【第一章 - 22】ゲーム
「一体何をしたのですか…」
倒れ込んだれいりを抱き抱えて、甘猫はプロソポンに尋ねる。
「ちょっと、記憶を消して、幻覚をみせてるだけさ。君はどう感じているのだろうか?ご主人を奪われた君の気分は」
「そりゃ、悔しいに決まってます。れいり様を守れませんでしたから…」
「じゃあ、そんなかわいそうな子猫ちゃんに救済を。僕、いいこと思いついたんだ。ゲームじゃなくて、子猫ちゃんが襲撃犯をやるんだよ。興味は無いかい?」
「興味が無い、といったら嘘になりますが…」
甘猫は、気まずそうに言う。
それから、プロソポンは手を胸の前で合わせて、それから笑顔で言った。
「やっぱり?君ならそう思ってくれると思ったよ。じゃあやってくれるよね」
プロソポンは底のない泥のような瞳で、甘猫を睨みつけた。
「……孤児達の身の安全を保証してくれるのでしたら」
「もちろん。保証するよ」
* * *
甘猫は最初からこの孤児院を潰す気だったし、今更なんてことない。それに、プロソポンが孤児の身の安全を保証してくれるなら安心だ。
今回の、ゲームとは……それはすなわち、職員達を殺せということ。
どちらかといえば、即興演劇に近いのだろうか。まぁ、見るのが一番早い。
甘猫は、プロソポン案内の元、孤児院の入口へと来ていた。そのまま、警戒する様子もなくそのまま孤児院へと足を踏み入れる。
すると、入口のそばにいた職員がこっちをみてきた。
「貴方は…職員じゃないわよね……ここは一般人が入って良い場所では無いわ? 帰って頂戴」
「それは、難しいですね…。その前に少しお茶でもどうでしょうか…ほら、私はセイシスト教会の者ですので…」
甘猫はお辞儀をしてから、昔使っていたネックレスを服から出した。
「あぁ、本当だわ。そうですね……お茶にしましょう」
「待って下さい。私がお客だというのに、貴方様にお茶を入れさせるとはとても不敬です。私にお茶を淹れさせて下さい」
甘猫は、申し訳なさそうに言い、職員はそれを許可した。
それから、その部屋にいた職員を全員呼び出し、ガーデンで全員にお茶とお菓子を出した。
「紅茶は帝国内で厳選されたカモミールティーでございます」
それを聞いた職員たちは一斉に紅茶を口に付ける。それと共に、一瞬の静寂が響いた。
「すっごく美味しいっ…」
でも、そう言った瞬間ーー職員の一人が床へと倒れもがき苦しみ始めた。
それから次々と……。
「思ったより、簡単な話でしたね…。まさか、こんなにも警戒心がないとは本当に皮肉なものです」
そう言って甘猫はクスッと笑った。
「…っ、お前は人間の心がないのか!」
職員の一人がもがきながら甘猫にそう言い放つ。
「その言葉そっくりそのままお返ししたいものです。しかし、そうですね…私は人間ではなく獣人なので、強ち間違ってはいないかもです…」
そう返した後、苦しそうに喉を掻きむしる彼の額に銃口を当てた。
「かわいそうですね。今から楽にしてあげます…」
そうして、甘猫は銃の引き金をひいた。そして、周りに大きな銃声が響いた後、どこからかアナウンスが流れる。
「この施設内に、不審な人物が入ってきました。直ちに警戒態勢に入ってください」
きっと、先ほど苦しんでいた誰かが、報告したのだろう。
「まぁ、いいです。最初からこれが目的でしたから…」
それから、甘猫は全ての職員を銃で撃ちぬいた後、一番近くの施設の方へと走り出した。
施設内に入ると、いくらかの職員が甘猫の方に向けて銃を構えた。
「こんにちは…」
そう言って、甘猫は軽くお辞儀をすると、職員が震えた様子でこう叫ぶ。
「本当に気味が悪い。私の子供たちに手を出さないで!」
「貴方は本当にお優しい方なのですね。安心してください、子供に手を出すつもりはありません」
「嘘つけ!じゃあ一体何をするつもりなんだ」
職員がそう言った瞬間ーー甘猫は武器を取り出し、そこに居た職員を次々と切りつけた。
「私は、貴方たちを殺しにきたのです。それに、貴方たちは一体いつからそんなことが言えるようになったのですか? 沢山の子供を虐殺し、実験に使い…。直接関わってないとしても、それでも私はとても許せません」
甘猫はぐっと涙をこらえ、目の前に現れた職員を切りつけては次々と進んでいった。




