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カーテン売り場にて





 春から新生活。

 実家から出て初めての一人暮らし。

 初めてのマンション暮らし。

 初めての引っ越し。

 初めての荷解にほどき。



 そして気づく……マンションの部屋にはカーテンがない!最初から付いてるタイプの部屋じゃない!マズい!

 日中、眩しい!暑い!

 何より部屋が一階なのでプライバシーがダダ漏れ!

 私、女子大生!

 非常にマズい!



 ということで、カーテンを買いに大型家具店へ急いだ。



 時期が時期なだけあって、客が多い。

 老夫婦から幸せオーラダダ漏れの新婚夫婦もしくは同棲カップル、と様々な人達に混じり私はカーテン売り場を訪れた。



 展示されているカーテンは多種多様だが、窓の真ん中から波打つように左右に開いていく一般的なドレープカーテンを物色する。好みの色、デザイン、素材……各商品のポップを見ながら真剣に吟味する。

 思っていたよりずっと種類が多く、すべて見て回るには中々骨が折れそうだ。

 売り場は折り畳まれた状態の商品がある、その一方で縦に連結されたカーテンレーンに短くカットされた各種類のカーテンが吊るされ、見やすくディスプレイされたブースが売り場の殆どを占める。ディスプレイされたカーテンの奥にはライトがあり、光の透過具合や遮光性を確認出来るようになっている。



《……シャー……シャー……》



 至るところでカーテンレーンの行ったり来たりさせる音が聞こえる。



《……シャー……シャー……》



 自分も気になるものがあるとカーテンレーンを鳴らすようにカーテンを移動させて雰囲気を感じてみる。開けたときの波打つカーテンのなんとも美しい動きに物欲を刺激されていた……。



 そんな時……ーー







『ーーキャッ!!』



 女性の声が響く。

 なんだ?と思い、反射的に隣の若いカップルに視線を向ける。他の周りの人も驚いたのか……同じく視線を向けている。





『ーーちょっ!めっちゃビックリしたんだけど!!アッハッハ!ごめーん【鏡】だったわ!カーテン開けたら人がいるのかと思っちゃったぁ!やだぁ!ーー』

『急に声出すから何事かと思ったわ!マジで!』

『ーーちょ!恥ずかしいからやめてー!?ーーアッハッハ!!……ーー』



 周りの視線もお構いなく騒ぐギャル系のカップル。大きな話声のおかげで事情は察した。……ディスプレイされたカーテン開けて人がいたら……そらビビるよな……と、心の中で共感した。



 ちなみに、ディスプレイされたカーテンの反対側は同じディスプレイされた別のカーテンがあり、それを板で仕切ってあるだけなので人が入って潜むのは不可能。





《……シャー……シャー……》



 周りの客は何事もなかったかのようにまたカーテン選びを再開する。自分も1つ隣の棚へ移ったりして1つ1つカーテンを物色していく。





 すると……また……





『ーーうわっ!!』





 ……今度は中高年の男性の声がした。

 ディスプレイを挟んで反対側の通路から聞こえた。



『……どうしたんです?あなた』

『いや、いやいや!なんでもない……見間違えじゃった……すまん、もう行こうか。カーテンはまた今度にしよう……』



 年配夫婦の会話が耳に入る。

 具合でも悪くなったのか……そそくさと帰ろうとする足音を残して去っていくのが聞いていて分かる。


 すると……



《ーーバタバタバタバタ……》



 複数人の足音が聞こえる。



『…………またですよ。店長……どうします?』

『とりあえず、ここだけ開かないようにテープか何かしとこう……今、営業中だし……出来ることはそれしかないよ』

『……ですね。分かりました』



 店員同士の話声がディスプレイ越しに聞こえた。その後、何かする作業音がしてから去っていく足音がした。私は……何かあったのかな?くらいにしか気に留めてなくてカーテン選びの足を止めなかった。



 一通り見終わって気になるものをもう一度見に行こうとした……その時、一箇所だけ幅広いテープでディスプレイの外枠にバツの字を作るように貼られた箇所があるのが目に映った。



「…………あ」



 あることを思い出してつい口から「あ」が洩れる。そこはギャル系カップルが声を上げていた場所だった。位置的に年配夫婦の声がしたのもたぶんこの辺りだったと思う。



 何かあったんだろう?と興味が湧く。



 近づいてみると……





 【触らないでください】



 と張り紙がしてある。



「……………………」



 気になる。

 ぶっちゃけ……テープの隙間からカーテンに触れようと思えばいくらでも触れられる……。

 その場で立ち止まり、私は無意識に手を伸ばしてカーテンを開けた。



 すると……。






 特に何もなかった……。仕切ってある板があるだけ……ギャルが言っていた……【鏡】もなかった。



「……なんもないじゃん」



 好奇心からの行動で何の成果もなかったことに、

ほんの少しの落胆から視線をちょっぴり下に落とすと……











【生気のない髪の長い女性】と



 目が合った。





















   ーーカーテン売り場にて《完》ーー


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