告白
「やあハニー、君の方から来てくれるなんて嬉しいよ」
王子が白い歯を煌めかせ、眩い笑顔を向けてくる。
この素敵な笑顔も見納めかと思うと、少し寂しい気分になってしまう。
今日私は、王子にお別れを言うために王宮へとやって来た。
「急に押しかけてしまい申し訳ありません、王子」
あの夜の後、ナルトは私の前から姿を消した。
彼の残した置き手紙には、私の目にかけてある呪いの事、それと私に迷惑をかけた事を謝罪する言葉が綴られていた。そしてその手紙の最後はどうかお幸せにと、そう締めくくられていたのだ。
「あの……出来れば人払いをお願いできないでしょうか?」
「分かった」
王子は私の頼みを聞き入れ、有無を言わさず傍仕えの者達を下がらせてくれる。
これからする話は出来れば周りの人間には聞かせたくない無かったので、王子の心遣いが本当に有難かった。
「それで、話ってのは?その様子からすると、あんまりいい話じゃなさそうな気もするけど」
王子は応接室のソファに腰かけると、真剣な表情で私を見つめてくる。
私はどう切り出せばいいかと色々と考えたが、単刀直入に用件を話す事に決めた。
「王子……どうか私との婚約を解消して頂きたいのです」
「嫌だ」
王子の口からは間髪入れずノーが返って来る。
まあ流石にそう簡単にイエスが返って来るとは思っていないが、この様子では簡単に納得してくれそうにはない。やはりしっかりと事情を話す必要がある様だ。
事前に両親に事情を話し、王子に全て話しても良いと言っては貰えはている。
だができる限り家に迷惑の掛からない様、穏便に済ませるのが理想だったのだが……
「「……」」
気まずい沈黙が場を支配する。
私は小さく溜息を吐くと、意を決して口を開く。
「王子は魔法と言う物を御存じでしょうか?」
「これまた唐突な質問だな。勿論知っているよ。むしろ君がその言葉を知っている事の方が驚きだ」
この時代に魔法は存在しない。
その為、一般的にはその呼称は知られていなかった。
だが流石王家と言うべきか、王子は禁忌とされる魔法の事についてもきっちりと教育を受けている様だ。
「私は魔法使いです」
「またまた唐突だな。魔法は禁忌として、遥か昔にその知識は完全に封印されてるはずだけど?」
500年前。
ある強大な力を持つ魔女が大きな災厄を起こし、それ以来魔法は禁忌として封印されるようになる。その結果長い年月をかけて人々の体内から魔力が失われていき、代替品して魔具が発達したのが今の時代だ。
「まあそれ以前に、今の時代の人間は魔力を殆ど持っていない。つまり会得は不可能だ。冗談にしても少し突拍子が無さすぎるよ、ハニー」
王子は私の言葉が冗談か何かだと思ったのだろう。
少しおどけたように肩を竦めて見せる。
まあそう言う反応が返って来るのは分かっていた事だ。
両親も最初は私の言葉に半信半疑だった。
だから私は王子の目の前で魔法を使って見せる。
私の手が赤く輝く。
私はその手ですぐ横のソファーに触れる。
「っ!?」
ソファーはまるで重さ忘れたかのようにふわりと浮かび上がる。
王宮に事前に用意されていたソファーだ、種も仕掛けも仕込みようがない。
ソファーは私と王子時の間でクルクルとワルツを踊って見せる。
それを見た王子の表情が驚愕の色へと変わっていく。
「これで分かって貰えたと思いますが、私は魔法使いです」




