第15話 冒険者の日常だなぁ
森の入口に到着すると、木々が鬱蒼と茂っていた。
「ここか……」
神チートのナビが、視界の端に表示される。
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【目標設定】
神チート〈ver.0.4.0β〉:ゴブリンの生息地を検索します。
推奨ルート:表示します。
※免責事項(略)
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※……
視界に青い矢印が浮かび上がる。
矢印に従って森の中へ進む。
十分ほど歩いたところで——
「よう、坊主!」
声がした。
振り返ると、見覚えのある茶髪の男。
「レオン……?」
「おう。お前も依頼か?」
レオンの後ろには、二人の冒険者が続いていた。
「こいつら、俺のパーティ。弓使いのミラと、戦士のドランだ」
「よろしく」
「ああ、よろしく」
ミラは黒髪の弓使いで、ドランは大柄な戦士らしい。二人が軽く手を挙げた。
「で、お前は一人なのか?」
「はい」
「……そうか」
レオンが腕を組んだ。
「まあ、D級なら一人でも問題ねえか。だが、森は危険だ。よかったら一緒に回るか?」
「いいんですか?」
「ああ。試験の時は悪かったな。ガルドが認めたんだ、前の実力は本物だってことだ」
レオンがそう言って、肩を叩いた。
「じゃあ、お願いします」
「おう」
◇◆◇
四人で森を進む。
レオンが先頭、ミラが後方、ドランが中央。リョージはその横を歩いた。
「あそこだ」
ミラが木の陰を指差す。
茂みの向こうに、緑色の小柄な影——ゴブリンが五匹、たむろしていた。
「よし。ミラ、一匹引きつけろ。ドランと俺で囲む。リョージは……」
「後ろで見ててくれ」
レオンがそう言った。
だが——
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【警告】
神チート〈ver.0.4.0β〉:敵対存在を検知しました。
種別:ゴブリン×8(背後に3匹追加)
推奨行動:後方の3匹を優先排除
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「待ってください」
リョージは剣を抜いた。
「後ろにも三匹います」
「何だと!?」
レオンが振り返った瞬間、警告通りに背後の茂みが揺れ、ゴブリンが飛び出した。
「ギャギャッ!」
「くそっ!」
レオンが剣を構える。
だが、リョージの方が速かった。
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【スキル発動】
神チート〈ver.0.4.0β〉:最適攻撃を実行します。
推定時間:1.8秒
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一歩踏み込み、剣を振るう。
一匹目、首を斬る。
返す刀で——
二匹目、胴を斬る。
三匹目、跳んで逃げようとした——
「させるか!」
ミラの矢が飛び、ゴブリンの足を射抜いた。
「ありがとうございます!」
リョージは追いつき、斬り捨てた。
「……おい」
レオンが呆然とした声を出す。
だが、それどころじゃなかった。
「ギャギャギャッ!」
前方の五匹が、騒ぎを聞きつけて一斉に襲いかかってきた。
「くそっ、囲まれた!」
「ドラン、左! ミラ、援護!」
レオンが叫ぶ。
乱戦になった。
レオンとドランが前方の三匹を相手にする。
残り二匹が、リョージとミラに向かってくる。
「危ない!」
リョージは一匹を斬り倒し、もう一匹に——
ミラの矢が刺さった。
「助かります!」
「こっちこそ!」
ミラが叫び返す。
数分の激戦。
ようやく、八匹すべてが倒れた。
「ふう……」
レオンが額の汗を拭った。
「助かったぜ、リョージ。背後に気づかなかったら、やられてたかもしれねえ」
「いえ、ミラさんの援護のおかげです」
「お互い様よ」
ミラが微笑んだ。
「しかし……」
ドランがリョージを見た。
「お前、どうやって背後に気づいたんだ?」
「いや、こういう勘はいいんですよ」
チート様のおかげです、とは言えない。
「勘……ねえ」
レオンがじっとりした視線で苦笑する。
「まあ……助かったのは確かだ」
◇◆◇
その後も、森の中を進んだ。
魔物に遭遇するたび、レオンたちと協力して戦った。
ホーンラビットの群れに遭遇したときも——
「うおっ、速い!」
レオンの剣が空を切る。
リョージは素早く踏み込み、二匹を斬り倒した。
「こっちも!」
ドランが一匹を仕留める。
「援護するわ!」
ミラの矢が飛び、逃げようとしたラビットを射抜いた。
「やった!」
「ナイス連携だ!」
レオンが笑う。
オークに遭遇したときは——
「でかいぞ!」
ドランが盾で受け止める。
「今だ!」
レオンが脇腹を斬りつける。
リョージは背後に回り込み、足の腱を斬った。
「ぐおおっ!」
オークが膝をつく。
「とどめ!」
ミラの矢が、オークの首に突き刺さった。
「……強いなぁ、さすがだ……」
リョージが感心すると、レオンが笑った。
「お前もな。いきなりD級スタートってのも納得だ」
◇◆◇
夕方、森を出る頃には——
ゴブリン二十匹、オーク五匹、ホーンラビット十匹、その他の魔物多数。
レオンたちのリュックも、リョージのリュックも、討伐部位と魔核でいっぱいだった。
「……今日は大漁だったな」
レオンがため息をついた。
「リョージの勘のおかげで、獲物が濃かった」
「いえ、レオンさんたちの連携があったからです」
「……お前、本当にいい奴だな」
レオンが肩を叩いた。
「また一緒に狩りに行こうぜ」
「はい」
◇◆◇
ギルドに戻ると、サラが待っていた。
「お帰りなさい、リョージ様。レオン様も」
「ただいま、サラちゃん」
レオンがニヤリと笑った。
「今日はこいつと組んで大漁だ」
「まあ……」
サラがリョージを見た。
「リョージ様、お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
レオンたちが先に報告を済ませ、リョージの番になった。
「では、査定させていただきますね」
サラがリュックの中身を確認する。
その目が、わずかに見開かれた。
「……かなりの量ですね」
「はい。レオンさんたちと一緒だったので」
「そうですか」
サラが手帳にメモを取る。
「あの、サラさん」
「はい?」
リョージはリュックから、ホーンラビットの肉を取り出した。
「これ、良かったら」
「えっ……私に?」
「はい。いつもお世話になってるお礼に。新鮮なうちに渡したくて」
サラの頬が、ほんのり赤く染まった。
「あ、ありがとうございます……」
その手が、わずかに震えている。
「料理、お好きですか?」
「はい……その、あまり自分では作らないので……嬉しいです」
サラが、嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔を見ていると、リョージの胸がじんわりと温かくなった。
後ろの方でレオンとミラがオーク肉をサラに渡すの渡さないので揉めていたが聞かなかったことにした。
◇◆◇
その夜も、月下の酒場へ向かった。
「おっ、リョージ! また来たね」
ザーラがステージから手を振ってくれた。
今夜の踊りも、昨日と同じように情熱的で妖艶だった。
踊りが終わると、ザーラがリョージのテーブルにやってきた。
「どうだった? 今日の踊り」
「すごかった。見とれちゃってた」
「あっはは、素直だねぇ。で、今日はどうだったの? 冒険者のお仕事」
「レオンたちと一緒に狩りをしたよ」
「ああ、サラちゃんにべったりのレオンね」
ザーラがケラケラと笑う。
「どうだった? あいつ」
「いい人だった。連携も上手で、口先だけの人じゃなかったよ」
「へぇ……レオンがねぇ」
ザーラが意外そうな顔をした。
「あいつ、新人には結構厳しいのに。あんた、気に入られたんじゃない?」
「そうかな」
「そうだよ。あんた、人に好かれるタイプだもん」
ザーラがグラスを傾けた。
「ま、調子に乗んなよ? 強い奴ほど、敵に狙われやすいって言うからね」
「……気をつけるよ。教えてくれてありがとう」
「ま、余計なお世話かもだけど」
ザーラが立ち上がった。
「また来てよ。リョージが見てくれると、踊りに力が入るんだ」
「……また来るよ」
「ふふ、楽しみにしてるんだからね」
ザーラがウインクして、別のテーブルへ向かった。
その夜、銀月亭に戻りながら考えた。
サラの嬉しそうな笑顔。
ザーラの心配してくれる言葉。
(二人とも、本当にいい人だな)
ほかほかした思いを胸に抱きながら、ベッドにもぐりこんだ。
◇◆◇
翌日も、依頼をこなした。
街道の護衛、森の魔物討伐、薬草採取——
どの依頼も、チート様の補助があれば難しくなかった。
サラは依頼報告のたび、驚いた顔をしていた。
「リョージ様……本当にすごいですね」
「そんなことないよ」
「いえ、すごいです。こんなに順調に依頼をこなせる新人の方は……初めて見ました」
サラが嬉しそうに笑う。
その笑顔を見ていると、リョージの胸がじんわりと温かくなった。
夜は、月下の酒場でザーラの踊りを見る。
「今日も来たね、リョージ」
「ああ、ザーラの踊りが楽しみでね」
「あっはは、お世辞でも嬉しいわ」
ザーラと他愛ない話をする時間が、心地よかった。
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