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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第二章 ミラグロス帝国

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【第二章 - 2】死灯蜜の秘密

 支度を終え玄関まで着いた、れいり達。箒を片手に飛行魔法を発動するが、しかし一つ問題点があった。

「甘猫って、飛行魔法使える?」


「まぁ、使えないこともないのですが……基本的に、飛行魔法は使えません。しかし、こないだアイルー様に転移術式を教えて貰いましたので、それなら使用可能です」


 ーー魔法と術式は似ても似つかぬもの。

 魔法は、属性を制し、術式は魔力を制す。

 簡単に言えば、属性を超えた魔法、それが術式である。


 少し話を変えて、瞬間的に移動する手段として存在しているのが、瞬間移動魔法、転移術式である。


 主に、瞬間移動魔法は風属性を必要とする。

 しかし、甘猫の属性は光。

 光属性に転移系の魔法が存在しない。しかし、上級魔法、それに必須条件として攻撃を伴ってしまうという欠点がある。


「ですから、私は転移術式を選んだというわけです。しかしながら、術式の方が魔力消費量が多いので不便なんですけどね。れいり様のお好きで良いですよ?箒が良いのであれば、代わりに属性変換石を取り付けられる武器がございますので…」


 属性変換石、つまり、魔力を通すことで他の属性に変換する魔石。(消耗品)

「転移術式の方にしよ?冬だから向かい風が冷たいし……」

「かしこまりました」

 甘猫は、れいりの方へ手を差し伸べる。それに答えるように、甘猫の手に触れた途端、光景、雰囲気が変わった。


 いつものルミナスタウンだ。


 就任式とはうって変わって、もうすっかり凍堕の季、という感じの雰囲気という感じだ。

 街中に暖炉が設置されており、市場は、飴やココア、魚などこの季節ならではのものが沢山並べられている。


 それから、甘猫と例の宮殿まで少し話をしながら向かった。

 その途中ーー

「飴細工屋さん?」


「れいり様。何ですか?その、あめざいくとは、雨を細工…。なるほど!水の魔法を使ったショーをやるお店なのですね!」


「違う……けど、そんな発想はなかった…。 飴細工屋さんっていうのは、お菓子の飴を作ってるお店のことを言うの」

 れいりの説明を受けた甘猫は目を見開いて興味満々にれいりの方を見る。


「少しだけ見ていきましょう!少しだけ、ね?」

 れいりに選択権を与える隙すらなく、甘猫はれいりの手を強引に引っ張っぱった。


 ドアを開けたと同時にドアに付いていた鈴の音が「カラン」と音をたてる

「いらっしゃい」

 中に居たおじいちゃんは微笑んで言う。


「お嬢さん。飴細工に興味があるのかい?」

「はい。飴を細工、想像出来ませんね…。とても面白そうです、どのようなギミックが…」


「ははっ、お嬢さん。飴細工を見るのは始めてなのかい?細工っていうのはな、そう言う意味だけじゃ無い……」

 それから、おじいさんが差し出してきたのは小さな魚の形をした飴だった。


 飴は、太陽の光を受けて宝石の様に輝いており、色々な色をふくんだその飴は光を通して、まさにステンドグラスのようにも見える。

「もの凄く、綺麗です」


「これは、お嬢さんにあげるよ」

「良いんですか?ありがとうございます!しかし、本当によろしいのでしょうか…」

「良いんだよ」


「ありがとうございます」

 そして、瞬きをする間もなく、甘猫はその飴細工を舌でぺろっと舐める。

「美味しいです!」


「わしはその笑顔が見たかっただんだ」

 おじいちゃんは、甘猫に微笑みかける。それからしばらく、飴を舐めていると、甘猫はあることに気が付く。


「あれ?れいり様は……」

 周りを見渡すと、店内の奥で何かをゴソゴソ探っている人影が…。

「って、れいり様何をしているんですか!」


「いや、死灯蜜ないかなって……」

 飴細工屋とはいえ、普通の飴も売っている、ということは死灯蜜があるのではないかと考えたれいりは戸棚の奥を探っていたのだ。


「死灯蜜なら奥にあるぞ」

「本当ですか?」

「あぁ、随分と昔に仕入れたんじゃがな、後から致死量の毒が入ってることが分かって帝国が販売を停止したんじゃ。じゃが、そんな珍しい物を捨てようと思えるような性格じゃなくてのう……」


 それから、おじいちゃんは店の奥に入っていった。

「れいり様。だから言ったじゃないですか!名前も見た目も怪し過ぎるって、本当に食べなくて良かったです。そもそもどこであれを入手していたのですか?」


「いや、箒で一時間くらいかかる。老夫婦経営のお店で…」

「それ、闇市経由なのでは?」

 そんな話をしている間に、奥からおじいちゃんが戻って来た。


「これじゃろ?」

 それは、発売当初の期間限定死灯蜜。

「これ、貰っても?」

「まぁ、買う人もそうそうおらんしな…。6箱くらいあるから5箱はいいじゃろう。しかし、こいつは販売停止品じゃからな…。少し高めの金貨2枚でどうじゃ?」


「そんなので良いんですか?ぜひ!」

 れいりはカウンターに金貨2枚をぴったり置いた。

「丁度じゃな?それにしても、お嬢ちゃんは金持ちなんじゃな……」


 そして、カウンターに丁度6箱置かれた死灯蜜を収納魔法で閉まったれいりと、甘猫はその店を後にした。

「まいどあり。また、おいで」


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