【第二章 - 5】魔力測定
しばらくしてーー
「失礼します。はじめまして、私の名前は……」
入ってきた女性はそのまま固まる。それから目を見開いて口を開いた。
「って、れいり様とんでもないステータスしてますね」
それから、彼女はれいり達に近づき、甘猫に握手を求めた。
「あの、すみません。私はれいり様のメイドなのですけれども……」
「へ?」
なんだか、気まずい状況が流れた後、部屋から出て行こうとする職員をれいりは止める。
「気にしないでいいから、ね?」
「む、むっ無理です。穴があったら入りたい」
震えた声で職員は言った。
* * *
「どうですか……落ち着きました?」
れいりがあげたチョコクッキーを頬張る職員を見て、甘猫は尋ねる。
「はい、それにしてもこのクッキー美味しいですね。どこで買ったんですか?」
「これは、なんだっけ…」
「れいり様、もう忘れたのですか?朝、アイルー様がご飯中に『僕の可愛い娘ちゃんがお腹がすいて倒れちゃったら困るからね……』って貰ったものじゃないですか」
(確かに、そんなこともあったような……)
「れいり様のお父様は料理上手なのですね」
それから、彼女は最後のクッキーを口の中に放り込んで、笑顔で言った。
「ご馳走様でした」
それから、彼女は収納魔法で書類を取り出す。
「それでは、まず戦闘試験の説明の前に。私の名前はアイメス・ケフィーって言います、よろしくお願いしますね」
自己紹介と同時に職員は微笑みつつ、お辞儀をした。
「では、戦闘試験について、まずは私の得意技、『鋭目』でれいり様達のステータスを測らせて頂きます」
それを聞いたれいりは、一瞬世界が止まる。
『鋭目』はれいりの魔力誤魔化しが通用しない祐逸の技法である。つまりそれは三大賢者の籍から追い出される危機を意味していた。
「ちょっと、誰かつっこんでください。冗談ですよ……。確かに、鋭目は使えますが、流石に計測魔道具を使いますって…」
「あはは、れいり様ヤバイですね……。本当に、色んな意味で」
甘猫は引き攣った笑い方をする。
「うん。本当それ」
そんな気まずい雰囲気を振り払うように、職員は口を開く。
「では、最初の戦闘試験。ステータスを測りましょう。ついてきて下さい」
* * *
それから案内されたのは、宮殿内の別室だった。
少し、狭く薄暗い部屋の端には、魔力やステータスを本格的に測るための魔道具が置いてある。
「では、本人確認の為、魔力を計らせていただきますね」
言われるがままに、れいりは魔道具の前に立った。
この魔道具は、この間検問所で使ったものと違い、アンティークな鏡の様な形をしていた。
三大賢者の試験でも使われる精度の高い魔道具で、鏡にステータスが映し出されるような仕組みになっている。
《ステータス》
属性:虹
魔力:456M
武器種:剣「刀」
「えーっと、前計測から4M上がっていますが……そこまで触れ幅はありませんね合格です」
メモを、取ってから何かに気がついたように焦った顔をして、れいりの方を見る。
「安心してください、れいり様の誤魔化しについては口が裂けても言いませんから」
(やっぱりバレてたんだ…)
「それでは次はルナ様。どうぞ、こちらに立ってください」
〈ステータス〉
属性:エラー
魔力:エラー
武器種:エラー
「ケフィー様。これ、壊れてますよ」
魔道具を指さして言う甘猫に、ケフィーは少し考え込む。
「見た感じ、特に目立った故障は見つかりませんね。魔力の問題ではなさそうです」
そもそも、魔道具は近くの魔力を通して本来の力を発揮するもの。
そこまで難しい原理ではないはずなので、劣化以外に壊れる理由は見当たらないし、見た感じこの魔道具が作られたのは割と最近に見えるので、常識的に考えると甘猫に問題があるとしか考えられない。
「いいです。私の鋭目で免除しましょう、えーっと、属性は光、魔力は632M、武器種は杖・槍・銃といった所ですね」
「えっと、今何Mって……」
「632Mって言いましたけど…」
「ろっろっぴゃく!」
600M以上を持つ生物といえば、ドラゴン一の魔力を持つエトワールドラゴンくらいじゃないだろうか。
「あの、魔力を少しサバ読んでも?」
「いや、魔力量ならもう十分だと思うんですが…」
「そうじゃなくって……例えば平均値よりちょっと上の263Mとか」
ケフィーは少し不思議そうな顔をした後、どこか納得したような顔をしてステータスがメモされている用紙をペンで書き直す。
そして、何事もなかったかのように話しはじめた。
「それでは、次は戦闘試験ですね。息が合うかを見るものですので、ルナ様が本気を出しても大丈夫ですし、もし要望があるのであれば修正も出来る限り可能ですので」
「そんなことしてもいいの?」
「だって貴方達、見るからに訳ありじゃないですか。本当に二人とも正反対の問題児みたいで……。それに、この試験は二人の能力ではなく相性をみるものです。何故能力を書き換えてはいけないのでしょうか」
「まぁ、確かに…」
この世界には本当に色々な考え方の人がいるのだと、れいりは実感する。




