chapter.7
ッキィンッ!
澄んだ音が響き渡る。
詩苑の持つ刀、『翠華』が拳銃の弾を真っ二つに斬っていた。
「なっ……」
銃を撃った男が、愕然として呟く。
「……まだアタシに銃で挑むヤツがいるとはね」
詩苑が口角をあげて、翠華を一度軽く振ると、そのまま鞘に納めた。
相手が訝しんで眉根を寄せたとたん、詩苑が居合いの一閃をする。
パキィンッ……
「……う、嘘だろ……?」
男が自分の手元を見ると、彼の持っていた銃が、ものの見事に切断されていた。
「甘いあまーい」
ニッと笑みを深くして、詩苑は再び刀を一閃させる。
「うぁ…っ」
その剣風に弾き飛ばされ、男は海に沈んだ。
ついでに、沈んだ男の周りにいた他の男も吹き飛ばす。
「……ふむ。手応えがなぁ……」
詩苑は翠華をくるくると回しながら呟いた。準備運動にもならない相手に、副船長は不満ぎみである。
と、そのとき。
「……」
左後方に殺気を感じた詩苑は、半歩右にずれる。その詩苑の横を、見えない攻撃が通りすぎていった。
「なるほど……。一筋縄ではいかない、か……」
その言葉に、詩苑はゆっくりと振り返る。
そこには、抜き身の長剣を携えた男がいた。その目が、嬉しそうに細められる。
「……」
詩苑は無言で男の様子をうかがっていた。彼女の本能が、相手がただ者ではないことを語っている。
「さぁ、勝負だ。“月光の舞妃”」
「……受けて立つ。いい準備運動になりそうだし」
「……はっ。いつまでそんな軽口が叩けるか、な!」
詩苑のその言葉が男の癪にさわったらしい。彼はそう叫ぶと、一直線に詩苑に向かっていった。
「シッ!」
上段からの男の剣を、詩苑は鞘に納めた翠華で受け止める。
「……ふっ」
思いの外重量のある斬撃を、詩苑は小さく息をついて横に流し、そのまま剣づたいに男の方向へ走ると、首筋に鋭い剣戟を放つ。
「っとぉ……っ」
それを相手は紙一重で避け、詩苑と距離をとる。そして着地したと同時に再び詩苑との距離を詰めて、横薙ぎに強烈な一撃を放った。
詩苑はバク転してそれを避ける。
男が追いすがり、連続して突きを繰り出すが、詩苑はそれらをすべて紙一重でかわし、隙を見て男の剣を上に弾く。
ガキィンッ!
激しく音をたてて、男の剣が宙を舞った。と同時に、反動で翠華の鞘も宙を舞う。
鞘を解かれた白銀と、鞘に埋め込まれた小さな宝石が、夕日の残光を反射してキラキラと輝いた。
「な……っ」
思わず男が宙を舞う剣と鞘を目で追い……。
「……はい、終わり」
落ちてきた鞘と握ったままの翠華を逆手に持って、詩苑が男の脇腹と上段に強烈な剣戟をお見舞いした。
それはさながら、舞を踊るかのごとく。
今度は男の体が宙を舞い、そのまま海に吹き飛ばされる。
「峰打ちだから、すぐに治療すれば治るよ」
翠華を一振りして、詩苑は男が吹き飛んだ方を見ながら言う。
「……まぁ、多少後遺症が残るかもしれないけど」
呟いて、詩苑は刀を鞘に納めた。
キンッと涼やかな音をたてた翠華が、月光に輝いた。




