chapter.20
最初に声を上げたのは煉夏だった。
持ち前の好奇心で、あちらこちらをキョロキョロと見ていたら、異様にデカイ二人の女性を見つけたのだ。
(うわー、あの人たち身長たかーい。いいなぁ……)
煉夏も女としては身長が高い方だが、彼女曰く、『もう少し欲しかった』のだそうだ。
そのため、自分より高い身長を持つ女性を見ると、どうしても観察してしまう。
今回もその例に漏れず、じっとその『女性たち』を観察していたら、ふと違和感を覚えた。
(…ん? あの人たちどこかで…)
「……煉夏?」
難しい顔でなにやら考え込んでいる煉夏を発見した詩苑が、声をかけても反応がない彼女を訝って、その視線の先を追う。
そして、詩苑もそれを目にした。
(……うわー。あの人たち身長……)
『高い』、と思うと同時に、詩苑は目を見開く。
その瞬間に煉夏が叫んだのだ。
二人の『女』は、あからさまに嫌そうな表情を浮かべる。
「え!? なになになに!?」
瑞華が煉夏の叫びを聞いて、慌てたようすでその視線の先を追った。
「…あいつらは……」
その横で、椿も目を細める。どうやら椿は、一瞬にして『女たち』の正体を見破ったようだ。
「ヤベッ! 逃げんぞ智彌!」
「同感だ!」
この、なんとも言えない屈辱的な格好を、多少なりとも知っている人間に見せるのは死んでも嫌だと、龍と智彌は煉夏と詩苑に気付かれた瞬間に、速攻でその場を離れようとする。
「まぁ待ちなさい」
「そうそう。これからがお楽しみじゃん」
しかし、それは叶わなかった。
司と犂人に首根っこを捕まれ、智彌と龍は動けなくなる。
「……」
「はーなーせ~」
まだ逃走を諦めていない二人がバタバタと暴れるも、ホールドする腕はまったく外れる気配がない。
そうこうしているうちに、ブルーローズがスカルグロウに近づいてきた。
もちろん、警戒心剥き出しで、だ。
「……はじめまして、ですね。『ブルーローズ』」
司がにっこりと笑う。
「私が『スカルグロウ』で船長をやらせていただいています、司と申します。以後、お見知りおきを」
「……ハジメマシテ。ブルーローズの船長、瑞華よ」
険を含んだ口調と表情で、瑞華が言う。
「昨日はうちのコたちがお世話になったようで」
「いえいえとんでもない。私はなにもしていませんよ」
一気に剣呑になった空気を感じ取ったのか、八人の周りにいた人々が一斉に離れていく。
「やっと会えたね。俺は犂人、よろしくハニー」
犂人が椿に向かって、いつのまにかその手にあった真っ赤な薔薇を、ウィンクと共に彼女に差し出す。
瞬間、椿の背筋に悪寒が走った。
「……椿、だ。寄るな」
どうやら椿にとって、この男は生理的に受け付けない人種らしい。
犂人は、引き気味に言う椿の様子を欠片も気にせず、さらに椿に近づく。
「つれないなー。ま、それはそれで良いけどね」
落としがいがあるし。と微笑む犂人に、椿は全力でその場を逃げ出したくなった。




