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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第二章 ミラグロス帝国

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【第二章 - 15】作戦会議

この頼もしい背中を見て、何故エリーナが次期女帝候補なのかが分かった気がする。

「どうしたのだ?早く来い」

「いや、別に……」


エリーナにしばらく付いていき、廊下へと繋がる扉の前である魔道具を渡された。

逆探知、探知除外、透明化、消音の術式が彫られている。

それも、かなり計算され洗練された物。


この魔道具一つだけでも金貨13枚は飛んでいきそうだ。

恐ろしい……。

落とさないよう慎重に、ブレスレットを腕にはめ込む。


それを確認したエリーナはドアを勢いよく開けた。

そこは、まだ廊下ではなく衛兵がいる作戦部屋みたいな?休憩部屋みたいな。

でも、密室というわけでもなく、色んな場所に向かえる様な沢山の扉が付いているいわゆる、隠し部屋みたいな所なのだろうか。


「皆の者!プロそポンが脱獄した。周囲を良く警戒し、派遣部隊を出動させろ」

そこにいた衛兵達はエリーナに向かって膝を付き勢い良く駆け出す。


「これで大丈夫だな…。童、衛兵が戻ってくる前に、急ぐぞ」

エリーナはブレスレットを手首にはめてから早歩きで、衛兵が出て行った扉とは反対側の扉から出ていった。


「あっ、ちょ」

「貴様、三大賢者なのに我に負けているとは…。正気か?」

「正気だよ!」


その返事に、エリーナはクスッと笑う。

しかし、れいりはそれには気づかず身体能力強化魔法を発動した。

そもそも、エリーナはあんなハイヒールで……。なんて身体能力なのだろうか。


ーーそこから、何とかして付いたのは作戦会議室と呼ばれるところだろうか。

壁には、帝国の地図が貼られていて、机の上にもチェスや帝国の模型が置かれている。


そして、ふと顔を上げると、甘猫も居た。

「甘猫!」


そう、隠しきれない笑みを見せながら、れいりは甘猫に抱きついた。

「れいり様!孤児院の職員100人殺したって本当ですか?」

「いやいや、そんなわけないじゃん。それに……いや、やっぱ今のは無しで……」


「安心しろ、そこの童は嘘を吐いていない。何故なら、あそこから作戦は始まっていたのだからな」

冒頭の会話をざっくり説明すると、あの中でエリーナだけは影武者を送っていたらしく、それは今回の作戦は皇帝からエリーナに任せると言われているからだそう。


甘猫がここに居るのは、勘の良さでエリーナが他の者に入れ替わっていることに気が付き、こっそり会場を抜け、一旦れいりを探しに行こうとした途中ーー偶然エリーナと鉢合わせしたからだそう。


「先ほどは、無茶苦茶な事を言ってしまい悪かった。貴様みたいな素直な奴を途中退場させるにはこの作戦が一番だったからな。どうせ、演技とか苦手なのだろう?」


「そそそ、そんなことないですよ。でも、人が演技しているか見分ける能力は無駄に高いと思います!まぁ、エリーナ様には勝てなさそうですけれど」

「本当だな?じゃあ、やってみろ」


そう言われて渡された紙には、私が途中退場するための作戦の一つとして考えられていたのだろうか。

それっぽい、台詞がいくつか書かれていた。

「あっあー、頭が燃える様に暑くて、しにそー」


エリーナはペンをくるんと一回転させる。

「大根だな」

それに続いて「同感です」と甘猫も続けた。


一瞬の沈黙が走った後、エリーナが口を開く。

「気を取り直して、貴様らに今回の作戦を教えよう」


エリーナは、椅子から立ち上がり魔力で空中に文字を描く。

「プロソポン。彼は、指名手配中の凶悪犯罪者だ。甘猫の事件がきっかけで、その行いが明らかになったからな。ところで、貴様。この間、我の元にプロソポンの暗殺許可書類を送って来ただろう?実は、その件も兼ねて貴様と手を組む事にしたのだ」


そうして、渡されたのは見覚えのある書類。

そう、れいりがこの間出した暗殺許可証、そこには新たにサインが書いてあった。

「これで問題なかろう。責任者はそこの童だ。何か問題はあるか?」


その言葉に、二人は首を横に振る。

「我からの最初の任務は、プロソポンの暗殺だ。もう、作戦は始まっている。用心せよ」

まず、れいりが遂行する任務、それはエリーナの言っていた通りプロソポンの暗殺。

別に、暗殺ではなく処刑という形でも良いらしい。


甘猫の話を聞いたエリーナは、そこからプロソポンの動きを予測し作戦を立てた。


「プロソポンは演者。つまり、如何なる存在になろうとおかしくはない。そこの童の話だとその、クローマという輩ががやってきたとの事で、プロソポンはクローマを演じてやってくるらしい」


それは、きっと混乱を招させるため普通はそう思うだろう。

「でも、あの人はそんな単純な人じゃないはずです。私の計算だと80パーセントの確率で何か違う事をやってきますね。ですから、新しい魔法でも開発しようと思って…」

そこから、甘猫の声が一気に沈み早口になった。


「クローマに今からルミナスタウンに来るようにと連絡を入れます。大体あの人、歩いてくるでしょうから大体50分くらいでしょう。それくらい私には十分な時間です」

「で、私は何をすれば良いの?」


「ルミナスタウン全体にプロソポンの脱出を防ぐ結界を貼ってくれ。そして、貴様の強み。それは、誰にも負けない勘だ。プロソポンの強みは勘、しかし我には貴様より勘が優れているようには見えない。もし戦闘になったら、その時はこちらが全力でサポートする」


「つまり、勘には勘で抗えと…」

「そういうことだ。貴様、偶には頭が働くではないか」

「それって、どういうこと?」


つまり、私はルミナスタウン全体に結界を貼らなければならない。

プロソポンだけ、ということはプロソポンの魔力の波形に合わせた物をオーダーメイドしろと言う事。


流石に、魔法陣を町全体に描くわけにもいかないので、今回は詠唱で我慢。

とはいえ、詠唱を使うのは久しぶりなのだ。


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