chapter.4
時は少し戻って。
「…おい! 見ろよ、アレ」
瑞華たちがおやつを食べ始めた頃、その遥か前方には、一艘の海賊船があった。
その海賊船の見張り台に立っていた男が、彼女たちの海賊船を見つけて、仲間たちに声をかける。
男の声に応じて、甲板でカードゲームに興じていた船のクルーたちは、彼の指差す方向を見た。
「ヒュ~。『ブルーローズ』だぜ」
甲板から船影を認めた一人の男が、小さく口笛を吹いて言う。
漆黒の旗。海賊のみが掲げることを許された、“死の象徴”であるその旗に描かれているのは、ドクロにバラのツタが絡まっているものだった。
ドクロの向かって右上と左下には大輪の青バラが咲き、全体に花と同色の花弁が舞い散っている。
今彼らの目に映るそれは、あまりにも有名な海賊旗で。
その名は、畏怖と嘲笑をもって口にされる。
海賊団『ブルーローズ』
と。
「これはいい獲物見つけたぜ。アイツらを倒せば、俺たちの名声も一気に跳ね上がる」
「バカお前。知らないのか? 『ブルーローズ』は攻略不可能なんだぞ?」
「お前こそバカか? たかが女四人の海賊が、そんなに強いわけないだろ? どうせ噂だけが一人歩きしてんだよ」
「ぬ… それもそうか」
「あぁ」
男たちは、そこかしこでそんな話をする。
そしてその中の一人が、船の中央に立つ男に声をかけた。
「どうします? 船長」
船長と呼ばれた、まだ若い、30代半ばほどの無精髭を生やした男は、その言葉にニヤリと笑った。
「もちろん、落とすぜ」
その言葉を聞いた途端、海賊たちは興奮して、一斉に閧の声を上げる。
「待ってました!」
「さすが船長!!」
「はっはっは! …さぁ、伝説の始まりだぜ!!」
そしてその海賊船は、まっすぐ『ブルーローズ』に向かっていった。




