chapter.30
「うぉっ!! ひっろい風呂!!」
「泳げるね!!」
「…いや、泳ぐのはどうかと思うが…」
「うちの船にもこのくらい広いお風呂がついてたらいいのに…」
廊下の突き当たりの螺旋階段を昇った先、そこに広がる浴室を見て、四人は思い思いに感嘆の声を上げた。
中二階のような場所にその浴室はあり、満々たる湯を湛えたその浴槽は、さながら銭湯のようだ。
「泳がなきゃ!!」
「…そこで意気込んでどうする…」
「いやでも、これは泳がなきゃだろ!」
「…もう勝手にすればいい」
「泳ぐ泳がないはともかく、足が伸ばせるお風呂って久しぶり~」
煉夏が妙な気合いをいれる横で、詩苑も便乗して言う。
それに椿が冷めた目で突っ込んだ。
瑞華はと言えば、そんなことなど我関せずとでも言うように、いそいそと脱衣所で服を脱ぎ始めていた。
「ひゃっほーい!!」
ザッバーンッッ!!
「…もっとおとなしく入れ、煉夏…」
ものすごい勢いで身体を洗い、またまたものすごい勢いで湯船に飛び込む煉夏に、椿が疲れたように注意する。
「ぷはぁ~、いい湯だなぁ~」
「うっわ! ばばくさッ!」
「なっ! 失礼なっ! いずれ誰でもそうなるんだからいいじゃん!!」
湯船に沈んで大きく息をつく詩苑に、瑞華が容赦ない一言を告げた。
それに対して詩苑が噛みつき、ぎゃーぎゃーと言い争いが始まる。
「……」
「わーいッ!」
椿が無言でその二人の様子をジト目でみやり、小さく息を吐く。その横で煉夏は、能天気に風呂の中で泳いでいた。
そして。
「…この服、は……」
「…なんつーか……」
「…アイツの言ってたことが今わかったわ…」
「龍くんの匂いがする~ッッ」
司が持ってきた服を広げてみた彼女たちは、暫し無言になる。
理由は至って簡単で、その服が男物で、ちょっとダボダボだったからだ。
煉夏の言葉を信じるのならば、恐らく龍のお古なのだろう。彼の今の身長には合わないサイズなのも、そうだと分かる理由の一つになっている。
「…まぁ、着られない大きさじゃないし、ありがたく借りとこっか」
またドレスなのもかったるいし、と瑞華が言う。
「そうだな。まぁ問題ないだろ」
「…私はとりあえず、着られればなんでも」
「あたしも平気~」
結局その場はそれで話がまとまり、四人は風呂場を後にした。




