んで頷く。それから、この施設全体に響くような大声で言った。


「みんなー、この人は大丈夫!それに、お姉ちゃんが寝ぼけてオバケをドカーンとしに来てくれたみたい」

すると、周りが少し安心の笑みを浮かべ始め、先ほどの張り詰めた空気は段々と穏やかなものに……。


「この施設で、お姉さんのお話は有名なのですか?」

「まぁね。私が広めたんだ。みんな辛そうだったから……」

少し悲しそうな目でナディアは言う。


「もう、すっかりムードメーカーなんですね」

「うん!」

ナディアの元気な姿を見て安心した甘猫は、そのままその場を立ち去ろうとした。


でも、ナディアはそれを止める。

「甘猫さん?は、何処に行っちゃうの?」

心配そうに、ナディアはこちらを見つめて来た。


「少し、外に出ようかと」

「嘘だね!こんな危ない時に外に出るなんて……。どうせ、竜と戦うつもりなんでしょ?」

的確なナディアの質問に、甘猫は諦めて頷いた。


「なら、私も行く!」

「でも……」

心配そうに言う甘猫に、ナディアは笑顔で言った。


「私のお姉ちゃんがやらかしたんだもん。家族として、私が最後まで責任を持たないと」


「そうですか……でも、危ないですよ?」

「それくらい分かってるもん」

と、少女は頬を膨らませて不機嫌気味に言う。


「そうですか、でも足手纏いだけにはならないでくださいね」

「大丈夫だよっ」

そう言って、少女は元気そうに立ち上がった。


でも、少女は次の瞬間ーー床にドスンと大きな音を立てて、そのまま倒れた。

「言わんこっちゃ無い……」

心配そうに冷酷に言う甘猫に少女は笑って言った。


「やっぱ無理だったみたい」

甘猫が手を差し伸べると、少女はその手を取って一旦体制を立て直す。

そして、甘猫はしゃがんでから言う。


「分かりましたか?ここで、妹として、ここにいる子達。ちゃーんと守るんですよ?」

それを聞いたナディアは笑顔で頷いた。


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