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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第三章 デゼルダ孤児院 前編

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【第三章 - 17】お久しぶりね、涙ちゃん

そうして、無事転送されたれいり達一向。

安心してれいりが安堵のため息を吐いた時、事は起きた。


少女がふらつきながら甘猫から少しずつ離れーーそして、淡々と何かを言い始めたのだ。

何かに気がついた甘猫も少女に続いて言う。

「聖なる星精霊よ我魔力と対等にーー平等に…………え?召喚を命ずる!?」


甘猫がそう言った瞬間、上空に大きな魔法陣が浮かび上がり、そこから一頭のドラゴンが現れたーーと思ったのも束の間、空に数々の星が浮かぶ。

それから、何を思ったのかドラゴンはこっちを睨みつけて、何処かへ行ってしまった。


でも、ドラゴンの上空に吹き荒れた風のせいで普通に街の建物は崩落。これは、面倒臭い事になった。

負傷者が居なさそうなのは不幸中の幸いだが、アステール。貴方は、街への損害賠償と処刑が下される可能性が高い。


なのに、当の本人といえば気絶して床に倒れ込んでいた。そして、エリーナは緊迫した声で言う。

「向こうは、デゼルダ孤児院の方向。ーーうぅ、いままで修羅場には何度も出くわしてきたが、ここまで胃がキリキリするのは初めてだ」


「今すぐ、デゼルダ孤児院へ行きましょう」

張り詰めた声で甘猫が言う。でも、注目されすぎたのだろうか、次の瞬間。誰かに足を引っ掛けられ、れいりはどすんと大きな音を立てて床に倒れこんだ。


上を見上げるとそこに居たのは、思った通り、セイシスト教会の誰か。

でも、思いの外それを見た周りの人たちは、れいりを転ばせたそのセイシスト教会の誰かを避難し始めたのだ。


「『虹色の剣士』様になんてことしやがるんだ!」

「本当、これだからセイシスト教会は……」

と、大声で怒鳴る人から、ため息を吐く人までーー。


勿論。焦ったセイシスト教会の誰かは言い訳をし始めた。

「違います!『虹色の剣士』様に偶々足を引っ掛けてしまっただけでーー」

それを聞いた民衆はブーイングを始める。


「何が、偶々だ!神聖なれいり様やエリーナ様に近づくことなど、元々あってはならぬことなのだぞ!」

「そうだそうだ!セイシスト教会のくせにエリーナ様を守らないなんて、一体どうなってるんだ」


困った彼は、ブーイングの波に飲み込まれれいりが見失うほど、どこか遠くの方へ行ってしまった様で……気がついた時、そこに居たのはれいり達と、一人のおばあさんだけだった。


「本当やんなっちゃうわねーー」

ブーイングの波を見て、おばあさんはそう感想を述べる。それから、れいり達の方を見て言った。

「安心して頂戴、そこの猫ちゃん。あなたはもうこの街ではすっかり有名人よ。ごめんなさいね、守ってあげられなくって」

申し訳なさそうに言うおばあさんを見て、逆に申し訳なさそうな顔を浮かべた甘猫。


「いえいえ、全然どんてことないです」

「もう大丈夫、セイシスト教会の悪い奴らはおばあちゃんがやっつけてあげるから」

なんか、腰の曲がったおばあさんに言われてもあまり説得力はないがーーやる気だけはあるみたいなので問題ないだろう。


「そういえば、デゼルダの人たちはセイシスト教会を忌み嫌っていたな」

ぼそっと呟いたエリーナにおばあさんはエリーナに親しみと敬意を見せるように、微笑んだ。


「えぇ、エリーナ様。私たちデゼルダはエリーナ様達、ミラグロス帝国を尊敬していますから。それにしても、あんな、カルト宗教一体何が良いんだか……」

ため息混じりにおばあさんは言った。


「それでは、エリーナ様、そして賢者様と猫ちゃんさん。今のうちにデゼルダ孤児院へーーこの子はしばらくの間、私が責任をもって預かりますので……」

そして、おばあさんはアステールをぎこちなく引っ張った。


「いいのか?」

エリーナに、おばあさんは笑顔で頷いた。


ーーそして、れいり達がその場を去った後、おばあさんは気絶しかけたアステールを見て、涙混じりにこう言った。

「お久しぶりね、涙ちゃん……また、寝不足かしら」


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