chapter.18
「そうと決まれば話が早い! 早速衣装買いに行こう!!」
瑞華が一人、至極楽しそうに声を上げる。
「あ~…」
詩苑はやる気無さげに相槌を打ち、椿はどこか遠くを眺め、そして煉夏は若干目を輝かせていた。
「あ、ところで…」
「「「?」」」
すると急に神妙な顔つきになった瑞華に、三人は三者三様に首を傾げる。
「今回のダンパ、誰でも参加自由だけど、男女一組じゃなきゃいけないらしいから……」
と、そこで瑞華は言葉を切り、にっこりと笑った。
「詩苑と煉夏、男装ね」
「……はぁっ!?」
「男装!?」
その言葉に、詩苑は目を剥いて素っ頓狂に叫び、煉夏は今度こそ目を輝かせた。
「…それはまた、急な提案だな、瑞華……」
椿は小さく息を吐き、そう宣う。
「いいじゃん男装~。詩苑似合いそうだし、煉夏ノリノリだし」
「いいねぇ男装。一回やってみたかったんだよね~」
「…いやまぁ、嫌じゃないけどな?」
瑞華の言葉に、煉夏は弾むように言い、詩苑も満更でもなさそうに若干頬を染めた。
「うしっ、決定!! さ、買い物買い物~」
そして意気揚々と船を降りていこうとする。
「じゃあ、私は船番を……。…ん? いや、ちょっと待て瑞華」
椿が船番をかって出ようとして、ふと何かに思い当たったらしい。瑞華はその言葉に足を止めた。
「なに? 椿」
「よく考えてみろ、瑞華。私たちは手配書が出回っているんだぞ?」
「あ、確かに…」
椿の言葉に、煉夏となにやら盛り上がっていた詩苑が、合点がいったようにうなずく。
「それで服を買いに行くと言うのはどうかと思うのだが…」
「あぁ、それならきっと大丈夫でしょ」
あっさりと椿の言葉を流した瑞華に、椿と詩苑は二の句が継げなくなる。
「そ、その根拠はどこから…?」
おずおずと詩苑が問えば、瑞華はなんでもないように言った。
「手配書なんて案外いい加減なものでね? 手配書の写真と似てると思われて声かけられても、誤魔化しゃどうにかなるって~。私たちを直接見たことあるの、他の海賊くらいでしょ?」
それにアレ、写真写り悪いし。と、軽い調子で言う瑞華。
確かに彼女たちは、街の衛兵や海軍と相対したことはなかった。
瑞華の言うことは、強ち間違っているとも言えない。
それでもまだ複雑な表情を浮かべている椿と詩苑に、瑞華は畳み掛けるように言った。
「それに、こっちには煉夏がいるし」
「? うん」
ね、と同意を求める彼女に、煉夏は訳がわかっていなさそうな顔でうなずく。 煉夏にとって手配書云々の話は、元よりアウトオブ眼中らしい。
なにしろ、手配書を見て一番興奮していたのは、他ならぬ彼女なのだ。
「…わかった」
「…そこまで言うなら止めないが…」
詩苑と椿が渋々ながらも頷いた。
結局、こういうときの船長には逆らえない。
「うしっ、じゃあ行こう」
再び意気揚々と足を踏み出す瑞華。
「…さっき言いかけたが、私は船番してるから…」
その背に椿が声をかけると、瑞華が怪訝そうに振り返った。
「何言ってるの椿。椿も一緒に行くんでしょ?」
「……」
「……」
……本日二度目の爆弾発言に、詩苑と椿は沈黙した。




