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blue rose  作者: 灑凪
29/35

chapter.28

「重い下りろ」

「痛ッ! ちょっと! もっと優しくできないの!?」

「はんッ。優しくしてやる義理はねェだろ」


 乱暴に下ろされた(というか、落とされた)瑞華が腰を擦りながら立ち上がる。

 他のクルーたちもそれぞれ床に下ろされていた。


「…て、もしやここは…?」

 智彌に下ろされた詩苑が、周りを見渡して呆然と呟く。

 そこは、彼女たちが見知ったぼろ船ではなかった。


 彼女たちの船よりは大分立派で、大きさもある。

 旗印(ジョリーロジャー)は、ドクロに炎。


 そこは、『スカルグロウ』の海賊船だった。


「ちょっ、なんでここ!?」

「…あ? 理由なんざねェよ。ただテメェらの船に行くのがめんどかっただけだ」

 瑞華の狼狽した言葉に、あっさりと答える司。

「どうせあんな分かりやすいとこに海賊船なんか置いといたら、今ごろ海軍の手の内だ。今更ノコノコ捕まりに行くような真似、できるかよ」


 瑞華は二の句が継げない。

「とりあえず、お前らに拒否権はねェ」

 あくまでも、上から目線の司だった。


「…まぁつまり、海軍も待ち構えてるだろうし、夜も大分更けて暗くなってるから、そんな中女の子たちを帰すわけにはいかないってコト」

「…こっちの司は不器用だからな」

「そーゆーこと。今夜はこの船に泊まってくといいよ」


 言葉の足りない司の代わりに、他のクルーがフォローを入れた。


 確かに、思いのほかダンスパーティーで疲れたらしく、今から自分たちの船に戻るのは些か面倒なのは事実である。


 だがしかし。


「…だが、言ってみれば私たちは敵だろう? それこそ、そこまでしてもらうわけにはいかない」

 椿がもっともなことをいう。

「まぁまぁ椿ちゃん。そんなに難しく考えるなって。お兄さんとしてはかわいい女の子たちのハーレムで…ぅがっ!?」

「…変態が。」

 犂人の言葉の先を読んで、椿が先制攻撃を仕掛けた。

 見事に犂人がそれを食らって沈黙する。


「…でも、ホントに椿の言う通りだ。海軍に押さえられてるとしても、いずれにしろ取り返さなきゃいけないわけだし…」

「…しかし、今すぐにでなくても大丈夫なのも事実だろう?」

 詩苑の言葉に智彌が応じた。

「海軍も、『ブルーローズ』が帰ってくると思っているのだから、すぐに船を処分したりはしないはずだ」

「それはそうかもしれないけど…」

 詩苑の瞳には遠慮が浮かぶ。


「え~? あたし、この船探検してみたい!!」

「…お前は敵をなんだと思ってるんだ!!」

 しかし、突然の、空気を読まない煉夏の発言に、詩苑は盛大につっこみを入れる。

「まぁでも、煉夏もこう言ってることだしさ。大分暗いし…」

 龍が詩苑を宥めつつ言った。

 なんとしてでも、スカルグロウは引き留めたいらしい。


「いや、しかし…」

「色々荷物も心配だし…」

「そうよそうよ!! あたしの大事な宝が海軍に奪われたらどうしてくれんの!?」

「探検~」

 ぼかっ

「あ痛ッ」


 まだなお渋る椿と詩苑に、噛みつく瑞華。相変わらず見当違いのことを抜かす煉夏に、詩苑の鉄拳が下った。


 なんともしまりのない光景に、司はため息を吐く。

「…ごちゃごちゃうるせーな。言ったろ。お前らに拒否権はねェ」

「ちょ、どこに手ェやってんのよ!!」

 いつの間にやら、瑞華の腰をがっちりホールドしていた司。


「…まぁ、そこまで言うならお言葉に甘えるか…」

「…不本意だが、仕方ない」

「やたッッ!!」


 いくら言っても暖簾に腕押しの男たちと、言ってもまったく聞かなそうな煉夏に、詩苑と椿もとうとう折れる。



「ちょっ、あたしの立場は!?」

「「…だって、司さん離さなそうだし」」

「あはっ、仲良しだ~」

「ちょっと~!!」


 今宵はまったく報われない、船長瑞華だった。


からの、強制連行

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