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【完結】異世界転生したんだが神から貰った最強スキル【神チート】がクソ仕様  作者: Darjack
第1章

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第5話 森にも事情があってな

 リナのボウガンが群れを狙っている。

 リョージは村長から借りた剣を構える。


 リナの所へゴブリンを向かわせなければいいだろう。

 リナだって腰に短剣をぶら下げている。


 4、5匹のゴブリンに囲まれたってすぐには殺られないはずだ。


 いざとなったら頼むぞ神チート(他力本願)


 リナは微かな合図とともにボウガンの引き金を引いた。


「ギャーーーー!!」


 一番体格のいいゴブリンの背中に矢が突き立った。


「「「「グギャーーーー!!」」」」


 残りのゴブリンたちはさらに大きな悲鳴を上げ。


 一目散に逃げ出した。


「あれ?」


 とんだ拍子抜けだ。


「まあ、こうなると思ってたけどね」


 リナは微笑みながらボウガンを下ろした。


「ゴブリンは臆病だから、自分たちより強い敵にはあまり向かってこないよ」


 なるほど。

 下手に姿を見せて、こちらの人数が少なかったり弱そうだったりすれば襲ってくるという訳か。


「あと、こっちに女がいると向かってくることが多いよ」


 リョージの考えを見透かしたように、リナが苦笑を浮かべた。


 まあ、お約束通りこの世界のゴブリンもそっち方面はお盛んってことか。


「――って、ダメじゃん! リナ! 危ないよ」

「ふふっ、リョージがいてくれれば大丈夫だよ。強そうだもん」


 屈託のない笑みだ。

 複雑な気分。


 そんなリョージを置き去りにして、リナは倒したゴブリンの元へさっさと向かった。

 まだピクピクと痙攣しているゴブリンの首筋にナイフを当て——(見せられないよ!)


 リョージは雨に濡れた獣のような悪臭にえづきながら解体を手伝う。


 討伐証明の右耳を切り取り、胸を切り裂いて心臓部分にある魔核を取り出す。


「うわっ!」


 魔核を取り出したゴブリンの身体から黒い霧状の粒子が湧き出し、ほんの数十秒で霧のように消えた。


 ドラゴンの最期に似ている。

 こっちの世界の魔物はこうやって消えるのか。


 残された半分腐った皮鎧とぼろぼろの棍棒を手渡された。

「森に置いておくとまたゴブリンに使われちゃうからね。村へ持ち帰って処分するのよ」

 なるほど、合理的だ。


 リュックにしまうふりをしながら無限収納に放り込んでおいた。

 重いし臭いし。


 逃げたゴブリンたちとは反対方向へ足を進める。

 しばらくしてリナが別のゴブリンの足跡を見つけた。


 次の群れは三匹ほどだったが、今度は先にリナの姿を見つけられてしまった。

 やつらも単なるバカではないようだ。


「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~~」


 リナに興奮したのか、ゴブリンたちは嫌な奇声を上げながら襲いかかってきた。


「リナ、下がってろ!」

「了解!」


 リョージは剣を振り上げ駆け出した。


「うおおおおおお!」


 雄叫びに呼応するようにステータスウィンドウが光る。


 やばい!


 討伐部位を取らなきゃいけないんだ。

 いきなり細切れはやめてくれよ?


 手加減しろ、手加減。

 _______________________

【スキル発動】

 神チート〈ver.0.2.0β〉(手加減モード):敵対存在を殲滅します。

 推定時間:0.3秒

 _______________________


 次の瞬間、リョージの身体が自動で動いた。

 一歩踏み込み、剣を振り下ろす。


 ――ドガァッ! バキィッ! ザン!


 三匹まとめて叩き斬った。


「……終わった」


 さすが神のスキルだ。

 手加減もできる。

 不意の再起動さえなければめっちゃ使えるんじゃないか?


「……すごーい!」


 リナが目を丸くしていた。


「リョージ、めちゃくちゃ強いね! 全然見えなかったよ」

「まあ、運が良かったんだと思う」

「運じゃないよ! 絶対強いよ!」


 二人で森の中を歩き回った。


 ホーンラビット、フォレストスネーク、ゴブリン、ロックモール(岩のような皮膚のモグラ)、オオカミ、オーク、トレントスプラウト(トレントの若木)。次々と魔物が現れたが、全て一撃で倒した。


 リナは最初こそ驚いていたが、次第に慣れてきたようだ。


「リョージ、本当にすごいね。あたし、ちょっと役に立ててないかも」


「いや、リナがいてくれるだけで心強いし、俺一人だったらこんなに魔物を見つけられてない」

「本当?」

「ああ」


 リナが嬉しそうに笑った。


 ゴブリンよりは強い敵――と言っても神チートの前では誤差。

 二足歩行の猪のようなオークを倒し、討伐部位と可食部位(昨夜のうまい肉の正体)を切り取って黒霧に変えた。


 そろそろ日も傾いてきたので、この日はここまでとなった。

 大漁大漁。



 翌朝。

 村長の家で朝食を終えると、リナが目を輝かせて言った。


「リョージ、今日も森に行こう! 昨日の成果、じいちゃんもすっごく喜んでたし」


 村長は昨夜、リョージたちが持ち帰った大量の討伐証明と魔核を見て驚愕していた。


 普段なら一週間かけて冒険者が狩る量を、半日で仕留めたのだから当然だ。


「ああ、行こう」


 二日目の森は前日よりさらに順調だった。


 リナの道案内とリョージの戦闘力の組み合わせは完璧だ。


 ゴブリンの群れもオオカミの群れも、トレント(成木)も次々と倒していく。


 トレントなんて薪にしかならないと思っていた。

 実は枝や切れ端を煮込むとおいしい出汁がとれるんだそうだ。


 あのうまいスープのダシがトレントだと知って少しだけスンとなるなどした。


 午後、森の入り口近くまで戻ってきたとき――


「ようリナ、リョージ」


 声をかけられて振り向くと、二人の青年が弓を担いで立っていた。


「ニック、ジャン。狩りの帰り?」


 リナが屈託のない笑顔で聞く。


「まあな」


 二人とも歓迎の宴の時、挨拶されたっけ。


 ニックの表情が少し硬い。

 ジャンも笑顔だが、どこか遠慮がちだ。


「……なあ、ちょっといいか?」


 ニックがリョージの肩に手を置いた。


「昨日も今日も、お前が森でバンバン魔物を狩ってるって聞いた」

「ああ、村長に頼まれて」

「それは分かってる。だけどな……」


 ニックが言葉を選ぶように間を置いた。


「俺たちはこの森の狩りで生活してるんだ。魔物の素材も、肉もな」


 ああ、そういうことか。


「お前が根こそぎ狩っちまったら、俺たちの仕事がなくなる。魔物は自然発生するけど、そんなにすぐには増えないんだよ」


 ジャンが申し訳なさそうに付け加えた。


「ごめんなさい、文句を言いたいわけじゃないんです。ただ……」

「いや、こっちこそごめん。そこまで考えてなかった」


 リョージは素直に謝った。

 確かに、一方的に狩りまくったら、彼らの生活に影響が出る。


「もう少し稼いだら村を出るから、今日はこれで終わりにするよ」

「本当か?」


 ニックの表情が少し和らいだ。


「ああ。迷惑かけて悪かった」

「いや、全財産失ったお前の事情も分かるんだ。ただ、俺たちにも生活があってな」

「分かってる。気をつけるよ」


 ニックが肩を叩いた。


「すまないな、よろしく頼む」


 ジャンも深々と頭を下げた。


「じゃあな、リョージ。また村で会おう」

 二人は森の奥へ消えていった。


「……ごめんね、リョージ。あたし、そこまで考えてなかった」


 リナが申し訳なさそうに言った。


「いや、俺も気づかなかった。でも、しばらくしたら村を出るから大丈夫だよ」

「うん……」


 リナが少し寂しそうな顔をした。


「リョージ、本当に強いね。あたし、ちょっと見直しちゃった」

「見直しちゃった、ってことは昨日まではどう思ってたんだよ」

「えー? 内緒」


 リナがいたずらっぽく笑う。

 その笑顔を見ていると、リョージの胸がじんわりと温かくなった。




 気づけばかなり森の奥深くまで来ていた。


「……リョージ、ちょっと待って」


 リナが急に立ち止まり、周囲を警戒するように見回した。


「どうした?」

「ここ、魔気が濃すぎる。あたしたち、森の奥に来すぎちゃったかも」


 なんとなくデート気分で歩いていて気づかなかった。

 確かにここは空気が重い。


 木々の枝も不気味に絡み合い、妙な静けさが支配していた。


「引き返そう」


 リョージがそう言った瞬間――

お読みいただきありがとうございます。


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