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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第一章 セイシスト教会本部孤児院

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【第一章 - 2】三大賢者就任式

 身支度を終え二人は一緒に玄関を出る。

 外に出た瞬間ーー風がローブを揺らし髪をなびかせた。


「今日からお母さんと同じ三大賢者なんて、やっぱり緊張するな…」

「そんなに緊張しなくても大丈夫って言いたいところなのだけれど、私が三大賢者に就任した日も今の貴方と同じくらい緊張してたのよ…。お母さんも人の事言えないみたいだわね」


 お母さんはれいりに微笑みかける。

「でも、なんか元気出てきたかも!」


「あら、それなら良いのだけれど」

 箒にまたがったれいりは、朝の風に髪をなびかせながら、れいりは母と並んで空を飛んでいた。

 魔法で浮遊する箒が空を切り、ミラグロス帝国の首都ールミナスタウンが視界に近づいてくる。


「空、綺麗…」ぽつりと呟いたれいりの声に、お母さんが横目で微笑む。

「雲一つない快晴。れいりちゃんの就任式にピッタリな日ね」


 それよりも、れいりは一つ気になることがあった。

「お母さん、それ、飛びながら紅茶飲むの危なくない?」

 れいりのすぐ横を飛ぶ箒の上で、お母さんは片手にティーカップを持ちながら涼しい顔で紅茶をすすっているのだ。


「慣れればこぼれないわよ。これも三大賢者の た し な み」

 れいりは思わず溜息をついた。

「そんなたしなみ、知らないんだけど…」


 * * *


 街はいつもより、より一層賑わっていた。街は色とりどりのガーランドで飾り付けられており、地方から色々なお店が出店していた。塔の上には三大賢者の紋章が掲げられ、帝国中の注目が今日、この都市に集まっている。


「わぁ…」

 れいりは箒の速度を少し落としながら、下の街並みを見下ろした。

 広場では子供達が元気に遊び、町では楽団が陽気な調べを奏でている。


「着いたわよ。降りましょうか」

 母の声に頷き、れいりは塔の裏手にある着陸広場へと箒を傾けた。そこでにはすでに数人の係員が準備を進めておりとても忙しそうにしていた。


「心虹賢者、そして…本日就任の心虹れいり様ですね。本日案内致しますルミナと申しますどうぞお見知りおきを…」

 頭を下げたのは、セイシスト教会の案内役である若い女性ーその瞳は、どこか憂いを帯びていた。


「ルミナさん?ですよね」

「はい、私が本日。就任式の補佐を務めさせていただきます」

 れいりが戸惑い気味に名前を確認すると、ルミナは静かに微笑んで頷いた。


「今日という日が、れいり様にとって良い門出となりますように」

 その声色は、どこか祈るようで……。

 れいりが案内のルミナに頷き返そうとしたその時。


「…心虹れいり、か」

 少し離れた場所から少年のような声が届く。


 振り返ると、塔の影からひとりの青年が現れた。

 クロに近い深緑のローブを羽織った低身の青年。髪はやや乱れており、その鋭い眼差しはまるで何かを見透かしているようだ。


「え、えっと…あなたが、もしかして…」

 れいりが問いかけるようとすると、青年は視線を逸らすように、短く返す。

「リフレイト。……三大賢者のひとり」


 名乗ったはいいが、どこか所在なさげに視線を泳がせている。れいりと顔も合わせないまま、まるで話に慣れていない様子だった。

「そ、そうなんですね!今日からよろしくお願いします!」


 れいりが明るく頭を下げると、リフレイトは一瞬たじろいだように瞬きを繰り返したが、小さく頷くことで返した。

 言葉よりも先に身を引くようなその反応に、れいりは少しだけ感心する。


 その様子を横目で見ながら、ルミナはわずかに口元を緩めた。

「リフレイトさんは、ちょっと人付き合いが苦手なんです。でも、魔法と結界のことになると本当に凄いんですよ」


 そう補足するルミナの声には。どこか親しみと敬意が混ざっているようだった。


 ルミナに先導され、塔の中へと案内されると、石造りの階段が螺旋を描いて上へと続いていた。

 壁には古代語の刻まれた装飾が施され、天井近くでは光の粒が魔法の結晶から放たれていて、まるでこの空間全てが魔術式そのもの。


 そのままルミナの案内で、塔の中の待機室へと通されたれいり達三人。

 待機室は、木製の椅子とテーブルが並べられ、魔導式ランプが優しく光を灯している静かな空間だった。

 お母さんが隣の椅子に腰掛けながら、母がれいりの肩に手を置き、声をかける。


「緊張しなくて大丈夫よ。ほとんど形式だけの式典だから、あまり堅く考えなくていいの」

「う、うん…」

 れいりは頷いたものの、手のひらにはうっすらと汗がにじんでいる。


 やがて、塔の上階から就任式の開始を告げる鐘の音が響いた、 ルミナに促され、れいりたちはゆっくりと階段を上がる。


 扉の先には、式典の広間が広がっていた。高い天井には光映陣が浮かび、広場には多くの来賓と観客の姿。

 光の粒が舞い、とても幻想的な光景だ。


 れいりが壇上に立つと、式官が声を張り上げる。


「これより、心虹れいり様に三大賢者の証を刻印いたします」


 その言葉と同時に、天井から吊るされた銀の魔道具が動き出し、空中に精緻な魔法陣を描き出す。

 陣から放たれた光がれいりの全身へと降り注ぎ、足に刻まれた虹の紋様を照らした。


 その模様は、魔力適正のある者すべてに何の前触れもなく刻まれる。

 それは、自分の魔力属性を表しており、れいりは、史上初、この帝国に存在する基本属性すべてを扱う事の出来る唯一無二の属性ー虹。


 やがて、虹の模様の右上に、三大賢者の証である、王冠の模様が刻まれる。

「ーー刻印、完了」


 式官の声が広間に響き渡ると、静寂の後に、大きな拍手が巻き起こった。

 れいりは緊張しながらも、小さく息を吐く。

 これで、自分は正式に賢者となったのだ。


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