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楽園の祈り  作者: 大拓 陽
第一章 セイシスト教会本部孤児院

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【第一章 - 17】祈りの魔法

 朝の強い光に包まれて、れいりは目を覚ました。

 確かにまぶしい。いや、しかし本当に眩しいのだろうか…外は大雨。本来は空は暗いはずだ。


 れいりは違和感を覚え、寝返りを打つ。

 その目線の先には誰かが立っていた。

 その人物は、メイド服を着て、ランプを手にした可愛らしい少女。れいりは目を疑う。

 自分に専属メイドなど、居ただろうか…。


「おはようございます、れいり様…。…あの…これで、合ってますよね…」

 よく顔を見ると、昨日の子猫ちゃんだった。

「…え?」

 そう、子猫ちゃんがメイドをやっていたのだ…。


「セイシスト教会の見習いシスターとして、しっかり面倒を見させてただきます!」

 ……それにしても。セイシスト教会のシスターと、私のお世話。

 その二つに、一体どんな関係があるのだろうか。


「それに、れいり様。もうすぐセイシスト教会の教養試験がありますから、文化や習慣もばっちり教えてあげますからね」

「…教養試験。なにそれ…私、受けなきゃいけないの?」

「知らないんですか?」

 当然、れいりはそんな話、今まで一度も聞いたことがない。れいりは状況が飲み込めず、思わず固まる。


「その反応…本当に知らなかったんですね。お母様は三大賢者のお一人ですし、てっきりご存じなのかと…」

 子猫ちゃんは一つ咳払いをした。

「分かりました。でしたら、私が特別に教えて差し上げます!」


「…昨日までの泣き虫子猫ちゃんは、一体どこへ行ったんだろ…」

 れいりは、中を見回す。

「そこはどうでも良いんですよ…。昨日はオフモードでしたけど、今日はお仕事モードなんです」

 …どこかの先輩も、同じことを言っていたような…。

 れいりは子猫ちゃんの話を聞く。


 セイシスト教会の教養試験ーー

 まず押さえるべきは、セイシスト教会と賢者の関係性。賢者には原則として、セイシスト教会のシスターが「お世話係」として付く決まりがあるという。


 では、何故、れいりの家にはそういう人が居ないのだろう…そう思ったが、実はルミナがその役目を担っていたらしい。

 ただしーー

 ・家族の時間を大切にしたい

 ・ルミナをこれ以上忙しくさせたくない


 そんな理由から、立場だけの形式的なものになっていたのだという。

「規則上、賢者にはメイドが必要になります。だからこそ、宗教や文化への理解も求められるのです」

 内心、とても面倒だと感じる。

 れいりの表情を見て、甘猫は言った。

「帝国の規則なので、どうにもなりません。それに……」


 子猫ちゃんは、少しだけ視線を逸らしてから続けた。

「私は、れいり様の傍に就きたいですから」

「え、子猫ちゃんが?」


「いえ、最終的にきめるのはれいり様です。ですから、選んでほしいなー。くらいの気持ちであって…」


「じゃあさ、テストしてみない?」

「テスト…。ですか?」

「私のお世話係にむいているかどうか。教養試験までの間、試してみようよ」


 教養試験は一週間後。

 期間としては、丁度良い。


「そういえば…どうして、そこまでして私のメイドになりたいの?」

「それは…その…」

 子猫ちゃんは一瞬言葉に詰まり、それから小さく笑った。


「大好きなルミナ様が、尊敬している方だからです」

 その言葉を聞いてれいりは驚いたーー自分がルミナに尊敬されていたなど、微塵も考えていなかった。


 同時に、別の疑問も浮かぶ。どうしてこの子は、そんな所まで知っているのだろうか。

「…それより!」

 子猫ちゃんはぱん、と手を叩いた。

「れいり様。そろそろお布団から出ませんか?」


「ごもっともです…」

 それかられいりは、ベッドから不恰好に立ち上がる。


「それでは、私は朝食の準備をしてまいりますので…少々お待ちください」

 少女は丁寧に頭を下げ、静かに扉を閉め、部屋を出ていった。


 本心は、二度寝をしたかったが。仕方がないので、れいりは準備を始めた。

 れいりは大きく背伸びをし、ドレッサーの前に腰を下ろす。 湿気で広がった髪を必死に整え、ようやく一息吐いた。


「…今日は結ばなくていいや…」


 時間に余裕があるときの日課。

  れいりは本棚から魔法陣の論文書を取り出し、ベッドにうつ伏せになってページをめくった。

 今日の項目はーー

『祈りの魔法』

 セイクリッド・ブレッシング、《祈りの加護》の魔法陣化。


 そこで我々の研究チームはこのような議題の研究をしてみることにした。

 それは、【祈り】である。


 最近開発された観察用魔法陣。

 三大賢者・心虹れいりの研究成果により、魔術分野では新たな発見が相次いでいる。

 こんなの、絶対研究してはいけない分野だと言うのに…。自分の開発した魔法陣で研究されると、なんだかやるせない気持ちになってくる。


 古来より、祈りを捧げた者には加護が与えられると言われてきた。

 その真偽を確かめるため、今回はセイシスト教会に虚偽の実験内容を伝えたうえで、協力を仰いだ。


 実験内容は単純だ。

 観察用魔法陣の上に座り、祈りを捧げてもらう。ただそれだけ。


 結果として、加護と呼べる現象は確認されなかった。

 しかしー別の発見があったのだ。祈りの最中、魔力が通常とは異なる挙動を示し、増幅されたのち、最終的に空へと流れていったのである。


 れいりは、そこでページを止めた。そこで、れいりはあることに気がつく。

 考え込んだ、その時。


 コンコン、と扉を叩く音が響いた。

「れいり様。朝食の準備が整いました。お部屋でお召し上がりになりますか?それともリビングで…」


 部屋で食べるだなんて、そんな贅沢しても良いのだろうか。でも、怠けすぎな気もする。

 少し迷った末、れいりはリビングで食べることを選ぶ。


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