chapter.2
「瑞華!! 今日のおやつは!?」
「チーズケーキ」
「やたっ」
ものすごい勢いで駆けてきた煉夏は、二人の前で急停止した。
「……ッ、れんげっ、足、はやっ」
「ご苦労だな、詩苑」
微妙に息を切らしつつ、煉夏のあとからやってきた詩苑に、椿は同情の声をかけた。
「ほんとだよもう……。この子の有り余る体力、どっからくるわけ……?」
「……根本的な性格からじゃねぇの?」
「……そだね」
そして思わず、二人で息をつく。
「煉夏、あたし紅茶~」
「は~い。二人も紅茶でい?」
瑞華の言葉にうなずいて、煉夏は詩苑と椿にも尋ねた。
「いいけど……」
「……手伝うか? 煉夏」
「平気平気」
心配そうに声をかける二人に、煉夏は軽く手を振って、そのままキッチンへと向かう。
「……瑞華」
「え?」
煉夏がキッチンへと消えたあと、二人は瑞華を見た。
そんな二人に、悪びれもなくにこにこと笑って首を傾げる瑞華に、二人はため息をつく。
「……なんでもない」
「?」
二人の様子に、瑞華はなおも首を傾げる。
大抵こういうときの役割は決まっていて、瑞華はおやつを作る。ついでにお茶も持ってくればいいのに、たまに気まぐれで持ってくるとき以外は、それを持ってくるのは必ずと言っていいほど煉夏である。
船内の料理以外の、掃除・洗濯などの家事のほとんどは煉夏がやっていて、彼女は渋ることなくその雑務を喜々としてこなすのだ。
別に虐げられているわけではないのだが、煉夏はそれを「雑用をやらされている」と思わないでやっているのだから恐ろしい(いろんな意味で)。
「……お待たせ……」
至極慎重に、開けっ放しにしていたキッチンの扉を抜けて、煉夏がやってくる。
右手には、熱い湯の入った紅茶ポットを持っていて、左手の指には、四つのカップがそれぞれぶら下がっていた。…どうやら、おぼんを使うと言う考えは、煉夏の中では皆無らしい。
その様子を見て、ギョッとしたのは椿と詩苑である。詩苑が慌てて煉夏の下へ行き、右手のポットを受け取った。
それを見て、椿は肩の力を抜く。
「あぶなっかしいな~」
「ありがと」
煉夏は右手が自由になったことでホッと息をつき、きわどくぶら下がっていた左手のカップの半分を右手に移す。
そして、先ほどよりも幾分か軽い足取りで、煉夏は甲板に出されたテーブルの上にカップを置いた。
「ありがと、煉夏」
「どういたしまして」
煉夏の様子になんの反応も起こさなかった瑞華は、席に着いた煉夏を見て礼を言う。
煉夏はそれに笑顔で答えた。
「……大丈夫か?」
「気疲れした……」
ため息と共に席についた詩苑に、椿が声をかければ、詩苑は苦笑混じりに応える。
「あぶなっかしいんだもん……」
「確かに」
詩苑の言葉に、椿は大きくうなずいた。




