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【完結】異世界転生したんだが神から貰った最強スキル【神チート】がクソ仕様  作者: Darjack
第2章

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第20話 絆

「全軍、商都へ戻るぞ!」


 バルトス衛兵隊長の号令が森に響いた。


 討伐隊は一斉に動き出す。

 走る、走る。

 誰もが必死の形相だった。


 リョージも駆けた。

 胸の奥に嫌な予感が渦巻いていた。


(商都が襲われた――)


 まさか、とは思わない。

 この世界に来てから、まさかの連続を経験してきた。

 災厄のドラゴン、エルダー・トレント、そして黒狼団。


(でも、城壁の中だ。そう簡単には)


 その思考を振り払うように、リョージは足を速めた。


 森を抜け、街道に出る。

 商都リベルタの城壁が遠くに見えた。

 門は開いている。

 衛兵が慌ただしく動いているのが見えた。


「バルトス隊長!」


 門番が駆け寄ってくる。


「街の状況は?」

「盗賊団は既に撤退しました。ですが――」


 門番は言葉を濁した。


「被害は?」

「今のところ死者は確認できていません。負傷者は多数。それに、略奪と拉致が」


 バルトスが舌打ちした。


「拉致だと?」

「はい、何人か連れ去られたようです」


 ギリッ

 歯が鳴った、無意識に食いしばっていた。

 ザーラやサラの顔が脳裏に浮かぶ。


(たのむ、無事でいてくれ)


 討伐隊は街へと入った。

 メインストリートには壊された露店、割れた壺、散乱した商品が転がっていた。

 人々は呆然と立ち尽くし、あるいは後片付けに追われていた。


「ギルドへ急ぐぞ」


 ガルドがリョージに声をかけた。


 ギルドの外壁には矢の痕がいくつも残っていた。


 扉を開ける。


「サラ!」


 思わず叫んでいた。


 受付カウンターの脇に、見慣れた眼鏡の女性が立っていた。

 だが、その顔は青ざめ、瞳には焦点がない。


「リョージ、様」


 サラが顔を上げた。

 その表情は、まるで何かが壊れてしまったように虚ろだった。


「無事だったんだな!」


 リョージは駆け寄った。


「無事……?」


 サラの声が震えている。

 いや、震えているのは声だけではない。

 彼女の全身が、小刻みに震えていた。


「無事なんかじゃ……」


「サラ?」

「すみません……」


 それだけ言って口元を抑えた。

 何か叫びだすのを必死に抑えているかのようだった。


 サラはカウンターの端を掴んで、ようやく立っているように見えた。


 ふらりと膝が崩れかけ、咄嗟に抱きとめた。


 そのままリョージの胸に顔をうずめて嗚咽に震える。


 ガルドが心配そうにリョージを見た。

 だが、何も言わずに頷いた。


「俺は他の連中の報告を聞いてくる。リョージ、サラを頼む」

「ああ」


 サラの嗚咽の間はほんのわずかだった。

 勇気を振り絞るように顔を上げる。

 まだ涙溢れる瞳で、食い入るようにリョージを見つめた。


「……お話が……あります」


 地獄の底から絞り出されて来るような声だった。


 リョージはサラの肩を支え。

 ギルドの奥にある小部屋へと導いた。

 査定の時に使った部屋だ。

 

 再び、ふらつくサラを抱きしめて支える。


「ごめんなさい……ごめんなさい……!」


 サラはリョージの胸に顔を埋めて、絞り出すように言葉を紡いだ。


「私が……私が……!」


「何があったんだ、落ち着いて話してくれ」


 無限収納からブドウ酒の入った水筒を取り出す。

 サラに手渡すがガクガクと手が震え、とても口元にあてがえない。


 くそ、緊急事態だ。


 リョージは自分で水筒を煽る。

 口移しにサラの唇へブドウ酒を流し込んだ。


 びくり。

 と、サラの体が震えた。


 が、両腕はリョージの背中をぎゅっと抱きしめた。


 喉がカラカラに乾いていたことに、やっと気づいたのだろう。


 貪るようにブドウ酒を飲み込む。

 ようやく人心地ついたように、サラは荒い呼吸を無理やりに整え、語り始めた。


「討伐隊が出発した後、しばらくたった頃です」


「突然、盗賊がギルドに押し入ってきて……」


 サラの爪が、リョージの背中に食い込む。

 息が荒い。

 過呼吸になりかけている。


「落ち着いて、ゆっくりでいいから」


 リョージはサラの背中を優しく撫でた。

 数秒の沈黙。

 サラは震えながらも続けた。


「黒狼団だと名乗っていました、留置場を襲って、仲間を解放したと、それから――」

「ギルドに来たんだね」


(仲間を捕まえたのが冒険者だったからか、くそっ、調子に乗ってた俺のせいじゃねぇか!)


 リョージは過去の自分の迂闊さを悔やんだ。


「はい、冒険者たちが戦ってくれました。けど……数が多くて、私も、捕まって、見せしめに——非道い事をするって」


 サラの声が震え、また詰まった。

 断続的に恐怖が甦るのか。


「でも……でも!」


 サラがリョージの体を掴む手に、さらに力が込もった。


「ザーラが……ザーラが!」

「ザーラが?」


「盗賊が、私を捕まえようとした時、ザーラが飛び込んできて『あんたらの仲間を捕まえたのはあたしの男だ』って、『あたしの方が楽しめるでしょ』って、自分から――!」


 サラの声が裏返った。


「私ッ、断らなきゃいけなかったッ! でも、怖くて、怖くて! 体も動かなくて! ただ黙っているしか!」


 あふれる涙がリョージの服を濡らした。


「ザーラは、抵抗も、しないで、でも私は、何も!」


 サラは嗚咽を漏らした。

 それでも、次の言葉は妙に静かだった。


「私が、ズルいから。私が、ちゃんと断らなかったから!」


「サラ――」


「あの人は、いつもそうだった、私を助けるために! それなのに私は!」


「サラ!」


 リョージは彼女の肩を掴んで、正面から向き合った。


「きみのせいじゃない」

「でも!」


「黒狼団だ。ザーラを連れ去ったのも、街を襲ったのも、全部あいつらだ」


 サラは涙に濡れた瞳でリョージを見つめていた。


「キミは何も悪くない。ザーラだって、サラを責めたりしない」

「ザーラを――」


 見開いた目の奥が狂気に似た光で満たされていく。


「なんでもする、私の持っている全部をかけてもいい」


 握る拳に力が入る。


「おねぇちゃんを、あたしのおねぇちゃんをっ……助けて……!」

「まかせろ」


 サラの目が見開かれた。


「本当に……?」

「約束する」


 わずかに正気の光が戻って来るサラの瞳。


「リョージ、様……」


 リョージはサラの背中をやさしく撫でた。


 少しだけ、震えが収まったように感じた。

 もう一度ギュッとサラを抱きしめ、椅子に座らせた。


 サラの手はまだ震えていた。

 それでも、先ほどより震えは小さい。

 顔にも少しずつ血の気が戻ってきていた。


「サラは、ここで冒険者たちをサポートしてくれ。それが今、サラにできることだ」


 何かしていた方がいい、気が紛れる。

 サラが頷くのを待ってから部屋を出た。


 戻ってきた討伐隊のメンバーがいた。

 ガルドがグレンと何か話している。

 レオンたちの姿も見えた。

 皆、疲労と苛立ちの混じった表情だ。


「リョージ」


 ガルドがリョージに気づいた。


「サラは大丈夫か?」

「なんとか」


 リョージは短く答える。


 グレンが険しい表情で言った。


「黒狼団め、衛兵隊の報告によれば、留置場を襲って仲間を解放したらしい。そのまま街中で略奪を繰り返したそうだ」


「侵入経路は?」

「まだわからんようだが、内通者がいた可能性が高い」


 後悔役立たず。

 原因究明は後回しだな。


「リョージ、お前も休め、明日また作戦を練る」


 ガルドがそう言った。


「わかりました」


 リョージは頷いたが、心の中では既に決めている。


 ザーラには時間がない。

 一刻も早く、助け出さねばならない。


 リョージはギルドを出て、宿へと戻った。

 部屋に入り、扉を閉める。


「神チート」


 リョージは小さく呟いた。


「ザーラを探す方法、ある?」

_______________________

【回答】

 神チート〈ver.0.5.5β〉:追跡可能。

 対象:ザーラ

 方法:前夜の接触により体内にアマツカ・リョージの遺伝子が残存。

 追跡精度:高

 推奨行動:即座に追跡開始

_______________________


「遺伝……」


 意味が分かった時、顔がカッと熱くなった。


 準備を整える。

 村長から貰った剣、防具、そして――。


 リョージは窓の外を見た。

 夜の帳が、ゆっくりと降りてきていた。

 リョージは静かに部屋を出た。

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