chapter.8
「おらおらおらおらっ!」
船の上、やたらめったら発砲する男に、椿は嫌気がさしていた。
ただでさえかなりのボロ船である。船大工の詩苑が一生懸命直してみても、そこかしこにガタが来ているのは明白だ。
「……」
いい加減にしろ、と言う意味も込めて、椿はマシンガンを持って撃ちまくる男の太ももを、無言で撃ち抜いた。
「ぐあっ! やられた!!」
「……バカじゃねぇの」
大袈裟なリアクションとともに倒れ伏す男に、椿は冷めた視線を投げて、そのまま後ろを振り返る。
そこには、一人の男が立っていた。
「……ほぉ……。気づいたか」
「……そんなバカみたいにまっすぐな殺気、気づかない方がおかしいだろ」
椿が応じると、男は楽しそうに口元を歪めた。
「心得てるな、“天空の奏者”」
「……だからバカだって言ってんだ、よッ!」
言うが早いか、椿が『白薔薇』をブッ放した。
「甘いな」
「……」
男はあっさりとそれを避ける。もちろん、椿も当たるとは思っていなくて、今のはただの牽制である。
それさえも気づかないのか、この男は。などと考えながら、彼女は連続して『白薔薇』を撃つ。
「ははっ…そんなやたらめったら撃ったところで、何の意味もないぞ」
(わかっとるわ、ボケ)
椿を嘲笑う男に、椿は心の内で毒づいて、白薔薇を持つ手とは反対の左手を、何の気なしに振った。
「はっ、いくらやっても無駄だと…… !?」
そこではじめて、今まで余裕綽々だった男の顔色が変わる。
椿の左手から放たれたのは、銀光。
「なんだと!?」
かろうじてそれを避けた男は、その正体を知って驚愕に目を見開いた。
それは、小さな投げナイフだった。椿はそれを、『薔薇の棘』と名付けていた。
小型なため、主に隠し武器として使っている、いわゆる『暗器』の部類に入るものである。
白薔薇を腰のホルスターに納め、代わりに太ももに納めてある“棘”を両手に構えた。
そしてそれを一気に放つ。
「ちっ」
男は小さく舌打ちして、その棘の猛攻を避けては見るものの、如何せん数が多すぎた。何本かを仕留め損ねて、棘は彼の太ももをかすめる。
「くっ……」
走る痛みに、男の反応が鈍る。一体何本あるのかと思うほど、椿の棘は止まることを知らない。
無数の棘が、男を壁に縫い付ける。
タタタタタタンッ
「…くそっ……」
小さく悪態をつく彼。一本一本の縫い止める強さは大したことはないが、数が多すぎて、すべてを抜くには時間がかかる。
体を固定するように刺さる棘のせいで、男は身動きがとれないでいた。
そして椿は、そんな男にゆっくりと近づいていく。
「……悪いな」
「なん……ッ!」
小さく呟いた椿が、男の首筋に手刀をいれる。彼がすべての言葉を言い終わる前に、男はそのまま昏倒した。
椿は小さく息をつくと、両手をくいっと引く。
すると、無数に刺さっていた棘があっさりと抜け落ち、椿の手に収まった。
支えがなくなった男が、無様に床に倒れる。
よく見てみると、棘の柄尻にはピアノ線がくくりつけてあった。
椿は、元のように太もものホルダーに薔薇の棘を納める。そして、敵の残党を片っ端から片付け始めた。
さっきから武器名が厨二なんよ...(笑)




