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blue rose  作者: 灑凪
28/35

chapter.27

「視界白ッ」

「うわっぷ!?」

「なんだ?」

「前見えなーい!」


 突然視界が白く染まり、ブルーローズは驚きの声を上げた。

 無論彼女たちは、それが司の煙幕弾のせいだとは気づかない。

 前触れもなく起こった出来事に、すぐには動けなかった。


 そして、次の瞬間。


「ぎゃっ!」

「うおっ!?」

「なっ…」

「ほ?」


 またしても突然、彼女らの体が宙に浮く。

 誰かに抱え上げられたのだと気づくのに、しばしの時間を有した。

 そして、煙幕を抜け視界が明瞭になると。



「…オイ。暴れんじゃねェぞ」

「はぁっ!?」


「…少しの間、我慢しててくれ」

「う、うん…?」


「姫を助ける王子様ってか! 俺ってばかっこいー!!」

「…………」


「煉夏、落ちんなよ?」

「うん、大丈夫っ!」



 ブルーローズは、スカルグロウに掻っ攫われていた。


 司は瑞華を抱え上げて太ももの辺りと背中を支えて、智彌は詩苑を小脇に抱え、犂人は椿をお姫様だっこし、龍は煉夏を肩に担いでいる。


 人一人抱えていると言うのに、彼らはそれをものともせず、屋敷の中をかなりのスピードで駆け抜けていた。

 ダンスホールにてそれを見た客たちは、ただ呆然とその姿を見送っている。



「オイ、暴れんなっつったろ」

「そんなの知らない! おーろーせー!!!」

 司に荷物のように運ばれるのが余程気にくわないのか、瑞華はじたばたと暴れるが、彼の腕はビクともしない。

「屈辱だわ…ッ!」

「運んでやってんだから文句言うんじゃねェよ」

 そんな瑞華に、司の面倒くさそうな声が応えた。

「なにその言い種!! ムカつくんですけど!!」

「知るかよ。関係ねーだろ」

「関係ありまくりだっつーのよ!!!」

「…うるせーな。また口塞ぐぞ」

「うっ…。それはヤダ……」

「…ほぉ…。俺様の誘いを断るとはいい度胸だな」

「誘いじゃなくて脅迫の間違いだと思うんですけど!?」

 ぎゃんぎゃんと、瑞華は司に抱えられたまま怒鳴る。しかし彼は、それを軽くあしらっていた。それはもう、心底面倒くさそうに。

「とにかく! はーなーせ~!!」

「…………」

 止まらない罵詈雑言に対し、司は無視を決め込むことにしたらしい。



「…なんで片腕で運べるの…。あたし、重いでしょ?」

「…まったく問題はないが」

「いやいやいや! 問題有りまくりでしょうが!!」

 智彌に軽々と抱えられたままの詩苑が、彼を上目遣いに見上げて尋ねる。すると智彌は、ちらりと詩苑に視線を送ってから、なんでもないように答えた。

 それに対して詩苑は気が気ではない。

 いくら自分より大分ガタイがいいと言っても、片腕ではバランスをとるのも難しいだろうし、少々役不足な気がしていた。

「…大人しくしていてくれれば、問題はない」

「でも…」

「ノープロブレムだ」

「……ハイ」

 なおも食い下がろうとする詩苑に、有無を言わせない態度で智彌は言う。詩苑は大人しくうなずくしかなかった。

(は、恥ずかしい……)

 なんとも言えない気分に陥りながら、詩苑はただ揺られている。



「どう椿ちゃん! 俺ってばかっこいい!?」

「知るか寄るな下ろせ。」

 お姫様だっこをされているせいで、思いの外近くにある犂人の顔を押し遣って顔を背け、椿は心底厭そうに言う。

「まったく、椿ちゃんってばつれないんだから~」

「…………」

 ぐいぐいと渾身の力で押しているのに、犂人の腕の力はまったく緩まない。

 そこは男女の力の差なのかと思いながらも、諦めるのも癪にさわり、椿はどうにかその腕から逃れようともがいていた。

「あんま暴れると落としちゃうよ~?」

「落としてくれて構わない。早く離せ」

「またまたぁ~。俺が女の子落とすわけないじゃん~」

 椿が全身で拒絶しているのにも関わらず、犂人はまったく動じない。

 それどころか、むしろ逆に楽しそうだった。

「離せ。」

「やぁーだ」

「下りる。」

「だーめ」

 二人は押し問答のような会話を繰り返していた。



「ちょっ、煉夏! 少しは大人しくしてろって!」

「だってだって! たっかいんだもん! すっごい楽しい!!」

「わかったッ! わかったから落ち着けって! な?」

「むぅ…」

 龍に担がれたまま、不満そうに口を尖らす煉夏。それでもいくらか落ち着いてくれたからよかったと、龍はこっそり息を吐いた。

(…重くはないんだけど、落としそうで気が気じゃないんだよな…)

 仮にも女の子を落とすわけにはいかない。

 まぁ、この状態が女の子の運び方(?)かと問われればなんとも言えないが、犂人みたいにお姫様だっこは、気恥ずかしくて絶対にできない自信があった。

「…龍くんって、背中おっきいねー」

「ばっ! 変なこと言うな!」

「え~? ホントのことなのに…」

 不意打ちの煉夏の言葉に、龍が耳まで真っ赤にする。

 思わず手を離しそうになって、慌てて煉夏を担ぎ直した。

「いいからもう、とにかく大人しくしててくれ…」

「はぁ~い」

 若干疲れたように言う龍に、煉夏は間延びした返事を返した。



四者四様の運び方

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