第9話 決戦!!黒竜
ガキンッ!
災厄のドラゴンの顎が閉じた。
「……え?」
ドラゴンの鋭い牙は空を噛んでいた。
「大丈夫か、リナ」
聞き覚えのある声。
リナがゆっくりと目を開ける。
「リョージ……!?」
息を切らせ、汗を浮かべながら――でも、しっかりとリナを抱きしめている。
「リョージ……なんで……」
「嫌な予感がしたんだ」
嘘です。神チートがリナのピンチを感知してくれました。
それにしても《災厄のドラゴン》はもうヌッ殺したはずでは?
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【回答】
神チート〈ver.0.3.0β〉:元から二匹いたと考えるのが妥当。
先日撃退したのはメス、こちらの個体はオスのためツガイであった可能性大。
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なるほど。
リョージはリナを地面に下ろした。
「全速力でただいま」
にこやかに微笑んでいたリョージの目は
ギン!!
振り向きざま、ドラゴンを睨んだ。
「もう、大丈夫だ」
ドラゴンが咆哮する。
「グオオオオオ!」
このいと小さき人間ごときめが、己の獲物をかっさらったことに怒っているのだろう。
「ふざけるな。リナは俺のもんだっつーの」
思わず言葉が口から漏れた。リナの顔が一瞬にして紅潮した。
「リナ、ペータのとこにいけ、トカゲの親玉は俺が止めてやる。みんなの仇を撃て!」
「リョージ……」
リナを逃がし、空気を読まずにリョージの頭を丸かじりに来たドラゴンの横っ面を――
ベシィ!
拳固で殴りつけた。
ボゴオォオん!
黒竜の顔面は無様に地面に突き刺さり。
ド派手に石畳の欠片が飛び散った。
「まずはリナをかわいがってくれた分だ」
脳を揺さぶられ朦朧とした災厄のドラゴンのどてっぱらに。
「これは村を壊した分」
ドボォオオ!
ヤクザキックを叩き込む。
ゴボオォ!
口から汚い体液をまき散らしながらグワングワンと二転三転するドラゴンの巨体。
石壁に激突して悲鳴を上げた所を追い込む。
ガッ!
ドラゴンの翼の根っこをつかみ――
「ペータとリナの父ちゃんの分!」
メリメリメリメリ――――
あまりの激痛に暴れまわり咆哮するドラゴンを無理矢理に押さえつけ、翼を毟り取った。
「こっちは母ちゃんの分な」
当然もう一枚も素手で根っこから毟る。
これで名実ともにトカゲの親玉だな、災厄の……なんだっけ?
何でもいい! 神チート! こいつを動けないようにしてくれ!
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【スキル発動】
神チート〈ver.0.3.0β〉:敵対存在の行動制限を実行します。
対象:災厄のドラゴン
魔法適正:ALL 適用
魔法取得
実行
制限時間:43秒
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ドラゴンに向けて開かれたリョージの手の平を中心に半径一メートルほどの魔法陣が展開され、そこから無数の光の鎖が放たれた。
無数の鎖は、災厄のドラゴンに絡みつき。足を、首を、全身を拘束し――
「グオオオオオ!?」
まさしく貼り付け状態のドラゴンが完成した。
「今だ、ペータ! リナ! 仇を取れ!」
ペータが照準器を覗き。リナがその体を支えていた。
ダンさんも、ニックも、ジャンも、ミルフェも、ケッチンも――
みんなが、兄妹を見つめている。
「お父ちゃん、お母ちゃん……!」
ペータが引き金を引いた。
巨大な鋼の矢が放たれ、一直線に災厄のドラゴンへ走り――心臓を、貫いた。
「ギギャアアアアアアアアアッ!」
断末魔の叫びが延々と空に響き渡った。
光の鎖が解けた。黒竜は膝からくずれ落ちた。村の中央広場の地面が大きく揺れた。
黒竜は二度と動かなかった。
静寂。
そして――
「やった……やったぞおおおおお!」
村人たちの歓声が爆発した。
ペータが膝をついた。
「………………やっと……」
ずっと溜め込んでいた涙が、溢れ出していた。
村人たちがペータを囲む。
「ペータ! やったな!」
「リナも、よくがんばった!」
村長がペータの肩に手を置いた。
「じいちゃん……」
「お前の覚悟、確かに見させてもらった」
ペータが涙を拭い、立ち上がった。その顔には、吹っ切れたような清々しさがあった。
「……ああ、俺はこの村を守る。お父……親父やお袋みたいになってみせる」
リナが駆け寄ってきて、ペータに抱きついた。
「兄ちゃん……兄ちゃん……!」
「おう、心配かけたな」
兄妹が抱き合って泣く姿を見て、リョージの鼻の奥がツンと熱くなった。
――村を上げての宴が始まった。
翌朝、リョージは改めて村の出口に立った。
「さて、今度こそ行かせてもらいます」
ペータが近づいてきた。いつもの軽い笑みが戻っている。だが、その奥に宿る光は以前とは違っていた。
「リョージ、ありがとな」
「俺は動きを止めただけだ。仕留めたのはお前だろ」
「それでもだ。お前がいなきゃ、俺たちは一生あいつに怯えて生きてた」
昨夜何度も繰り返した言葉をまた繰り返した。
ペータが手を差し出した。
「次に会う時は、もう少しマシになってるつもりだ。胸張って迎えてやるから、お前も大冒険者になって帰ってこいよ」
「ああ、約束する」
がっちりと握手を交わした。
リョージとペータを見比べながら、村長が微笑んで言った。
「おかげでどうやら楽隠居ができそうじゃ、重ね重ね礼を言わせてもらうぞリョージ」
「はい。ありがとうございます」
そしてリナが、リョージの前に立った。
「リョージ」
「ああ」
「いっぱい冒険してきてね。話、楽しみにしてる」
「任せろ」
「絶対、帰ってきてね」
「約束した。必ず戻る」
リナが背伸びをして、頬にキスをした。昨夜ベッドで交わした熱い言葉がよみがえってくる。
「行ってらっしゃい、リョージ」
「行ってくる、リナ」
村人たちが手を振る中、リョージは歩き出した。
何度も振り返る。リナが手を振っている。ペータが、村長が、村人たちが、見送ってくれている。
胸にあるのは寂しさじゃない。
温かさと、これからへのワクワクだ。
さあ、世界よ待っていろ。
まずは商都リベルタで冒険者登録をしよう。
そこからどんな出会いが待っているのか。どんな敵と戦うのか。どんな世界が広がっているのか。
考えるだけで胸が躍る。
リョージは再び地平線に向かって歩き始めた。
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