【第二章 - 19】意味の分からない名物
「さて、エリーナ様。そろそろ戦いませんか?」
れいりが見えなくなったのを確認して、それから甘猫はそう言った。
すると、一瞬だけ目を見開いて、笑いながらその人は言う。
「あれ?バレちゃったの?」
そこからは、先ほどのエリーナの声とは打って変わって、聞き覚えのある声がした。
「お、お姉さま?」
「この人が、正真正銘のプロソポンですよ」
「何故分かるのですか?」
それは、先ほどれいりとクローマに耳をふさぐように言った時の事。あれは、特に意味のない行為であった。
何故なら、あれはプロソポンを騙すために言ったのだから。あの声は、プロソポンの声ではなく、声に音が似ているただの鐘。
最近追加された正直意味のわからないルミナスタウンの名物の一つである。
その鐘は、灯光の夜の昼の十二時に今年からなることに……つまり、リサーチ力の低いクローマとれいりは勿論だまされる。
そして、その会話を聞いていたプロソポンは、それをプロソポンが来たという合図だと認識した。
だって、エリーナは鐘のことを知っているのだから、鐘が鳴った所で、プロソポンが来たということが分かるはずがない。
カーロが来たのはちょっと、驚きだったが、エリーナから前にプロソポンを倒す話をして、その3人とその時間から何となく推測したのだろう。
「流石、甘猫。良くも僕のことを騙したね」
それから、プロソポンは甘猫の肩を掴み、目をじっと見つめる。
「甘猫様!またっ」
「安心してください。大丈夫ですよ。この人は、私が観客であることを理解しています。私は先ほど言いました。観客には手を出さないって」
「まぁ、僕はここで戦うつもりはないけれど…。君は、戦いたいんでしょ?」
「いや、これは私の意志というよりかはれいり様の命令ですので…。カーロ様の方がどちらかといえば戦いたそうにしていますよ?」
確かに、甘猫がプロソポンのことを嫌っているのは確かである。しかし、それは表面的な、立場上の話であって、別に中身が嫌いなわけではない。
なんなら、甘猫はプロソポンの性格を気に入ってるので、出来る事なら迷惑をかけないで生きていて欲しいと思っているくらいである。
「じゃあ、カーロ君。戦う?」
「望むところよ!ね、甘猫?」
「え、私も戦わなければいけないのですか……。この人、かなり面倒くさいですよ?」
渋々、武器を取り出した甘猫は杖の魔石を回す。
すると、周りに容易的な結界が展開される。そして甘猫は深く息を吸う。
ーー甘猫が深く息を吸ったと同時に、カーロの瞳に刻まれた紋様が光を放つ。
それはプロソポンに直撃して…でもこれといって見た目の変化は特に無かった。たぶん直撃する直前にその光を分散させたのだろう。
それを、反射神経が認識できなかっただけだ。
すると、プロソポンが甘猫の方に突っ込む。
それを避けようと後ろに下がろうとしたが、それでも届きそうな距離に居たので、甘猫は魔法陣の盾を造る。
しかし、体格差的に、甘猫が圧倒的に推し負けている。
「ほんと…厄介ですねっ。カーロ様と戦ってください。そもそも、貴方に武術を教えられた身としては型が一緒なのはつまらないんです」
「そういえば、そうでしたね」
プロソポンはあっさりと諦めて、カーロの方を向いた。
そしてーー。
次の瞬間、プロソポンはカーロの目の前にいくつかの氷柱を出現させ、それはカーロの方へと突き刺そうとした。
でも、カーロの目から出た光で氷柱は全て消滅する。
そして、甘猫は真後ろからプロソポンを突き刺した。
「えっ」
プロソポンがそう言ったと同時に、甘猫は武器を引き抜く。
武器を回して後ろに持っていくと、案の定後ろにはプロソポンの姿が……。後ろから殴ってこようとするプロソポンを甘猫はあっさり避けた。
「急所を外してくれるだなんて、随分優しいのですね」
「今の貴方は相手にもなりませんよ。ちょっと腕を鍛え直してきてください…」
不機嫌気味にそういう甘猫を見て、プロソポンは笑った。
「そもそも、君に閉じ込められているのです。ここから、どう出ろと?」
そして甘猫は、言葉を溢す。
「カーロ様、ごめんなさい。私この人殺したくないんですよ」
そして、甘猫は杖の魔石を反対側に回した。
すると、そこから放たれた円状の光は、甘猫の作った結界を消し去るどころか、れいりの作った結界すらも消し去った。
そして、次に目を開けた時にはクローマも甘猫も居なくなっていた。




