【第二章 - 20】信じがたい結末
ーーそして、そう。ここに残されたのはカーロだけだった。
「なんてことよ!甘猫が黒側だったなんてっ……」
心が完全に塗りつぶされた感じで、別に空が曇っていたわけでもないのに……。なんだか、いつもより街が暗く見えた。
* * *
宮殿に戻ったカーロはお姉さまを探すべく作戦会議室の扉を勢いよく開けた。
「お姉さまっ!」
その緊迫した様子のカーロを見て、エリーナは少し驚く。
「カーロか、どうしたのだ?」
「それがっ」
カーロは今までにあったことをエリーナに伝えた。
プロソポンがエリーナの変装をして紛れていたこと、クローマに呪術がかけられたこと。
甘猫が消えて、黒だった可能性が高いことなどーー。
「お姉さまっ、甘猫様は向こう側だったんですよっ!」
「まぁまぁ、落ち着け。甘猫とは契約を結んでいるのだ。今すぐ追放することもできるが、彼女なりに事情があるのだろう……」
「なぜ分かるのです?そうやって、今までお姉さまは色んな人達に騙されてきたではありませんか」
その言葉には、何も言い返せない。
何か、胸の奥に刺さるような感覚がして、でも何故だか分からないけれど悔しいという感情が一番大きかった。
「しかし……。カーロ」
「しかし、じゃ無いですよ。きっと、甘猫に協力していたれいりもきっと黒なのです。れいりを逃げさせるために銭湯になんて連れて行ったんですよ」
「やめろ!そうやって、すぐ決めつけるから、だからカーロはすぐ信用を失うのではないか?」
間違いない。
だから、何も言えない。
カーロは黙り込んだ。
* * *
一方その頃、れいりは銭湯から出て背伸びをした。それから、れいりはセシリアの方へと向かう。
「ねぇ、甘猫ってまださっきの場所に居るかな…」
何気なく、れいりはセシリアにそう訊ねてみた。
馬の聴力は凄く先まで聞き取れるらしいので、街が静かな今なら分かるのではないかと思ったのだ。
でも、セシリアの反応はれいりの思っているものとはちょっと違って……。
セシリアは首を横に振ったのだ。
「え、そうなの?」
そう言うと、セシリアは首を縦に振った。
(何故、私は普通に馬と普通にケーションを取っているのだろうか……)
一瞬童心に帰るも、もう一度セシリアの方を見ると、前足をかいていたので、手に持っていた物を見る。
「そういえば、さっき市場でリンゴ買ったんだっけ…」
れいりは、セシリアにリンゴを渡し、もう一つのりんごをかじる。なかなかに甘くて美味しいりんごである。特にみずみずしくてシャリっとした所が特に。
れいりの好きな食べ物No1と言えば、死灯蜜だと思われがちであるが、本当はりんごの方が好きなのである。
では、何故あまりリンゴを食べないのか。それは、残念ながられいり自身にもにも良く分からない。
りんごを食べ終わったセシリアは、れいりに乗れと言っているような気がしたので、上に乗ると、セシリアは宮殿の方へと走り出す。
「え、甘猫宮殿にいるの?」
そう聞くと、セシリアは首を横に振った。
「じゃあ、どういうこと?」
宮殿に着くと、セシリアはれいりが中へ入るよう促す。
「え、入ればいいんだよね…」
セシリアが言った通りに、れいりは宮殿の中へと入り、辺りを見回してみる。
しかし、周りには特に誰も居なくて……。
するとーー。
後ろからいきなり声がしたのだ。
「貴様、こっちへこい」
後ろを振り返るとそこにはエリーナが居て、でもその声は何処か怒っているようにも聞こえた。
そして、結局着いたのは作戦会議室。
作戦会議室には、前と少しだけ違う所があった。
それは、机の上にとある魔道具が置かれていたからだ。
見た目は、占いに使われる水晶みたいで、用途は嘘を見破る為のもの。
対象者が真実を言うと青い光が放たれ、対象者が嘘をつくと、水晶から青い光が点滅するといった仕組みだ。
会議室の重い扉が閉まった瞬間、部屋の空気が一気に重くなる。
そして、エリーナは低い声でれいりに「そこに座れ」と言った。
れいりは言われたままに、椅子に腰を下ろすとエリーナは一番奥の席に座り肘を付き目線をやや下の方へとやる。
「カーロから話は聞いた…。…どういうことなのか説明しろ。甘猫は何処にいる」
その言葉に、れいりは特に何の返事もしなかった。
「何か言ったらどうだ」
エリーナは怒ったままだ。
「存じ上げません……」
震えた様な困った様な声でれいりがそう言うと、水晶はもちろん青い光を放った。勿論、点滅などしない。
水晶をみたエリーナは、何処か安心したような表情を浮かべる。
「れいり殿、無礼なことをしてしまい申し訳なかった」
「いえ、別に……」
「そうか、じゃあ貴様は何も知らないんだな。甘猫がプロソポンを逃した件について。しかし、何故お前はここにいるのだ?」
「セシリアが、あそこに甘猫は居ないからって、それで付いて言ったら宮殿に着いたんだよね」
「何で、貴様は普通に馬と会話しているのだ?」
「こっちが聞きたい未解決問題ですよ」
そう言うと、また水晶は青い光を放った。それを見て、エリーナはため息を吐く。
それから、エリーナは水晶の魔力供給を止めれいりの方を見た。
「それで、甘猫は何処にいるんですか?」
「我も、知らぬ。そもそも、何故逃げたのかもな…。カーロに事情を聞いて見ても良いが…あまり事情は変わらないと思うぞ。ほら、貴様例えば甘猫の知り合いとかしらないのか?
」
甘猫の知り合いといえば、あまり数は限られてくるが……。
そもそも、そんな人いたのか?と、最近の話を思い出しているとすごく距離の近い人物を思い出した。
「お姉さん!」
「えっと……お姉さん?甘猫には生き別れの姉がいるのか?」
「いや、ちょっと違うんだけど……。こないだ甘猫にお姉さんの話を聞いたんだけど、肝心の誰なのか聞くの忘れちゃって……。でも、家にセイシスト教会の関係者なら…。今は、魔力中毒症状で寝てるんだけど」
「そうなのか。じゃあ、それを治せば良いんだな?」
「まぁ、うん。でも、それにはプロソポンを殺さないといけなくて…。呪いだし」
「安心しろ、任務に必要なことは何でもやってやるって言っただろ?その人の治療のお金と人材はこっちで手配する」
「良いの?」
「もちろんだ」




