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第12話 「まずい、ガソリンがないッ!!!」

〜これは前回の出来事より少し前の話〜




「まずい、ガソリンがないッ!!!」


「なんやて工藤ッ!?」


とある朝のこと。

いつも通りミラーゼの家の隣に駐車した痛車で目覚めると燃料計が点滅していることに気づいた。え、嘘、ここファンタジー世界やぞイかれてんのか? ガソリンどうやって手に入れればええねん!


「おいおいおいおい、そんなことってありかよ佐武郎! お前スキルとかでなんとかできないのかよ? 俺たちの生命線だぞこれ!?」


「んなこと言ってもな! 昨日もギルドでスキル確認したけど《痛車召喚》がレベル3になったこと以外特に変化なしだよちくしょうッ!!」


昨日の時点でレベル450あたり。それでスキルが《痛車召喚》レベル3のみという地獄。この世界がレベルによってスキルが解放されることはアニメで予習済みなのだが、にしたって燃料入手手段が今だにないのおかしくない!? カスタマーサービスがあったら即刻クレームしたいわ。


おまけにこの車はパラレル式のハイブリッドカーだ。俗にいうマイルドハイブリッドというやつで、エンジンを中心としてモーターがアシストする仕組みになっている。


無論雷魔法とかでモーターを使えばなんとか走れる可能性はあるが、やはり性能は格段に下がるだろう。それが意味するのは死、ガメオベラである。つまりいずれにせよガソリンがないとやばいということ。再びポ⚪︎モンマスターならぬ痛車マスターの危機到来D⭐︎A⭐︎


「こりゃあ、手に入れるしかねえな! ガソリンをよぉ!」


「ガソリンを手に入れるって、、、佐武郎ちゃん、一体どうすんのよ!」


「ふッ、簡単なことさ……だから省略して、唆るぜこれはッ!!! やってやるさ、このストーンワールドでなッ!!!!」


「、、、んで、油田探しから採掘採集運搬精製の工程があるがどうすんだ?」


「そうだな、まずはとりあえず1000年くらいコールドスリープしてから話そうじゃないか」


「他人任せド⚪︎タース⚪︎ーンッ!?」






△▼△▼△






「「てことでお願いしますミラーゼ師匠ッ! 俺たちに剣の使い方を教えてくださいッ!!!」」


「え? どういうこと?」


「俺たちは知っていますッ! 師匠が毎朝毎晩剣の訓練をしていることをッ! 俺たちはその太刀筋に惚れましたッ!! だから俺たちに稽古をつけてくだせえッ!!」


「え、ホントぉ!? 惚れたってぇ、、、照れちゃうじゃないか! うんうん、いいよいいよ! ボクはこの時を待ってたんだっ! 再び剣を教えることができるこの時をっ!!!」


「「ありがとうございますッ!!!」」


というのはもちろん建前であるッ!!!!

ガソリンを用意できない今、できることはただ一つ。兎に角レベルを上げてスキルを獲得するということのみ。その上ではある程度の武器の扱いを知らなければならない。てことで一応師匠のミラーゼに土下寝して頼み込んでいるのであるッ!!!


「じゃあまずは君たちの素質を見てみよう! まずは街の周りを10周走ってみようじゃないか!」


「「は?」」


いやちょっと待て。

この街結構でかいぞ、村って言われてないくらいには。




ここからの一週間は地獄だった。


体の酷使に次ぐ酷使、間違ったトレーニング知識、そもそものミラーゼの人間性etc……

アニメで知ってはいたが、まさかここまで酷いとは思わなかった、、、ッ!!


ということでダイジェストで行こう。




「師匠ォ!! いい加減休ませてくださいッ! 死ぬってッ! 色んな意味で死ぬってッ!!」


「ダメだよ、アハハハハ!!!!」


これはとある雨の日のこと。

とりあえず剣士は体力が大事と言い渡されランニング。なお上裸。理由はシンプル、服を着てたら破けるから。なんでかって? 後ろ見てみろよ、満面の笑顔で鞭振り回してる狂人がいるぞ? しかも周り見てみろよ、街の奴らがすごい顔でこっち見てきてるで?




「師匠ォ!! 間違ってますって! それそういう使い方じゃないっすッ!!!」


「いやいやぁ、何を言っているのさ。ボクが世界を旅していた時の知見を否定するっていうのかい?」


これはとある雪の日のこと。

剣士は痛みに耐性を持たなければならないそうなので針治療。文字通り釘くらい太い針を身体中にブッ刺していくという訓練。死ぬかと思った。確かに見聞きしただけじゃ鍼灸ってこういうもんだよなと再確認。テ⚪︎マエ⚪︎マエを思い出した。ちなみに次の日、まさかの肩の凝りがなくなっていた。あいつ鍼灸師になったほうがいいんじゃね?




「師匠ォ!! なんすかこれ!? あんた狂ってるって! 一体何考えてんだよッ!?」


「いやいや、これも大事な訓練だから、ね?」


これはとある晴れの日のこと。

剣士というものは不潔を恐れてはならないそうなのでその訓練。肥溜めに頭から突っ込めと指示。おいちょっと待てや、俺たちの死因これやぞ!? 俺たちの人生ここまでか!?


「大丈夫大丈夫、もしも病気になっても教会行けば治るから!」


「くそ、押すなよ! 絶対に押すなよぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!! うわぁあああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


「佐武郎ォおおおおおおおおおお!!!!!!」




これはとある最終日のこと。


「じゃ、今日から剣について教えるね?」


「「は?」」






△▼△▼△






皆様は悪魔というものを信じるだろうか?

俺はもちろん信じる。だって目の前に実物がいるんだから。


「全く、最近の若い子はさ! レベル上げれば体鍛えるとか技鍛えるとか意味ないじゃんっていうんだよ! そうじゃないじゃん! 戦いに本当に必要なのはレベル上げで手に入るもんじゃないんだよっ!!!」


「あっはい、そうっすね〜」


「その通りっすわ〜、うんうん。師匠まじわかってる〜」


現在ギルドの酒場。

酒に弱いミラーゼが早速一杯目くらいを空にしたあたりで真っ赤なトマトになってしまった。んで、机に突っ伏して自分も若いくせに後輩の愚痴を言うという始末。う〜ん、ゲロチュー、、、ああいやなんでもない。


ちなみに先日剣の扱い方を教わって、早速イノシシャとスライムを生ハムにしてきた。今までの訓練がなんだったのかよくわからないくらいあっさり倒せた。ついでにその時は随分と素材の状態が良かったからギルドで高値買取してもらえた。この前のよくわからん虹色鹿の角と皮を売却したのもあって懐事情は結構いい。まあ、現状金の使い道がないから食料買うだけ以外のことしてないんだけど。


「いやぁ、久しぶりにミラーゼちゃんベロベロになってるねぇ」


カウンターの向こうで木のコップを拭いていたゴツいおっさんがこちらに話しかけてきた。とは言っても俺たちが怖気づくとかそういうことはない。既に何度かこの酒場にはお世話になっているのでそれなりに面識はあるのだ。


「マスター、こいつなんとかできないんすか?」


「あはははは。無理に止めようとしても彼女に敵う人はここにはいないしねぇ、自然に収まるまで待つしかないよ」


「うわぁ、この老害ムーブかます人に付き合うしかないと、、、」


「でもね、君たち。ここまで彼女が酔うのは勇者くんを育ててた時以来なんだよ。きっと彼女は随分と君たちを信用しているのさ」


「そういうもんすかねぇ」


「そういやマスター、こいつに敵う奴がいないって言ってましたけど、こいつのレベルがどれくらいか知ってますか? 一度も聞いたことないんですよ」


ふとそんな疑問が湧いてきた。こちとらレベル上げで困っている人間だ。未だにスキルが全く増えないし、いざとなったらやつにコツを聞くのもいいかもしれない。


横を見てみれば既に二杯目の半分ほどで酔い潰れたミラーゼがいる。既に夢の世界に旅立ってしまった感じのようだ。あとでこれどうやって運搬しようかな。


「ミラーゼちゃんのレベルかぁ。結構昔の話だけど、確かあの時はレベル3000くらい行ってたんじゃないかな。多分今は4000代に突入してると思うよ?」


「「え!?」」


勇者が魔王戦に突入した際のレベルが確か2800程だったはず。それを考えると破格のレベルだ。この若さでその境地に至るためにどれほどの戦場を潜り抜け逆境を打ち破ってきたというのだろうか?


よく考えてみると今までミラーゼの素性とかを聞いたことがなかった。アニメで全てを知った気になっていた。でも実際人間はそんなに浅いものではないのだ。何十年も生きて経験を重ねてその人が形成されていく。アニメなんて所詮は一つのキャラに割く時間なんて数時間くらいしかないだろう。それが主人公でもなければ尚更だ。


「……案外こいつも運命の被害者なのかもしれない」


「フッ、そうだな、、、」


よくわからない謎の間が生じる。しかし、そこは年長者のマスター。沈黙を打ち破るように提案をしてきた。


「さて、少し大人の顔になった君たちにサービスしようじゃないか」


「「え? マジすかッツ!?」」


「ちょっと独特な味なんだけど、酒のつまみになるから食べてみるといい」


そうやって出されたのは真っ赤なゼリーの上に香ばしい香り漂うソースがかけられた料理だった。正確にいうと中華料理店にあるような前菜の写真の中に紛れてそうな感じの一品。赤色に濃厚なソースの茶色となかなかに重そうだが、あえられたニラのようなものと輪切りにされたネギのような野菜で中和されている。見た目は悪くなさそうだ。


「「いただきますッ!!」」


スプーンで一角を崩してそのゼリーを頂く。ふむ、レバーに似た血の香りだ。ほんのり甘みがある。そのままスプーンの端を使ってソースの方も口の中に入れてみる。甘辛いソースだ。これはあれだな、レバーの甘辛煮みたいな味がする。確かにつまみとしては申し分ないだろう。


「ところでマスターこれなんて料理?」


「『ブラッドスライム』だ」


「「ブハッ!!!!」」


衝撃で噴き出す。おいちょっと待て、ブラッドスライムって、、、どこからそれ採ってきたんだよ!?


「ああ、心配しなくていいよ。癖の少ない家畜の血を吸わせたスライムを蒸し焼きにしただけの料理だ。倫理、衛生上の観点から問題はない」


「お、おおぉ、良かった」


「マスター脅かさないでくれよ!」


「いやぁ、すまんすまん。これが俺の自慢料理でな。是非是非お前たちに食べてもらいたかったんだよ。どうだ、美味いは美味いだろ?」


「ま、まあな」


世の中にはブラッドソーセージなるものもあるから全然常識の範囲の料理だが、、、なんか気になるな。元々このスライムは生きてたんだし。いや、もちろんソーセージになっちまった家畜たちも生き物なのだが、、、


「鮮度が売りの食べ物だから今日作りたてだぜ? こいつは数日置いておくと独特の香りを発するからな。そうなっちまうと食えるようなもんじゃない」


「へえ、どんな香りなんだ?」


「いや、言葉にはしづらくてだな……あっ、そういやちょっと前の売れ残りを放置してたんだった。ちょっと持ってきてやるから待ってろ」


そうやってマスターが持ってきたのは素焼きのツボだった。パッと蓋を開けてみると確かに独特の香りが……っは!? これは!?






△▼△▼△






「ど、どうしちゃったんだよ君たち!?」


「師匠、今日はちょっとお暇させていただきますぜ」


「俺たちやらなきゃいけないことがあるんすわ」


「いや、それはいいんだけどなんでタル? 中に入ってかくれんぼでもするの?」


「「んな訳あるかッ!!」」


ということで草原まで子供くらいの大きさのタルを背負って移動。一週間とはいえ、ファンタジー世界だからか結構身体能力が向上したのだ。このくらいのことは朝飯前である。


「タル用意ッ!」


ドンッ!!!


「慎吾ッ! スライム用意ッ!!」


「イエッサーッ!!」


地面に設置したタルにその辺の草を溶かしている? スライムを片っ端から突っ込んでいく。ぐちゃぐちゃと音を立てて下のスライムが仲間の重さで潰れていくが問題ない。


「慎吾ッ! イノシシャ用意ッ!!」


「イエッサーッ!!」


タルの中にイノシシャの頭を突っ込む。


「慎吾ッ! 血抜きッ!!!」


「イエッサーッ!!」


師匠からいただいた剣、ではなく自前のサバイバルナイフを的確にイノシシャの頸動脈を突き刺し血抜きをする。結局現代の刃物の切れ味には黒曜石ナイフ以外敵わん。科学技術万歳!


「さあ、ここからラストスパートだッ!!!」


「イエッサーッ!!!」


イノシシャの血が溜まったタルをスライムのタルに突っ込む。そして今度こそ師匠からいただいた大事な大事なロングソードで潰しきっていないスライムを切り裂きつつ撹拌していく。


「「うぉおおおおおおおお! 気合いだ気合いだ気合いだぁあああああああああああああ!!!!!!」」


溶き卵をかき混ぜるように気合いで混ぜていく。別にここまでやる必要があるかどうかはわからんが、まあやって問題はなかろう。


さあ、勘のいい諸君そろそろ気づいたのではないだろうか?


そうッ!

昨日俺たちが嗅いだあの発酵ブラッドスライムの香りッ! あれは紛れもないガソリンの匂いだったッ! 無論ガソリンというものはさまざまな化合物を含んだ混合物。故に匂いだけで判断するのはあまりにも愚か。


しかしッ! あの時マスターから頂いたサンプルはBBQの時にガソリンでファイアーした時のような爆発的な燃焼を見せてくれたッ! こうなったらもう信じるしかねえッ! 発酵ブラッドスライムがガソリンの代わりになるんじゃないかって希望をよぉッ!!!!!


考えてみれば発酵ブラッドスライムはずっと俺たちのそばにいてくれたッ!!!

一番最初に草原でハンバーグを作った次の日の事ッ!

あの時草原に満ちていたガソリン独特の匂いは確かに俺たちを包んでいたッ!!!

その次の日も、その次の日もッ!!!!

あいつらはずっと俺たちのことを見ていてくれていたんだッ!!!


「さあ、見せてくれッ! お前たちの力をッ!!!!」




〜数日後〜




「さあ、緊張の瞬間です。この博打の内容はこう。外れれば爆死、当たればエンジンが動きますッ!!!」


「クソッ、我ながら頭が悪い賭けに出ちまったぜッ!!!」


既に正常な発酵過程を経てくれた友人たちはタンクの中である。後はそう、痛車のエンジンを始動させるだけだ。


緊張の瞬間。

手に汗が滲む。


「いくぞ、、、」


「ああ、、、」


「「エンジンスイッチ作動ッ!」」


永遠のような時間だった。俺たちはまた田中ん家の時みたいに爆発四散してしまうのではないかと思った。だが、、、


「爆発、しないッ!!」


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!!」」


「いや待て待て。痛車が走ってからが本番だろ? とにかく燃料計は半分くらいはしっかり埋まってる。さあ草原までひとっ走りだッ!」


サイドブレーキを動かし全速力で走り出す。速度計が示す速度がどんどん早くなっていく。これでも特に問題が見られないということは、、、


「勝った、、、僕の勝ちだッ!!!」


「やったぞッ!! 俺たちこのストーンワールドでガソリン作っちまったッ!!」


「しかもサステナブルだッ! コイツァ、日本が化石賞を免れる日が来ちまったなぁ!」


その瞬間、痛車の直線上にいた少し大きめのスライムが吹き飛ばされて宙を舞う。その光に照らされた空のように透き通った青いボディはとても美しかった。ああ、やっぱりスライムってのは友達だったんだなぁ、、、




[レベル500を達成しました。スキル《ガソリン生成》とスキル《痛車修復》を取得。詳細はステータス鑑定器具でご確認ください]




「ホーリーシットッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」






《ガソリン生成Ⅰ》

痛車の重心を中心とした半径3m以内にガソリンを生成することができる。代償として魔力を消費する。


《痛車修復Ⅰ》

破損した特定の痛車に一分間で全体の質量1%分の修復を行う。また、ラムを使用することにより加速することができる。





※ガソリンタンクには変なものを入れないでください。死にます。

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