chapter.17
「ダンパがあるんだって!!」
「「……はぁ??」」
少し遅めの朝食を摂っていたその席で、船長瑞華が唐突に言った。
詩苑たちと智彌たちが遭遇した翌日、瑞華たちは昨日と同じ島に停泊している。
瑞華の言葉に対して、詩苑と椿が間抜けな声を上げ、煉夏は温野菜サラダを頬張ったまま首を傾げた。
「だーかーらぁ~、今日この島でダンスパーティーがあるんだって! …はっ、まさか……」
すると突然、瑞華が愕然とした表情を浮かべる。
「ダンスパーティー知らないの!?」
「「知っとるわ!!」」
「……」
瑞華の言葉を、詩苑と椿が力一杯否定して、煉夏は無言のままうなずいた。
彼女が無言なのは、口一杯のフランスパンのせいだ。
「……ちぇっ。」
「……何で残念そうに言うんだ、お前は……」
拗ねたように口を尖らせた瑞華に、詩苑が呆れたように呟く。
「…ところで瑞華。なぜ急にダンスパーティーに行きたいなんて言い出したんだ?」
椿が、詩苑の言葉を黙殺していた瑞華に尋ねた。
瑞華は暫し考え込んでいたが、やがてニヤリ、と黒い笑みを浮かべる。
「そのダンパの裏でオークションが開催されて、そこに、高価で有名なお宝が出るから」
その言葉に、詩苑と椿が一様に“やっぱりな”とため息を吐いた。
煉夏は話を聞きつつも、食事を進める手は止めない。
「……別にあたしらが“陸”まで行く必要ないだろ? そんなに有名なら、どうせどっかの山賊とかが取ってくるよ」
“そいつらから奪えばいいだろう?”と、涼しい顔で何やら物騒なことを言う詩苑。それは確かに合理的なのだが、そう簡単に諦める、我らが船長ではない。
「何言ってるの詩苑!! 狙った獲物は自分の手で奪い取る! それが海賊ってもんでしょ!!」
瑞華が拳を震わせながら力説した。
「…ただ単に、まどろっこしいのが嫌なだけなんだろうけどな」
椿がボソリと呟く。
「椿~? ちゃぁんと聞こえてるよ~?」
「う……」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったのに、瑞華の地獄耳は椿の言葉をきちんと聞き取っていたらしい。爽やかな笑顔に、椿は嫌な汗をかいた。
そして、ようやく口の中をきれいにした煉夏が、最後の引き金を引く。
「いいじゃん、行こうよダンパ。楽しそうだし~」
そんな煉夏の満面の笑みを見て、瑞華は我が意を得たりとほくそ笑み、詩苑は開いた口が塞がらず、椿は「なに考えてるんだ…」とこめかみを押さえてため息をついた。
…無論、煉夏はなにも考えてはいなかった。




