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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第二章 ミラグロス帝国

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【第二章 - 17】皇女の愛馬

 それから30分後ーー。

「れいり様、こちらの準備は完了しました。後は、クローマ様を待つのみですね」

 声のした方を見上げると、甘猫は武器の上に乗っていて、そこかられいりの事を見下ろしていた。


「そういえば、どんな魔法を…」

「秘密です」


 ウィンクをして口元に手を添えて甘猫はそう言った。

 ちょうどその時ーー。

 甘猫の足にある紋様が光る。


 それを見た甘猫は、そこにそっと手を触れた。

 プロソポンとはなんと恐ろしい人なのだろうか……。と、れいりは考え込む。


 その時だった。連絡魔法越しクローマらしき声が驚いた様子でこう言った。

「え?本気で?冗談じゃないですよね」

「もちろん。私が冗談を言うと正気で思っているのですか?」


「いや、言うと思ってる」

「はぁ。まぁ、でもこれは冗談ではないので、貴方の首が吹き飛んでも良いなら信じなくても良いですけど……」


「ご、ごめんなさい!何か、他にするべきことは?」

「そうですね」

 甘猫は少しだけ考えた後、意外な答えをした。


「耳をふさいどいてください。何があっても」

「あぁ、分かった。でも、それだけで良いのか?」

「はい。あぁ、れいり様もやった方が良いと思いますよ?単純なので」


 良く分からなかったが、れいりも、両耳に手を当ててみる。

 次の瞬間ーー。

 どこからか、声が聞こえた。


 しかし、耳をふさいでいるせいで上手く聞こえない。

 意味のわからない内容の話は続いていき、どういうことなのか気になるあまり、手を下そうとすると、甘猫がれいりの方へ飛び降りて、耳を塞ぎ直した。


 それから、5秒余りもしない内に、甘猫は手を離す。

「ねぇ、甘猫。何があったの?」

「いえ、何でも…。そんなことより、もうプロソポンが来たようですよ。ゆっくりしている時間はありませんよ」


 箒から綺麗に屋根へと着地した甘猫はそこから宮殿の入口へと飛び降りる。それにつられて、れいりも甘猫の居る場所へと飛び降りる。

 それにしても、周りのどこを見渡しても人が居ない。


「貴様ら、プロソポンが来た様だな」

 そう言いながら出てきたのはエリーナ。その両端には、白馬が居た。


「馬だ!」

 れいりは好奇心に駆られ馬の首をかるく撫でる。

「貴様、馬が好きなのか?意外だな。右の子は、グラシア、左の奴はセシリアだ」


「芦毛に白毛。しかも、側対歩。宮殿の馬だね」

「あぁ、我の愛馬だ」

 エリーナがそう言うと、グラシアが自慢げに一回転した。


「か、可愛い…」

 すると、後ろから別の声がする。

「あらこの子、面白いわね。興味深いわね?」


 馬の首を撫でながら、入口の方をみると、白い髪をなびかせる少女が居た。

「どうしたのだ、カーロ。今は忙しいのだ、戯言なら後にしてくれ」

 冗談混じりにエリーナはそう言う。


「は?何が戯言よ、タロットカードのアルカナについて説明してあげただけなのに…。って、そんなことは何でも良いのよ!」

「じゃあ、何の用だ」


「私のスカートをめくった挙句、私の目をつぶそうとしてきたあいつを、一発やってやろうと思ったのよ」

「妹も随分気が強くなったものだな。まぁ、せいぜい足手纏いにはならないようにな」


「よくも!私だって、本気をだせばお姉様にだって勝てますもの」

「本当か?じゃあ、今度一緒に闘うか?」

 エリーナがそう言うと、カーロは少し曇った顔をする。


「それは!…結構です…」

 それを見て、エリーナはクスッと笑い、それからグラシアの上に乗り、それに続いてカーロも乗った。


「れいり殿、馬には詳しいのだろう?騎乗はそっちに任せる。我に付いてこい!」

「え、私馬乗ったことない…」

 渋々、れいりはセシリアの上に乗り、その上に甘猫も乗った。


 それからセシリアは、ブルブルっと首を伸ばしタテガミをなびかせ、れいりの方へ少し首を曲げた。


 それは、なんだか「安心しろ」って言ってるみたいで…。

 それから、れいりは何もしていないが、セシリアは勝手にエリーナの方へ付いて行った。


 * * *


 ーーしばらくすると、街の入口へと着く。

「あぁ!やっと来てくれましたね…」


 待っていたクローマが駆け寄ってくる。

「待て」

 エリーナはクローマを止め、クローマの手に触れる。


 それはなんでかって、この間甘猫と話した「クローマを生贄に使用作戦」これを実行するためには、本物のクローマと偽装したプロソポンを見分ける必要がある。


 魔力の波形が見えるれいりにとって、見分けることなどとても容易いことである。

 しかしながら、れいりしか見えないとなると別行動は難しくなるし、れいりが潰れた時、どうするのか問題が生まれる。


 それに、プロソポンは魔力の波形を操れるなんて噂も……。

 そこで、クローマに少しだけ細工をさせてもらった。


「安心しろ、こいつには魔力の刻印が刻まれてる」

 これは、魔力を直接込めたり、目に込めたりすることで見えるちょっと特殊な刻印。

 この技術はれいりしか持っていないはずなので、プロソポンが真似でききることは出来ないはずだ」


「で、あいつは何処にいるのよ。私のセレディアの目にかかれば一発よ」

「カーロ、あまりにもプロソポンを見くびりすぎだ。多分、あいつは我よりも強いだろう」

「え、お姉さまでも勝てないのですの?」


「あぁ。そもそも、そういう発言は三大賢者に勝ってから言え」

 すると、カーロはれいりの方へやってきて、お辞儀をする。

「お手合わせ、願えませんでしょうか」


「ま、また今度ね!ほら、今はプロソポンと戦うために体力を温存しないと…」

「確かに、そうですね。合理的な判断です」


 カーロはそう言って、エリーナの方へと戻った。

 合理的も何も、れいりはカーロに負けそうだったから断っただけだというのに。


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