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【完結】異世界転生したんだが神から貰った最強スキル【神チート】がクソ仕様  作者: Darjack
第4章

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第57話 つなぐ

夢の中にいた。

あたたかいふわふわとした世界の中でリョージは漂っていた。


ズタボロにされた体の痛みは感じない。

体が動かない、動かそうという意思が湧き出さない。

ただ、心地よいぬくもりだけがある。

すべてが遠くに霞んでいる。


このままあたたかな泥濘の中に沈み込み、永遠に眠ってしまえたらどんなに幸せだろう。

このままゆっくりと意識を手放して——。


「リョージ……」


誰かの声が聞こえた。

ドクリと心臓が高鳴る。多分、この声の主は——。

鉛のように重い瞼をこじ開けるように目を開いた。


「ル、ルーシー……」


ルーシーは一糸まとわぬ姿でふわりと宙に浮いていた。

眩しいほどに白く磨き抜かれた肌、つい見惚れてしまった。

裸の女の子を見つめている自分に気づき。


「ご、ごめん——」

慌てて目を閉じた。


「だいじょうぶ」

あたたかいルーシーの体がリョージに覆いかぶさってきた、いつの間にかリョージも裸だ。


縋り付くルーシーをリョージは抱きしめた。

「ごめんなさい、リョージ。私のせいで……貴方を危険な目に遭わせてしまった」

「違う、俺が勝手に……」

「いいえ」

ルーシーが首を横に振る。

「貴方は私を守ると言ってくれた。その言葉、嬉しかった」


ルーシーの顔が近い、心臓がバクバクと波打つのが分かる。

「だから今度は私が貴方を癒す番」

ルーシーの唇がリョージの唇に触れた。


温かな光が流れ込んでくる。

凍てついた体に、少しずつ体温が戻ってくる。

ズタボロにされたリョージの体に少しだけ人間の感覚が戻ってきた。

ああ、俺、生きてる——


「やっぱりこれは夢か」

「夢?……そうかもしれないわね」


屈託のない笑顔でルーシーは微笑んだ。

ルーシーの体がリョージにゆっくりと溶け込むように重なり一体化していく。

「これは……」

「房中術……と言うらしいわ。今あなたの本当の体は死の淵に居る、私の生命力をあなたに分けているの」

「それは、君が危険じゃないのか?」


縋る瞳で見つめるリョージに、ルーシーの瞳が潤む。

「貴方は、私の心は私のものだと言ってくれた」

ルーシーの温もりが、さらに深く、奥に深く、染み込んでくる。

「王女である私は。国のために生きるものだと育てられてきました。でも——」


「あなたが、そうじゃないと教えてくれた」

ルーシーの体温が、リョージの傷ついた魂をゆっくりと癒していく。


ただ、温かさだけがある。


◇◆◇


まどろみの中から蘇る意識。


熱く契りを交わしたルーシーの姿を探す。

ただ、ルーシーの体温さが残滓となって、胸の芯から全身へ力を沸き立たせている。

自分の中にあるルーシーを感じながら。


「……リョージ」

次に聞こえてきたのは、静かな少女の声だった。


目を開けると、黒い肌の魔族が浮かんでいた。

白に近い金絹色の髪につぶらな翡翠の瞳、先のとがった耳が見える。

頭に角はなかった……この声はまさか。


どうみてもダークエルフな少女は、無表情でリョージを見下ろしていた。

「シャンドゥ……?」

少女は頷いた。


「君が……俺の命を繋いでくれたのか」

ふたたびシャンドゥが頷く。


ルーシーは激しく愛を交わした後のまどろみの中で、魔王の元から皆を逃がしてくれたのは魔王の娘であるゼノヴィアとシャンドゥであったと伝えてくれていた。


「ゼノヴィア様に力を貸してもらいたい」

言葉少なに、それでも真摯な瞳で告げる。


「ゼノヴィア様は人間と魔族は共に理解し合い、暮らしていけると信じている」

リョージは少し考えて言った。


「……いいのか? 魔王に対する反逆なんじゃないのか?」

曲がりなりにも四天王なんだから……魔王に逆らってしまったら。


「【呪】の一族は長年魔族の中で虐げられてきた。それを保護してくれた亡き魔王妃様と、その遺志を引き継いだゼノヴィア様に忠誠を誓っている。魔族として働くことと魔王様への直接の忠誠は違う」

「……そうか」


やさしく微笑むリョージをジッと見つめていたシャンドゥは。

「アグレシアやリリアの気持ちが分かった、……かもしれない」

ぽつりとつぶやいた。


「リョージ。お前の魂は光骸核ルクス・アルマトゥーラに破壊された夜骸核ノクス・アルマトゥーラと同期していたため共に崩壊しかけている。ルーシーの魂の大半を使ってなんとか現世に繋ぎとめられたが、このままではいつ分解してもおかしくない」


シャンドゥが恐ろしいことを言い出した。

「ルーシーの繋ぎとめた魂をボクの房中術で包み込み、皆が肉付けをする」

「……房中術って……何だ?」

シャンドゥの頬がほのかに赤みを帯びたような気がした。

「……愛を奇跡に変える力だ」


照れくさそうにしながらも褐色の唇がリョージの唇に重なった。

一瞬戸惑ったリョージだったが、シャンドゥとの接触点から流れ込んでくるあたたかく優しい波動が心地よく全身に染み込んでくる。


心臓の鼓動がやけに大きく感じる。

さっきまでルーシーのことで頭がいっぱいで。

リナ、ザーラ、サラ、リリア、エレナに新たに妻に迎えたい女性がいることを伝えなければと思っていたのに。


「シャンドゥ……俺……」

「勘違いするな……ゼノヴィア様のためだ……」

リョージはシャンドゥをそっと抱きしめた。


◇◆◇


魂を溶け合わせ練り上げるようなシャンドゥとのひととき。

そしてしばらくのまどろみ。


体の表面がほのかに熱を帯びているようだ。

自分の輪郭を感じる。


ルーシーが心臓をくれた。

シャンドゥは形をくれた。


そして。

腹の奥底にひんやりと冷たい感覚が広がってくる。

酔いを醒ますように広がるその感触はやがて全身から体表に浮かび上がり。

見覚えのある姿を形づくった。


「——フリーゼ……さん」


透けるような白い肌の【氷】の四天王。

フリーゼの姿が浮かび上がった。

ぴたりと重なった肌感覚は、フリーゼが一糸も纏っていないことを感じさせた。


「……若くはないけれど、将来の娘の旦那様に力を貸すわ」

すこし恥ずかしそうにはにかむ姿は少女のようだった。

「いえ……大丈夫なんですか?」

フリーゼは元人妻なのだ。このような状態になっていいのだろうか。

「フフ……今回ジョーエンのこと少しは見直したけれど、よりを戻したわけではないのよ? それとも一人目でなくては嫌?」

美しい顔で意地の悪いことを言うフリーゼに慌てて否定した。


「いえ……その、フリーゼ……さんはとても綺麗なので」

ちょっと不謹慎な感情が沸き上がってしまう。

「ならば、私にもあなたの復活に協力させて」

まさか——ルーシーやシャンドゥと交わしたように?

「あの……アグレシアは……」

彼女はリョージを諦めたのだろうか?


「?……ああ、そういうことを気にする地域で育ったのね?」

「……」

「気にしないで、この辺りではそんなこと誰も気にしないわよ」

フリーゼの唇がリョージの言葉を塞いだ。


◇◆◇


はぁ——はぁ——はぁ——


めくるめくスペクタクルの余韻にリョージは満たされていた。


フリーゼの体温が、まだ体の芯に残っていた。

熟された女性の温もりとはこういうものなのかと、黄昏た意識の端で静かに思う。


ばちり、と。

火花がはじけ散るような感覚に静穏は覚めた。

強く、強く唇を舐るのは炎と氷が入り混じった赤青の髪。

フリーゼによく似ているが、幾分あどけなさの残る顔立ち。

碧と紅蓮の瞳にはもう少女のではない女の光が宿っていた。


一糸まとわぬ姿で、リョージを熱く強く抱きしめている。

「アグレシア……」

「リョージ……リョージ……好きだよ……」


我武者羅に降り注ぐ接吻の嵐は灼熱の焼き印のように、リョージの全身を沸き立たせた。

フリーゼは晴れの日にひねもすのたりと包みたる、静なるおおきな揺り篭の大海原。

片や。激しく、もっと強く、迸る冬の嵐。アグレシアの潮津波。

若さに任せた暴風雨の奔流のような求愛に、リョージの生命は極限まで高ぶり滾った。

安心の完結保証付きです。


毎日20:00更新予定。


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