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神社にて 2





 境内(けいだいに着くと、広い空間に小石(玉砂利)が敷き詰められた地面と先程の老夫婦を先程の老夫婦を含め、他の参拝者客もチラホラ見える。



「……ハァ……ハァ……着いたね……」

「……ハァ……そ……だね……ハァ……」



 額にうっすら汗を光らせながら話す私達は息を整えてから参拝へ臨んだ。その時、すかさず目移りしてユウコに声をかける。



「あ!おみくじ引こ!?大吉だそ!」

「え!?おみくじ?いや、参拝は!?」

「おみくじ引いてからでもいいじゃん?ねー?ユウコーー……」

「もうーしょうがないなぁ」



 その時の気分で強引にユウコを手を引いて私達2人は参拝前におみくじを引いた。



 結果……



「末吉か……」

「え?あたしもなんだけど……」



 少し微妙な表情で私達は顔見合わせる……。



「……おもんな」

「神社のおみくじを『おもんな』とか言うな」



 毒を吐く私をユウコが軽く諌める。



「『おもんな』くても一応結んどくか」

「そうね」



 境内(けいだいにある〈結び所〉へお揃いの末吉を持っていく。その途中……



 ……強い風が吹く。



「ーーあっ……」



 飛んでいく私の末吉。絵馬やお守り、おみくじの窓口がある社務所の横の……その更に奥の方へ飛ばされていく。



「あぁっ……あぁ……あーあ」

「いやいや、見てないで追いかけなさいよ」

「はーい」



 ユウコに言われてようやく動き始める私は無気力ながらに末吉を追う。社務所の反対側の少し手前で末吉は止まり私は紛失することなくそれを回収した。すると、社務所の裏手から男性2人の声が聞こえる。



『……一体こんな話、どこから流れたんか知らんけど……けったいなことになったもんや……』

『ほんまになぁ、お参りに【ウラハク】を混ぜて人を【呪う】なんて……物騒なことやでぇ……ほんまぁ……』



 聞き耳を立てるつもりはなかったが聞こえてしまう。その後も何やらボソボソと声がするが、それ以降はまるで聞き取れなかった。



【呪う】だなんて……パワーワード過ぎてどうしても耳に残り、しばらく硬直していた。すると……



「ノゾミーー!!大丈夫ーー!?」



 心配するユウコの声でハッとする。

 気を取り戻して小走りしてユウコの元へとすぐ戻った。



「ごめんごめん、あったよー」

「もー何してんの、早く結びに行こ?」

「……う、うん」



 私は少し上の空な表情で返事をする。

 さっきの話がやっぱり頭から離れない……



 ……【ウラハク】……とは何なんだろう、と。



「ノゾミ?……どうしたの?」

「……ううん?なんでもない。行こ行こ」



 私は特になにも話すことなく、ユウコと末吉を結びに行って、その後に真ん中の奥のにある拝殿(参拝するところ)へ向かった。



 決められた一般的な作法があって、それに従ってユウコと並んでしっかり〈気持ちを込めて〉参拝した。



「じゃ行こっかユウコ」

「そうだね」



 そう言って今度は下りの石段の手前にある鳥居をくぐろうとしたその時……





『【ーーウケマワッターー】』





 と、声が聞こえた。

 私は反射的に声の発生場所を特定するように周りをキョロキョロと探す動きをした。



「どうしたの?ノゾミ」



 奇異の目で私を見るユウコ。



「聞いた?」

「……?」



 何が?という顔で私をみつめるユウコ。


 ……私しか……聞こえてないんだ、と察する。


 

「いや、ごめん。なんでもない」

「……もう、なんなのよ」



 石段を転ばないように足元を確認しながらぼちぼち下っていると……私の様子がおかしかったこともあってユウコが核心をつく話を切り出す……。



「……あのさぁ、わ……別れたんだよね?」



 気まずそうに話すユウコ。



「別れては……ないん……だよね」

「どゆこと?」



〈浮気された〉ということしか知らないユウコからすれば、それは気になって当然の話題ではあった。ただ、旅行に行く前の私の状態があまり酷かったから詳しくは聞かずにこうして旅行へ連れ出してくれて、元気づけてくれて今に至るという状況……。



「その……(浮気)現場を、たまたま見ちゃって……んで問い詰めたらアッサリ認めて、謝られたんだけど……私がもう凄い勢いで拒絶して……会うの拒絶、電話も連絡も無視!って感じでまともに彼氏と話し合いをしてないんだよね」

「あー、そうゆうことね」



 辛いけど、ユウコのおかげでまだ冷静に状況を説明出来ていることに自分で驚いていた。



「何年付き合ってたんだっけ?」

「5年ですね」

「ノゾミ、今いくつだっけ?」

「今年で29ですね」

「……あー……」



 更に気まずそうな顔をするユウコ。

 そう……29になるんですよ。


 まあ……考えてましたよ、考えてましたがな……【結婚】を!


 仲は悪くなかった。

 ケンカも殆どない。

 同じ趣味だってある。

 お互いを尊重し合ってたと思うし、心地よい距離感で過ごしてたと思う。 



 ……なのになんで?



 悲しみと憎しみで胸の辺りがまた気持ち悪くなってくる。考えれば考えるほど脈打つような嫌な心音に、ただただ苦しい……。



「あ」



 不意に思いだして声が出る。



「え?なに?」



 ユウコが反応する。



「浮気相手……〇〇商事の受付の子だったわ」

「ーーえっ!?あの子!?あの不倫の噂が複数あるって有名な?夜の仕事の副業してるって噂の?」

「そうそう……それ」

「許せねぇなアイツ」

「まあ、それはそうなんだけど……そんなベタなやつに引っかかる方も引っかかる方だと思って……怒り通り越してもう……呆れちゃってさぁ……」

「男って……ホント……はぁっ……」



 同じ会社勤めなのでユウコは彼氏のことを普通知っていて、だからこそユウコの感情の乗った言葉は最後まで言い切ることなくため息で締めくくられた。


 だが……激しく同意した。







 その後、2人はまた旅行の続きをして日が落ち始める前には帰路に立って女2人旅を終えた。



 それから時間と親友のおかげで色々とメンタルを回復させてもらえた私はそこから1週間もしないうちに彼氏に連絡することに……すると、



 親友のユウコからある連絡がきた。

 それは……










【彼氏が交通事故で亡くなった】という内容だった。








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