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blue rose  作者: 灑凪
34/35

chapter.33

  (…暑い…)


 風呂で逆上せてしまったため、夜風に当たろうと甲板に出てきた椿は、船の手すりに寄りかかっていた。


 予想以上に複雑な船の作りに、自分でさえ若干迷いそうになったのに、これでは詩苑や煉夏は迷うのではないか、あ、でも、煉夏は本能でなんとかなりそうかな、などと思いつつ、ぼーっと頬を撫でる風を受けている。



「椿ちゃーん、1人?」

「……」


 急に聞こえた第三者の声に、椿の表情があからさまに歪む。

「俺も一緒に風にあたろうかな~?」

「うるさい消えろ。」

「ホントは嬉しいくせに~」

「死ね馬鹿。」

 椿の嫌悪を欠片も気にせず隣に並ぼうとする犂人に、彼女の強烈な一言が飛ぶ。

 しかし、彼にはなしのつぶてのようで、やはり効果はないようだ。


「…………」

 嫌気がさしてその場を離れようとする椿の耳に、かすかな声が届く。


「…スコールが来るかもな…」


 聞こえるか聞こえないかの小さな呟きだったが、幸い椿の耳には届いていた。


「なん…」

 なんのことだ、と問い質そうとした椿も、その変化を感じることができた。


 風が、変わった。


 湿り気を帯びる風は、スコールの前触れだ。

 “天空の奏者”と椿が呼ばれる所以は、やはりその実力による。

 その椿よりも数秒早く、その変化を感じたのだ、この犂人は。


(…なんかムカつく)

 複雑な心境に陥る椿を知ってか知らずか、犂人が椿の横の手すりに背を預ける。


 その距離、約50㎝。


「…夜空がきれいだね」

「……そうだな」

「…明日の朝ごはん何かな~?」

「……知らん。」

「あっ、流れ星」

「…………だからどうした」


 自分の隣で下らないことをほざく犂人に適当に相槌を打ちつつ、なんだかその場を離れるのも悔しくて、椿はただ海を眺めていた。


「…椿ちゃん、寒くない?」

「別に。」

 ふと、犂人が言う。

 それに間髪いれずに彼女は答えた。

 それで話は終わりかと思いきや、不意に肩に僅かな重みを感じた。

 自分の肩を見下ろすと、上着がかけられている。


「やっぱり、寒いでしょ?」

「…………」

 それの正体が、犂人の着ていた上着だと気づくのに、そう時間はかからなかった。

 笑顔で言う犂人をちらりと見て、そしてすぐに視線を外す。

 その後に続く言葉はなく、犂人は静かにしていた。



「……一応、礼は言っておく」

「…え?」

「……なんだ」

「……いや、なんでも」

 隣で小さく笑う気配を感じたが、椿はそれをすべて無視する。

「どういたしまして」

「……ああ」



 満天の星の下、月の光を弾く波が輝く。


(黙っていれば静かなのに…)

そんな当たり前のことを考えつつ、椿は大きく息を吐いた。


垣間見える、別のかお

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