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【完結】異世界転生したんだが神から貰った最強スキル【神チート】がクソ仕様  作者: Darjack
第4章

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第55話 黒と白

(まったく……これが「最低限——」だと?)


内心で魔王は微笑んでいた。


王女は国のために身を捧げる覚悟を持ち、冒険者はその王女を命がけで守ろうとする。

打算も策略もない、ただ真っ直ぐな意志。

古代魔族の時代から、人間は弱いくせに、狡猾で、信用ならぬ存在だと思っていたが——


◇◆◇


城の外、魔王軍全軍の前で魔王は宣言した。


「皆のものよく聞け、王国より和睦の使者が着いた。私に婚姻同盟を持ちかけてきたのだ。まさしく我々は戦いを持たずして勝利したも同然である」


天空には魔王の姿が投射されている。声も拡声の魔道具を使っているのか。

空を飛んでいる目玉に羽の生えたような魔物がカメラになっているらしい。


「うおおおおおおおおおおお!」

魔王軍たちは意気揚々と勝利宣言する魔王に歓喜の声をあげている。

「当然食糧の上納も条件に含まれている、しかし戦わずして勝利を得るなどということは誇りある魔族の流儀ではない」


脳筋宣言。草しか生えない。


「人間の和平の使者はたった二人で死地の中を乗り越え、魔王城にまでたどり着き、我に謁見を求めてきた。人間風情にしてはあっぱれな者たちである。よって我はこの者たちにチャンスを与えたい」


天空にリョージたちの映像が投射された。魔王軍……観客の歓声が感心したという風に変わる。

魔王はつづけた。


「人間代表はリョージ。魔族代表は当然私だ」


一瞬、魔王軍の群衆は静まり返り、ブーイングが聞こえて来た。どんだけ戦いたいんだよキミら。


「ここにいる王国息女ルシアンナ・ディア=ルミナセリオンは第七代皇帝ディアボルス=マグヌス・ヴァル=ソラエルの皇太子アウレリウス=ノクス・ヴァル=アザエル殿下の血を受け継ぎし人間よ。古代魔帝の血縁を紡がぬ我を、裏では簒奪者と謗り王権を認めぬ者たちも、古代皇帝の血を受け継ぎし妃を迎えその子を王位に据えるのならば納得できよう。妻には娶った上で同盟を結ぶのか、戦勝の証として質草に据えるか——」


ひでぇ……どちらにしろルーシーは人身御供か。


「さて、リョージ。地の利、人の和、そしてルミナス・ハートのもたらす天の時は我の圧倒的優位だが。この状況で天命をひっくり返すことができるのか? 異端の冒険者リョージよ」






リョージたちは城の外に出た。周囲は軍に囲まれ、当然逃げることなどできない。

魔王とリョージの戦いは全天へ中継されるようだ。


「戦いの余波に巻き込まれ泣きを入れる魔族などいない、遠慮するなリョージ」


どこまで本気か知らないけれど、当然リョージも空気なんて読まない。


「魔王たる我とリョージの一騎打ちを行う。私が勝てばルシアンナ姫を人質として娶った上で、予定通り人間領への侵攻を開始する。リョージが勝てば婚姻同盟を受け入れ侵攻は中止となる。なおその場合、魔王の名においてリョージの望みを何でも一つ叶えてやろう。このままではリョージ自身は勝っても何も旨みがないからな」

「……」


これは……。

魔王陛下。さすがに懐は深かった。

ルーシーの魔王妃ルートを回避するには。

リョージが魔王に勝ち、ルーシーを娶ると望むしかない。


ルーシーの顔色が悪い。

自分と王国の運命がリョージの双肩にかかっているのだから無理もない。


胸の奥が熱くなる。

俺、魔王に勝ったら、ルーシーにプロポーズするんだ。


「さてと、リョージ。一介の人間の冒険者風情に魔王が遮二無二かかるというのも見苦しい。前途ある人間の若者に一発逆転のチャンスを与えたいと思うが、魔族の皆はどう思うか?」


「うおおおおおおおおおおお!」

相変わらず周囲から怒涛の歓声が響き渡る。

魔王は耳に片手を当て、群衆の声に耳を傾ける仕草。

「うむ、そうだろう。そうだろう。魔族最強たるもの、それが魔王だ。リョージよ先に一発殴らせてやろう。もしそれを受け止め切れなかったらば私の負けで良い」


「うおおおおおおおおおおお!」

またもや歓声が上がる。

もはや賛否など分かろうはずもない。

まぁリョージとしては舐め切ってもらってありがたいことこの上ない。


「本気の全力で行きますが、後悔しないでくださいよ」

「もちろんだとも」

よほど自信があるのだろう。

魔王は微笑みを崩さず腰に軽く手を添えている。


瞬着!


いきなりノクス・アルマトゥーラを起動。

「ふぉおおおおおおおおおおおおお!」

黒い鎧の右の拳に、ありったけの魔力を一点集中。


「! ちょっと待て! リョージ! その強化鎧殻は古代魔太子の——」

魔王ヴァルゼノスが何か叫んでいる。

はぁ? 聞こえんなぁ〜。


ノクス・アルマトゥーラ! 魔力臨界120%! いったれや!

ダッシュで一瞬に魔王の懐に飛び込み。


「うぉおおおおおおおおおおおおお! スーパーノクス・インパクト!」


ドゴン!


魔王のボディに渾身の右パンチを叩き込んだった。


——みしり。


右拳に確固たる手応えを感じる。

取った! どぉ——


そのまま振り抜——


——けなかった。

ダッシュの余波で城の床が削れ周囲に土煙がもうもうと立ち込める中。


ギリッ


ノクス・アルマトゥーラの漆黒の拳は純白の輝きを放つ手甲に掴み取られていた。

インパクトの瞬間、周囲の空間は確かに歪んでいた。


「やれやれ、まさかアウレリウス魔太子殿下の鎧殻アルマトゥーラが、いまだに人間の下で受け継がれていたとは……」


少し高揚した魔王の声が響いた。

——まさか。

ノクス・アルマトゥーラの超臨界パンチが効かなかった?!


「ジョーエンやボルガが勝てぬわけだ……だがな、リョージ」

宙舞う埃が次第に晴れ、姿を現した魔王は全身を純白の鎧に包まれていた。


その鎧は色を除いては夜鎧殻ノクス・アルマトゥーラとそっくりだった。

「魔太子殿下の鎧殻アルマトゥーラは所詮、皇帝用の鎧殻アルマトゥーラの試作品にすぎん。完成形である皇帝の鎧殻。煌鎧殻こうがいかくルクス・アルマトゥーラには及ばない!」

「くっ……!」


掴まれた拳を振りほどこうと力を込めるが、ルクス・アルマトゥーラの手甲はびくともしない。

魔王が軽く腕を振るった。

「ぬっ——!」

リョージの体が宙を舞う。

背中から地面に叩きつけられ、肺から空気が抜けた。

「ごふうっ!」


ゴロゴロと自分から転がり、魔王から距離を取ってようやく体勢を立て直す。

(速い……!ノクス・アルマトゥーラの機動力を上回ってる……!)


魔王はゆったりとした足取りでリョージに近づいてくる。余裕の表情だ。

「さて、一発は殴らせてやった。次は私の番だ」

瞬間、魔王の姿が消えた。


「——っ!」

本能が警鐘を鳴らす。左側から!

咄嗟に腕でガードを固める。


ドガァン!


魔王の拳がリョージの左腕を捉えた。ノクス・アルマトゥーラの装甲が軋む。

「がはっ……!」

吹き飛ばされる。数十メートル後方に弾き飛ばされ、地面を転がった。


(腕が……しびれて動かない……!)

左半身の感覚が……ない。

______________________

【スキル発動】

神チート〈ver.3.2.1νἀⅲ〉:緊急事態観測


アルマトゥーラの防御値が相殺されます

絶対回避推奨

Lv.178

HP:12,956/17,800

MP:12,092/17,800

_______________________

神チートの警告が遅い?!


魔王の一撃は装甲を越えて肉体にダメージを伝えてきている。


「立て、リョージ。まだ終わらんぞ」


安心の完結保証付きです。


毎日20:00更新予定。


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