chapter.28
「重い下りろ」
「痛ッ! ちょっと! もっと優しくできないの!?」
「はんッ。優しくしてやる義理はねェだろ」
乱暴に下ろされた(というか、落とされた)瑞華が腰を擦りながら立ち上がる。
他のクルーたちもそれぞれ床に下ろされていた。
「…て、もしやここは…?」
智彌に下ろされた詩苑が、周りを見渡して呆然と呟く。
そこは、彼女たちが見知ったぼろ船ではなかった。
彼女たちの船よりは大分立派で、大きさもある。
旗印は、ドクロに炎。
そこは、『スカルグロウ』の海賊船だった。
「ちょっ、なんでここ!?」
「…あ? 理由なんざねェよ。ただテメェらの船に行くのがめんどかっただけだ」
瑞華の狼狽した言葉に、あっさりと答える司。
「どうせあんな分かりやすいとこに海賊船なんか置いといたら、今ごろ海軍の手の内だ。今更ノコノコ捕まりに行くような真似、できるかよ」
瑞華は二の句が継げない。
「とりあえず、お前らに拒否権はねェ」
あくまでも、上から目線の司だった。
「…まぁつまり、海軍も待ち構えてるだろうし、夜も大分更けて暗くなってるから、そんな中女の子たちを帰すわけにはいかないってコト」
「…こっちの司は不器用だからな」
「そーゆーこと。今夜はこの船に泊まってくといいよ」
言葉の足りない司の代わりに、他のクルーがフォローを入れた。
確かに、思いのほかダンスパーティーで疲れたらしく、今から自分たちの船に戻るのは些か面倒なのは事実である。
だがしかし。
「…だが、言ってみれば私たちは敵だろう? それこそ、そこまでしてもらうわけにはいかない」
椿がもっともなことをいう。
「まぁまぁ椿ちゃん。そんなに難しく考えるなって。お兄さんとしてはかわいい女の子たちのハーレムで…ぅがっ!?」
「…変態が。」
犂人の言葉の先を読んで、椿が先制攻撃を仕掛けた。
見事に犂人がそれを食らって沈黙する。
「…でも、ホントに椿の言う通りだ。海軍に押さえられてるとしても、いずれにしろ取り返さなきゃいけないわけだし…」
「…しかし、今すぐにでなくても大丈夫なのも事実だろう?」
詩苑の言葉に智彌が応じた。
「海軍も、『ブルーローズ』が帰ってくると思っているのだから、すぐに船を処分したりはしないはずだ」
「それはそうかもしれないけど…」
詩苑の瞳には遠慮が浮かぶ。
「え~? あたし、この船探検してみたい!!」
「…お前は敵をなんだと思ってるんだ!!」
しかし、突然の、空気を読まない煉夏の発言に、詩苑は盛大につっこみを入れる。
「まぁでも、煉夏もこう言ってることだしさ。大分暗いし…」
龍が詩苑を宥めつつ言った。
なんとしてでも、スカルグロウは引き留めたいらしい。
「いや、しかし…」
「色々荷物も心配だし…」
「そうよそうよ!! あたしの大事な宝が海軍に奪われたらどうしてくれんの!?」
「探検~」
ぼかっ
「あ痛ッ」
まだなお渋る椿と詩苑に、噛みつく瑞華。相変わらず見当違いのことを抜かす煉夏に、詩苑の鉄拳が下った。
なんともしまりのない光景に、司はため息を吐く。
「…ごちゃごちゃうるせーな。言ったろ。お前らに拒否権はねェ」
「ちょ、どこに手ェやってんのよ!!」
いつの間にやら、瑞華の腰をがっちりホールドしていた司。
「…まぁ、そこまで言うならお言葉に甘えるか…」
「…不本意だが、仕方ない」
「やたッッ!!」
いくら言っても暖簾に腕押しの男たちと、言ってもまったく聞かなそうな煉夏に、詩苑と椿もとうとう折れる。
「ちょっ、あたしの立場は!?」
「「…だって、司さん離さなそうだし」」
「あはっ、仲良しだ~」
「ちょっと~!!」
今宵はまったく報われない、船長瑞華だった。
からの、強制連行




