【第二章 - 24】魔女でないと認められた魔女
三大賢者同士の戦いは「世界が滅びるから止めて」と、帝国側から言われているが、まぁ親子として戦うのは多分問題ないだろう。
ーー多分……。
れいりが頷くと、お母さんはれいりに微笑みかけていう。
「こんなの久しぶりだわね。お母さん楽しみだわ?」
久しぶりというか、ただお母さんが強すぎてれいりは逃げていただけだったようなーー。
〈ギルド証〉
心虹 シュタン
役職:三大賢者 総管理人
属性:魔女
魔力:502M
武器:杖 呪具 魔道具
「魔女」という属性も前代未聞の属性である。
だって普通に考えたら「魔女」っていうのはとても邪悪な存在を指す言葉ではないか。
「魔女狩り」というのはお母さんの出身地で行われている伝統儀式であり、毎年何回も行われていた。
魔女は邪悪な存在であり【悪魔と契約を結び、得た力で災いをなす存在】と言われているから。
だから、魔女裁判というものを続けていたのにある日、その村に「魔女」という属性の女の子が生まれた。いつ死んでもおかしくない状況である。
勿論、成人してからお母さんは魔女裁判にかけられた。
でも、幸いなことにお母さんは致命傷にならずに、無事魔女ではないと認められたのだ。
しかし、お母さんは「魔女」ではないと認めたが、当然魔女が使うとされている力を使うことが出来る。
ーーその時。れいりの髪を大きくなびかせるほどの風が吹いた。
お母さんは前に現れた魔法陣に血を垂らす。
ーその瞬間。辺り一面に赤い光が広がる。
目の前に現れたのは、猫の様な形をした悪魔である。
その見た目は、どこか上位精霊に似ている。精霊も悪魔も自分の姿を好きに変えられるので、別におかしなことはないだろう。
娯楽小説でよく出てくる「我の名において命ずる」みたいなかっこいいセリフが聞けないのが残念だが、お母さんによれば「そんなの召喚に集中できなくなるから出来ないわよ」とあっさり言われてしまった。
お母さんは、属性を持たない、だから魔法の代わりに悪魔を召喚したのだ。
悪魔は、あくまでも力を貸す存在。なので、実際に戦うのはお母さんである。
(悪魔だけに……)
こんな場を凍らせるようなつまらないギャグはさておき、れいりは魔法陣を使い試しに「氷鋭」を撃ってみた。
魔法陣からつららのような鋭い氷はお母さんを目掛けてとんでいく。
それを見て、お母さんは目の前に初級結界を張ったが「氷鋭」はその結界に「ヒビ」を入れ、そのまま地面に落ちた。
お母さんはその氷を見て一瞬唖然とした後、れいりの方を見上げて涙ぐむ。
「れいりちゃんがお母さんに勝てそうな日がくるなんて、もう嬉しい様な悲しい様な…」
なんという親バカだろうか、初級結界ごときで絶対勝てるわけがない。
でも、前よりも絶対に魔法の精度が上がっていることは目に沁みて分かる。今までは、魔石がないと初級結界に届く前に落ちてしまったりしていたのだから。
やはり「魔力が高い人ほど強い」というのは間違いないらしい。
ーーそれから、お母さんとの戦いは言わずともれいりの惨敗。
夜ご飯を食べて、お風呂に入ってから部屋へと戻ったれりは椅子へと座りさっき書き出した情報を読み直す。
甘猫が消えたということはプロソポンの近くにいる可能性が高い。
ということは、ルミナスタウンかその周辺の都市ではなかろうかと思い、れいりはいくつかの場所をまとめてみていた。
「サンクティア」セイシスト教会の街であり発祥の地とも言われている。ルミナスタウンから左に箒で1時間。馬車だと24日くらい。
そんなに荷物が多くなければ、収納魔法に使う消費魔力量も少なくなるのでルミナスタウンから箒で行けるだろう。
「セイシスト教会本部孤児院」距離的にはサンクティアよりも圧倒的に近く、ルミナスタウンから、ルミナスタウン領とセイシスト教会領の境界の左上に位置する。
箒で6時間馬車だと一週間、丁度良さそうな場所だ。
そして、最後に廃墟の研究所。
ルミナスタウンから少し離れた森の中にある廃墟の研究所を見つけた。
ここは、そこまで離れていないし「世界は思っているよりも狭い」のヒントなのではないかと思ったのだ。
それから、れいりは最近の日課の祈りを捧げてからベットへと横になった。




