神社にて 1
5年付き合った彼に浮気されました。
今は親友に傷心旅行へ連れて行ってもらってちょっとずつ元気を取り戻しつつあります。
持つべきものは〈彼氏より親友〉だなぁ、としみじみと思いながら旅先の旅館で温泉を堪能中……。
「…………はぁぁあ…………染みるぅぅ……」
「いやいや……ベタ過ぎるでしょ、それ」
「…………ユウコーー……」
トロンとした目で親友の名前を呼ぶ。
「……なによ……のぼせたの?もう上がる?」
「………ありがとうね、連れだしてくれて」
「あーー……ね、あんた結構ひどい有り様だったからね……3日、何も食べてないって聞いたときはビックリしたわ」
「本当に全く食べなかったわけじゃなかったけど……まともの食事は取ってなかったから……あの……助かった、あと心配かけてゴメン」
「ほんとだよー、もー!連絡しても既読無視するしー」
「申しわけない……」
「もう、いいけどね。明日もいっぱい観光して美味しいもの食べるよー!」
「イェーイ!」
温泉を堪能した後……旅館の夕食に舌鼓をうち、いい感じにお酒も入ったところで……絡み酒から始まり、笑い上戸、泣き上戸、怒り上戸そのすべてを網羅する勢いでユウコにはたくさん話を聞いてもらった。
……気付くと、もう朝になっていた。
いつ寝たのか全く覚えてないが、お布団にはしっかり入っていた。
「あ、起きた?」
「……あ、はい。起き……起きました……はい」
既に起きて支度をはじめていたユウコは、困ったような……少し呆れたような優しい顔を私に向ける。昨日の失態(絡み酒等)のせいもあって寝ぼけながらも敬語調で返事をする。
……色々と、申し訳ない……親友よ。
「……なんか……すんません……」
「え?……なんか言った?」
「……ううん、ありがと」
「なにそれ?……ほら!顔洗っても支度して。朝ご飯食べに行くよっ!」
「うん」
支度を済ましチェックアウトして旅館を後にし、レビューが高く有名なお店へ向かう。その後も観光名所をひたすら巡る女2人旅を満喫……
……その最中……。
「あ!あれ見て!鳥居ある、神社あるよ?参拝してく?」
「嫌です!」
「なんでよー!?」
ユウコが神社を指差して、お参りを提案するが……即答でお断りした。ユウコは不満を口にする。
「ユウコさん?ご覧ください、目の前に見えるこの階段の数を!足が死んでしまいます」
「あらノゾミさん?あなた最近、運動不足だと仰ってましたよね?このくらいの石段の1つも登れないようでは次の健康診断に引っかかりますよ?」
「う!ぐぬぬぬ」(痛いところを!)
神社(神聖なもの)の前だからか、妙に丁寧な口調で話す。それにつられてユウコも妙な口調に。ユウコは更に続ける。
「それにさ……こんな時くらい神社で〈お願い〉しても良いんじゃない?願掛けっていうかさ……良いことがあるように願ってもいいじゃん?ノゾミには元気でいてほしいよ……」
……ユウコにそんなこと言われたら断れるわけないじゃん……ズルいなぁ。
「うん。行こっか」
「よっしゃ!」
2人は石段を登る。
「……真ん中……ハァ……ハァ……、通っちゃ……ハァ……ハァ…………ダメなんだっけ?……」
「……え?……ハァ……ハァ…………そうなの?ユウコ……そうゆうの……ハァ……詳しいの?……」
「……ハァ……いや……知らんけど……ハァ……ハァ……」
「……ハァ……ハァ……なんじゃ……そりゃ……」
2人とも息絶え絶えになりながら石段の中腹まで登ってきた。ユウコの様子を見る限り、運動不足はお互い様だったようだ。
そんなスローペースな私達の横を快活な老夫婦がしっかりとした足取りで追い抜いていく。それを横目に見て……
「マジかよ」
「マジかよ」
仲良くハモった。
そうこうしている内に私達は石段を登りきって境内に到着した。




