【第二章 - 23】魔力のサバ読み
それからしばらくしてーー。
れいりはその言葉を紙に書き留め、詳しい情報を探すために本を取り出す。
結局、お茶会を終えたルミナは「では」とだけ言い残し、この家を去って行ったのだ。
すると、れいりの隠し部屋からエリーナの声が聞こえてきた。
「『世界は思っているよりも狭くて、想像しているよりかは遥かに広い』名言だな」
どうやら、エリーナはこの場所をとても気に入ったらしく、さっきからそこを離れてくれないのだ。
「これから、貴様とその名言について語りたいのだが、残念ながら我はそろそろ帰らなければならない」
それから、エリーナは隠し部屋から出て、れいりの部屋の扉を開けた後、サイドテーブルに箱と手紙を置いて帰って行った。
何とは言っていなかった。きっと、れいりの集中している様子をみて気を遣ってくれたのだろう。
それから、作業がひと段落したれいりはサイドテーブルに置いてあった手紙を開いた。
『今回の報酬だ。
プロソポンを殺すことは出来なかったため、報奨金含め硬貨を渡すことは叶わなかったが、協力報酬として、宮殿に残っていた魔道具を授ける。
残り物だからって、あまりおも軽んじるのではないぞ?』
その手紙を、机の上に戻し、れいりは横に置いてあった箱をあけた。その中に入っていたのは『魔煌の宝珠』と呼ばれる魔道具。
キーホルダーの様な形をしており、中心に穴の空いた丸い円盤の中に宝珠がぶら下がっており、その宝珠は惚れ惚れしいどに透き通り、輝いていた。
宝珠とは欲しいものが思うがままに出せると言われている。この魔道具の効果は、自分の魔力を最大100まで増やすことが出来る。
なんと素晴らしい魔道具を頂いたのだろうか。
この魔道具はかなりの高級品なので、中々買い手もつかず、売れ残ってしまったのだろう。
保存しておくーー。
という手があったらいいのだが、魔道具には使用期限というものがあり、期間を過ぎると効果を発揮出来なくなってしまうものが一部存在しているのだ。
これは、れいりにとってかなりの好都合。
何故なられいりは「魔力を誤魔化している」つまり、サバを読んでいるから。
そもそも、三大賢者になるために必要な魔力量は450M以上。これは、帝国上位0.1%の魔力量だ。
そもそも、れいりの誤魔化した魔力量でさえ、ギリギリだというのに、誤魔化す前の魔力なんて話にならない。
『資料』
三大賢者必要魔力量:450M
上級魔術師平均魔力量:362M
一般魔術師平均魔力量:231M
一般人平均魔力量:160M
れいりの魔力量「132M」
魔力とは、魔力を体内にどれだけ所持出来るかというステータスであるが、それは同時にその人自身の強さも意味している。
何故だか分からないが、魔力のステータスが低い人と高い人を同じ条件下で運動能力テストを行った際に、魔力のステータスが高い人が100/100で勝ったのだという。
じゃあ「132M」という極小の魔力で、どう戦えば良いのか……。
それは極端な話「れいりが何故チョーカーをしているのか」それは魔石を常に持ち続ける必要があるからである。
魔石は、ちょっと特殊な鉱石で、外部の魔力を体内へ取り込む為のフィールターとして機能する万能物。
一般的には、魔力を保存する用途で使われるが、こういう使い方もあるのだ。
このチョーカーはれいりが小さい頃から着けている。そもそも、こう極端に魔力が少ないのは、虹属性という属性上の特性だということが原因なのだ。
いわば、高性能なフィルターにお金をかけすぎて、魔力を貯めるための袋を買い忘れたようなものだ。絶大なメリットの裏には、大概相当の代償が付きまとう。
ーーれいりは大きく息を吸い、宝珠の部分に手を触れる。すると、その水宝珠の周りに白い霧の様なものが立ち込め始めた。
宝珠はそれらを一瞬で取り込み、宝珠は白く濁った色に変わる。
そしてその宝珠から「ピキッ」という音がして、中に入っていた霧のようなものが一気にれいりの体全体を覆い尽くす。
でも、それは怖いという感覚よりかは、居心地良く感じた。
段々と、その霧の様なものは段々と薄れてきて、れいりも視界がはっきりしてくる。
それかられいりは、机の横に置いてある簡易ステータス計測器をてに取り、そこに少し魔力を込めた。
〈ステータス〉
属性:虹
魔力:456M
武器種:剣「刀」
それを、見てれいりは思う「魔力の誤魔化しを止めないと意味ないじゃん」と。
それから、れいりは袖にしまっていたブレスレットを外し机の上に置いた後、もう一度ステータスを測り直した。
〈ステータス〉
属性:虹
魔力:232M
武器種:剣「刀」魔法陣
「…っ、よし!」
言わずもがな、魔力はきっちり100上がっている。
しかし、そこよりももっと嬉しいのは武器種に「魔法陣」が追加されていることである。
一応、魔法陣は武器種扱いに含まれていることは驚きであるが、魔法陣を得意とするれいりにとっては天にも昇る気持ちである。
れいりは、あまりの喜びに『死灯蜜』を口の中へと放り込む。
舌の上で広がる甘味は、いつもよりずっと、深く美味しく感じられた。
* * *
「あらあら、れいりちゃん。どうしたの?」
れいりは腕試しでもしようと、家をでると、そこには庭の手入れをしているお母さんの姿があった。
「ちょっと腕試しでもしようと思って」
れいり一家の所有している土地はかなり広い。その割にはかなり庭は小さいのだが、そこに広がる景色は間違いなく絶景である。
どこまでも広がる静寂な平原は、秘境のように美しく、いつもれいりを癒してくれる。
ルミナスタウンという大都市からそこまで離れていないのにも関わらず、この絶景はかなり贅沢なものだ。
「あら、じゃあ。私と戦う?」
お母さんはそう言って、腕を捲り上げ、ポケットに入っていた杖を「シュッ」と振って組み立てた。




