【第二章 - 10】簡単!3秒で出来るれいりを起こす方法とは
なんやかんやあって、それは約二週間後のこと。今日は待ちに待った『灯光の夜』がやってきた。
とはいえ、まだ朝である。
このイベントの醍醐味は夜なのだが、街が賑わっていないわけでもない。何故なら、出稼ぎに来る商人がとても多いから。
「れいり様、今日は本当に遅刻できませんよ。灯光の夜は三大賢者が関わるお祭りなのですから。ほら、お母様も言ってやってください」
「まぁまぁ、見てなさい」
そう言って、お母さんはにやけた顔をする。
その瞬間ーー。
れいりは、お母さんが何か行動に移す前に飛び起きた。
「やめて、本当にやめて。お願いだから、足の裏こちょこちょ攻撃だけはやめて!」
そして、甘猫は学習した。
(なるほど。れいり様の弱点は足の裏……。そうですね、これからこうやって起こしましょう!)
「甘猫、絶対今何か企んだよね……」
「そんなことありませんよ?」
平然とそう返す甘猫に、れいりはどこか納得してしまった。
それから、こないだ甘猫が街で選んでくれた正装に着替え、その上からローブを羽織る。今日は、イメチェン的な感じで、甘猫に髪を結んで貰った。
両サイドで、上半分だけ編み込みをして、後ろで束ねるという髪型。まぁ、いわゆる編み込みハーフアップという所である。
ロングの髪がなびいてなんだか、良い感じだ。
「れいり様、メイクはしなくても良いですか?」
普通、こういうイベントにはメイクをしていくという暗黙のマナー的なものがあるのだが……。
「いや、大丈夫。メイクって色々面倒くさいから」
「そうですか。では、荷物はもうまとめ終わっていますので、もう出発しましょうか」
恐る恐る、荷物の方を見るが、カバンから特にはみ出ているものはないし、なんだか逆に怖い。
「あぁ、カバンですか?この間、試験を受けにギルドへ行った際、アースドラゴンの爪と牙を買い取ってもらったのです。そのおかげで、収納魔法に余裕ができた上に、家に金貨50枚の大金が入ったのです」
「え、自分のおこずかいにすれば良いのに……」
「当たり前じゃないですか、そのうちの金貨三枚は私のおこずかいにしました。言っておきますけど、貴方たちが魔導書ばかり買うせいで、三大賢者が二人もいるというのに、お金に余裕がないのです。魔導書って、5冊で家一軒買えますからね?」
「でも、魔導書を買うために三大賢者という地位があるんでしょ?」
「ですが、聞いてください。この家にきて早一か月程、この家で一番の出費をしているのは誰だとおもいます?アイルー様ですよ。魔導書を一番買っているのは、三大賢者ではなく、お父さん な の で す よ」
「あら、そうだったの。じゃあ、お父さんのおこずかいを少し減らさなきゃいけないみたいだわ」
一緒に出るつもりで、来たのだろうか。
外から、こっそり話を聞いたお母さんがそう言った。
「これからは、甘猫ちゃんに家計簿を担当してもらおうかしら、その分。私からもお給料を上げるわ?」
「良いんですか!私、そういうの大好きです!」
「もちろんよ」
そして、何故かこの瞬間、このタイミングで甘猫は家の家計簿となるのだった。
「それでは、出発しましょう」
そう言ったと同時に転移術式を発動しようとした所で、お母さんが甘猫を止める。
「せっかくだから、箒で行きましょう?それに、転移術式はある程度広い所にしか転移出来ないし、三大賢者の仕事ならこっそりと箒で行ったほうが良いわよ」
「では、少し待っててくださいませ」
それから、甘猫は自分の武器と、水色に輝く綺麗な石を取り出し、杖部分の真ん中にその石をはめ込んだ。
「属性変換石を取り付けられる槍らしき杖。貴方の武器すごいわね」
「まぁ、これはトレジャー・エクレアス様の特注品ですから当たり前ですよ」
自慢げに甘猫は言った。
それを聞いたお母さんは目を見開く。
しかし、れいりにはその人が一体誰なのか聞いたこともない名前だった。
それから、甘猫は浮かばせた杖の上に乗っかり、空気抵抗を少なくするために周りに風の結界を張る。
それに続いて、れいりとお母さんも箒に乗った。
それからしばらくしてーー。
街の方を少し迂回し、見えてきたのは少し年季の入った宮殿。しかし、その外見はルミナスタウン1の存在感を放っていた。
そう、こここそ、帝国の最高の地位、そして支配者である皇帝、つまりエンペラーの住む場所である。
宮殿テラスに降りたれいりたちはある帝国の騎士に迎え入れられる。
「本日はお日柄も良く、皆様と笑顔で集まれましたことを幸せに感じております。今日ご案内させて頂く、ホプリティスと申します」
膝をついて最敬礼をした騎士に対して、甘猫も同じく最敬礼をする。
れいりも、お辞儀をするべきなのか悩んだが、お母さんが特に何もしていないのをみて、社交的にやってはいけないのかと、下手ながら少し微笑んでおいた。
「それでは、会場までご案内致しますね」
そう言うと、「こちらでございます」と手で進む方向を示してから歩き始めた。
それに、着いていくお母さんを見て、れいりは焦って付いていく。その後ろに甘猫という形だ。
それから、会場に着くまでは、思ったよりも時間がかからなかった。
会場は、すごく大きいホールで、普段は社交界にでも使われているのだろうか、床は大理石で出来ており、天井には大きいシャンデリア。
並ばれた机と椅子、そして大きなグランドピアノが置いてあった。
「よく来たな」
そう言ったのは、会場の一番奥に居た可愛いドレスを着た幼い女の子。
「可愛い」
「え、可愛い?我はもう24歳なのだが」
「れいりちゃん。紹介するわね、この子は皇帝の子供で、次期女帝候補のエリーナ、まぁ、つまり帝国の皇女様ってことよ」
「な、なんかごめんなさい!誠に申し訳ございません」
そう言って、れいりはぺこぺことお辞儀をする。
「まぁまぁ、お嬢ちゃん頭を上げるが良い。お主は確か、三大賢者のれいり殿であったな。我は、魔法が大好きなのだ。余興が始まるまでの間、我に少し付き合ってはくれぬか?無論、そこの童も大歓迎だぞ?」
それを聞いたれいりは、お母さんの方を見る。
「こっちは大丈夫よ、れいりちゃん?どうせ、リフレイトはギリギリに来るんだから、そうね。私はワインでも飲もうかしら」
「それは、絶対ダメ!」
お母さんがお酒を飲むと何が起こるのか、れいりには大体予想がついていた。すると、エリーナが笑い出す。
「その様子だと、構わないようだな。では、我の部屋に案内しよう」
エリーナがそう言うと、周りにいた護衛兵れいり達の前に着く。
「それでは、着いてきてください」




