chapter.24
「あっちゃ~」
「…入ったか…」
「入っちゃったな……」
司の様子に驚くブルーローズを余所に、スカルグロウは落ち着いたものだった。
「…えっ、え…?」
「な、なんだ…?」
「…司さん、だよね…?」
突然の豹変ぶりについていけず、呆然と呟く詩苑、椿、煉夏。そして、船長瑞華も叫ぶ。
「ちょっとアンタ誰ですかー!?」
「…あァ? 俺様が誰かって? んなの偉大な司様に決まってんだろうが。馬鹿かお前」
「んなっ!!」
さっきまでの敬語で穏やかな物腰はどこへ行ったのか、一人称まで変わっている今の司は、先程までとはまったくの別人だった。
外見は然程変わらない。ただ髪紐が無くなって、司の髪が解かれただけだ。
たったのそれだけなのに。
「…まぁ、簡単に説明するとだな」
「司チャン、髪ほどくと別人になるの」
「そーいうこと」
「オイ、テメーら余計なこと言うんじゃねーよ」
混乱しているブルーローズを憐れに思ったのか、スカルグロウがフォローを入れてくれた。
「ちょっと何それどーいうこと!? 何でそんなめんどくさいことになんの!?」
「うるせーな。ぎゃんぎゃん喚くな。…その口、塞いでやろうか?」
「は!? なにわけわかんないこと言ってんの!? 大体、アンタのせいでお宝落とし…!!」
なおも言い募ろうとする瑞華に、ふいに司が動いた。
ちゅっ。
「…黙れって言ってんのが分かんねェのか?」
「%※●□*☆@&!?」
瞬間、声にならない叫びを上げて固まる瑞華。
「……はぁ…」
「ひゅ~。司チャン手が早いんだから~」
「うっわ~…」
…司は、有言実行の男だった。
言っても聞かない瑞華に痺れを切らしたのか、彼は自分の言葉通り、瑞華の口を塞いだのだ。
…しかも、あろうことか自分の口で。
「~っっ!!」
唇を奪われた瑞華は、口をぱくぱくとさせ、音を伴わない言葉を発する。
「…なんだ? まだ足りねェってか? 仕方ねェなァ、このじゃじゃ馬は」
「……はっ! いい! いい!! 寄るな触るな近づくなッッ!!!」
ニヤリ、と人の悪い笑みを浮かべ、再び近づこうとする司に、我に返った瑞華は慌てて首を左右にぶんぶんと振った。
その顔は、我らが船長にしては珍しく、林檎のように真っ赤だ。
司はそれを愉しそうに眺めていた。
「…はっ、はぢめて口で口塞ぐ人見た…」
「……ホントにやるヤツなんていたのか……」
「うわ~! 瑞華と司さんちゅーしてたよ!!」
なんとも言えない空気の中、女たちは若干見当違いのことを考えていた。




