【第二章 - 16】色彩に包まれた街
魔法というのはそう単純なものでは無い。詠唱をしなくたって、魔法陣を使わなくたって魔法を使うことは出来るのである。
今まで、何人かの人が魔法の詠唱をしないで、瞬時に魔法を使っていたことに気がついただろうか。
結局魔法はイメージ、センスが大事。
詠唱というのは、そのイメージの中に幾つかの記号を当てはめたようなもの。
近年は、詠唱をしないと魔法が使えないという意味の分からないイメージが定着してしまったが、元々はイメージが掴めない人の為に、言葉で魔法の形を作れるようにしただけなのだ。
でも、結局は詠唱の方が魔法の精度が高いので、練習を積まなければイメージだけで魔力を動かすというのはとても難しいこと。
だから、あくまでもこれは最終手段、そして今その手段を使うべき時が訪れたのだ。
「でも、カッコいいしな……。私も練習してみようかな」
「貴様、どうしたのだ?」
「い、いや。イメージだけで魔法が使えるのってカッコ良くない?」
「まぁな。我も昔はそれに憧れて練習をしたものだ」
それから、エリーナは指をクルクルと回してコップに入っていた水を鳥の形にする。
「どうだ?かっこいいだろ」
「エリーナって、何属性なの?三色混じってると流石に分からないんだけど……」
「貴様、魔力が見えるのか……水♢、3光♢、火☆だ」
女皇がその存在に気がついている事には正直驚いたが、れいりはあえてその点には触れないでそのまま話を進める。
「☆ってかなり珍しいね」
♢は1−3、そして頂点が☆。
これは、属性の階級を示していて、特殊属性以外に必ず存在しており、それぞれに特典がある。
伝説級の属性は大体☆だからだ。
♢1:上級魔法解禁
♢2: 進化属性(例:水→氷)
※ただし元属性が消える
♢3:両方使える
☆:これは、あれ?何かがおかしい
「え、火が☆ってどういうこと?」
「あぁ、これは皇族だからだ。昔から皇族の子供は水、火、風この基本属性の☆を持って生まれることが稀にあるのだ」
とにかく、☆について説明したかったのは、基本属性以外でしか☆が付くことはないと言いたかったのだが……。
帝国の統計的に言うと、大体人口の80%が大体基本属性と呼ばれる水、火、風を持って生まれ、人口の15%が光、音、星であり、これらは特殊属性と言われている。
そして、人口の4%が無属性と呼ばれている属性、これはまた別の機会に説明しよう。
この、無属性には☆を持った者が居たというデータがない、しかし、♢3の人は過去に居たらしく、とんでもなく強かったらしいが、事実だったのかどうかすら曖昧らしい。
そして、残りの1%がれいりのような伝説級属性だ、まぁこれはなんというか…、実際0.01%くらいしかいない気がする。
それで、☆っていうのは大体チート級の能力付きで、光だったら光属性魔法の中から魔力消費無しでtop5魔法を使えたり(高速ワープ・光移動)風属性だと、ヒーラーが出来る様になったり。
「火の☆は、そうだな。火を使う物全般が得意になるんだ。武器の鍛造とかだったら聖剣の切れ味くらいの物を造れるし、料理とかもシェフが作ったくらいにはなるし……。しかし、それでは宮殿に勤めている人たちのプライドが崩壊するだろ?これは、宮殿の者達には秘密だ」
「じゃあ、私に武器、造ってくれたりしない?その、聖剣の切れ味的なやつを……」
「何を言っているのだ?貴様、自分の反応速度の悪さに気がついていないだろう…。悪口とかでも何でも無く、危ない。誤って自分を傷つけてしまう可能性もあるのだからな。お前は、魔法だけ使った方が良いと思う」
確かに、エリーナの言っている事に何一つ間違えはない。なんか、何も言い返せないのが逆にくやしくも感じてくる。
「そんな、貴様へ命令だ」
エリーナは、れいりの方を指差して言った。
「今回の戦闘、いやこれからの任務もだ。魔法陣は最低限しか使うな。後は、全てイメージだけで魔法を使え。分かったな?」
「え…。正気?」
「あぁ、正気だ。お前、そもそも魔法陣など使っているから、お前の強さが発揮出来ないのだ。それに、これは我の口から言っているが、元は父からの命令。貴様に最初から拒否権などない」
エリーナの父、つまり皇帝アトラス。
皇帝に逆らえる者が居たとしたら、せいぜい神様くらいだろうか。
(まぁ、神様とか信じてないけど……)
れいりは心の中でそう呟いた。
「わ、わわわ分かった。分かったよ。嫌だけど、本当は本当に嫌だけど…。本当に…」
「まぁ、せいぜい頑張るのだな」
心にもやもやも残りつつ、勢いに任せてれいりは扉を勢い良く開け、廊下の窓を開けてから勢い良く箒を投げる。
それに飛び乗って、宮殿の屋根にゆっくりと降り立ち、それから、屋根の上に横たわった。
深く深呼吸をしてから、目にほんの少しの魔力を込めるー。
次に、見えた世界は虹色とかそういうものではなく、ただの丸い白い光が浮かんでいるだけ。
多すぎて逆に気持ち悪く見えてきて、娯楽小説に出てくる虹色の光というものが見たくなってくる。
そう、この正体こそ魔力と呼ばれるものである。
それから、指をヒョイっとやってホイッと振れば、ルミナスタウンの外に虹色に輝くドーム型の幕のようなものが張られる。
それから、少し経つとその幕は上の方から消えていく様に、いつもの空に戻っていった。
そう、これがイメージで魔法を使うということ。
まぁ、簡単に言えば魔力があって、その魔力に指揮をするみたいな。
その指揮の楽譜を言葉で表したのが詠唱みたいな、そんなイメージだと思えば良い。




