chapter.34
(…なんだ?)
何かの気配を感じて、自室のベッドに寝転がって雑誌を読んでいた龍は、上半身を起こした。
敵、の気配ではない。だから龍は、気のせいだろうと判断して、再びベッドに身を預けた。
次の瞬間。
「龍くーんッッ!!!!!」
「…へっ?」
どばーんっ! と凄まじい勢いで、龍の部屋の扉が開く。
「遊ぼー!!」
「煉夏!? …って、ぐほっ!」
それと同時に、腹に煉夏が飛び乗ってきた。
思わず妙な声を上げて、龍は軽く咳き込む。
「おまっ、どうして俺の部屋…!」
知ってんの? と聞こうとした時点で、龍は自分の今の状況に気づいた。
煉夏が自分の腹に乗っている、と言うことは、つまり…。
「ちょ、お前どけ!! 今すぐそこを退いてくれ!!!」
「え~? なんで~??」
「なんでも!!」
真っ赤になって言う龍に、煉夏はただ首をかしげる。
煉夏が腹に乗っているということはつまり、彼女が自分に馬乗りになっていると言うわけで。
しかも今、煉夏の服は自分の服のお下がりで、若干だぼだぼ。
覗き込むように煉夏が龍の顔を見ているから、その胸元から中身が見えそう。
(ちょ、これはヤバい! 色々ヤバい…!!)
「ねぇ龍くーん、遊ぼうよ~」
そんな龍の心情など知る由もなく、煉夏は彼の腹の上でバタバタと暴れていた。
(そろそろ本気でヤバい…!!)
龍はそう判断すると、次には行動に移す。
「煉夏!」
「ふぇ?」
突然強い口調で名を呼ばれ、煉夏が間抜けな声を上げた。
「遊んでやるから、とにかく降りてくれ…」
そして、その隙に腹筋の力で起き上がる。
「おぉ…?」
その反動で、煉夏は龍の腹から転げ落ちた。
「すっごーい、龍くん!」
「そ、そうか…?」
腹筋だけで起き上がった龍に感動したのか、煉夏が嬉しそうにきゃっきゃっと笑う。
褒められたのが満更でもないのか、龍も照れ臭そうに笑った。
その時。
コンコン
「龍、一緒に茶でも…」
ノックの音と共に扉が開き、智彌が顔を覗かせる。
しかし、その智彌の言葉が、不自然な所で途切れた。
「? 智彌?」
その様子に首を傾げ、龍が智彌に呼び掛ける。
「? どしたー?」
呼び掛けても反応しない智彌の後ろから、別の声がかかった。
「あ、煉夏! あんたこんなとこに…」
「あ、詩苑だ~」
その声の主は詩苑で、やはり同じように、不自然な所で言葉が途切れる。
そして。
「……すまん」
「お邪魔しました~…」
「「……へ?」」
扉を閉めようとする二人に、龍と煉夏の間抜けな声が問いかけた。
その言葉に、ようやっと自分の状態に気づいた龍が、顔を真っ赤にして弁解する。
「ちっ、違う!! これはそういうんじゃなくて…!!!」
「…龍がそんなに手が早いとは思わなかったな…」
「邪魔しちゃ悪いから、あたしたちはこれで……」
しかし無情にも、部屋の扉は閉められた。
「詩苑と智彌さん、どうしたんだろう?」
龍に押し倒されている煉夏が呑気に言う。
「違うんだぁぁぁぁぁぁっっ!」
そして、龍の悲痛な叫びがこだました。
不憫なオトコノコ




